東方十能力   作:nite

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三百八十九話 考察

紅魔館をあとにすると、外は既に太陽が橙色に輝いていた。

少し涼しくなってきたような気がしつつ、この異変は夜に調査すればよかったのではと思いなおす。暑くなっている原因が何なのかはわからないものの、太陽が沈めば多少落ち着くだろう。

俺は夕日に照らされながら霧の湖の上を飛ぶ。目的地は…うーん。

 

「どこにすればいいんだろうな」

 

幻想郷で熱を放出することができる能力を持っている人物というのは、中々どうして思い当たらない。

それなりに幻想郷の人々と交流してきたが、熱を操る能力を持っている妖怪というのに会った記憶がない。それこそ、核融合を操る力があるお空くらいだけど、それはお燐によって関係ないことがわかってしまった。

俺だって幻想郷のすべての人妖を知っているわけではないけれど、幻想郷全体を包み込むほどの力があるような妖怪ならば、名前くらい聞いたことがあってもいいだろう。

 

「自然的なものだったり…いや、ないか」

 

一応の可能性として、これが単なる自然現象であると仮定してみる。だが、その場合現在日本や世界が同じようなことになっていなければいけないわけで…俺が外の世界のことを知ることはできないが、そこまでの規模であれば紫が先に何かしら対処している気がする。

紫に頼り切りになるつもりはないけれど、彼女が動かないということは、まだ幻想郷の危機というレベルではないということでもある。既に熱中症でどうにかなっている人も多そうだが、これくらいはまだ普通の範疇なのだろう。

 

「さて、どうしたものかな」

 

さっきも言ったが、この異変の調査は夜にするのがいいだろう。昼間にやるなんていうのは、正気ではなかったかもしれない。取り敢えずルーミアたちに連絡をして調査続行。

こうなったら、できることをすべてやってしまおう。異変っていうのは思いがけないところで発生することも多いからな。

俺は太陽の花畑に進路をとった。過去に一度やらかしている実績があるので、確認のためだ。

しばらく飛ぶと、すぐに向日葵畑が見えてきた。幽香が愛情をこめて育てた花々は、強い日差しを浴びるべく一斉に西のほうを向いている。

 

「幽香、いるかー」

 

俺は幽香の家の前に立って、大声で呼び出す。いつもなら返事があるが…ふむ、留守のようだ。

もう日が落ちそうだというのに戻っていないというのは幽香らしくはないが、彼女はたまに日数も決めずにフラフラと歩いていることがある。

流石にこんな暑い中で歩いているとは思えないのだけど、家にいないのならばどこかに行っているのだろう。向日葵たちが熱を出しているというわけでもなさそうなので、ここは異変とは関係なさそうだ。

俺はそのままの流れで彼岸まで飛んで行った。それこそ、閻魔たちだって一応調べる対象だからな。映姫とか小町が異変を起こしていた場合、幻想郷のパワーバランスがひっくり返る程度じゃ済まなそうだけどな。

無縁塚はいつものごとく閑散としていた。ただでさえ静かなところだというのに、暑さのせいか闊歩する野良妖怪すらもおらず、周囲は静寂に包まれていた。もし外の世界から流れ着いた人間が今いたとしても…この暑さの前にはすぐに力尽きてしまうだろうな。

一応周囲を見渡してみたが、そういった影は一つも見つからなかった。

 

「ふむ、霊はいつも通りだな」

 

三途の川までたどり着いたけれど、特に何か変な様子はなかった。

死んでしまっては熱を感じることもできないのか、いつもの通り人魂たちがふわふわと浮いていた。遠くなので誰かはわからないけれど、死神も通常営業しているようだ。

人魂と違って死神たちはある種の妖怪のような立ち位置のはずだけど、暑そうにしている様子はない。俺の装備が熱を伝えてきているので、ここが涼しいというわけではないみたいだ。

もしかしたら、死神たちはちょっとやそっとじゃ死なないような体になっているのかもしれない。仮にも神と冠しているからには、そういう能力があってもおかしくはない。

 

「ここも関係なしっと…あとは…」

 

三途の川の向こう側にある畜生界も今回は省いていいだろう。あそこが熱源の放出路だった場合、もう少し動物霊に異変が起きるはずである。だというのに何も起きないのだから、たぶん関係ない。

あとここから行ける近いところといえば…冥界だろうか。あそこも、俺が来る前とはいえ異変を起こしたことがあるらしい。何かあってもおかしくはない。

当時は春を集めるなんて異変を起こしていたらしいし、季節絡みで何かやっていても変ではないだろう。

俺は冥界へと舵を切った。一瞬だけ気配がしたような気がしたけれど、何も見つからなかった。

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