東方十能力   作:nite

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三百九十四話 意外な同行者

「狂気的なもの?これが?」

「はい。どうやら、それが幻想郷中で暑さが広がっている原因です。端的に言えば、狂ってしまうと暑くなってしまうらしいです」

 

それなら確かに、一部の人々がそもそも暑さを感じなくなっている理由は分かるが…

 

「ならなんで俺も暑いんだ。浄化はずっと発動してるんだぞ」

「それは…」

「定晴ー!」

 

藍が何かを言おうとした瞬間、藍が押しつぶされた。他でもない、自らの主である紫によって。

紫はそのまま俺に抱き着いて…すぐに顔を真っ赤にして離れた。

 

「…意識してるのに勢いで抱き着くと恥ずかしいわね」

「なら、なんでしたんですか…」

 

よろよろと藍が立ち上がる。ただでさえ疲れた様子だったのに、もっと藍が煤けたように見える。

 

「紫、大丈夫だったか」

「ええ、スキマの中に暑さなんて概念はないわ」

 

熱中症になったらしい霊夢と水那も安定しているという。未だに少しふらふらするらしいが、生活するには支障がないレベルには回復したとのこと。

それはよかったのだが…

 

「それで、狂気が原因ってどういうことなんだ?」

 

魂の狂気に聞いてみても、何が何だかといった感じで、狂気を感知している様子はない。

 

「ねえ定晴、狂気ってどう定義すると思う?」

「常軌を逸しているとかそういう話か」

「ええ。じゃあ普通って、常軌って何をもって常軌になるかしら」

 

なんとなく、紫の言いたいことが分かってきた。つまり…

 

「幻想郷全体が狂気に包まれてるせいで、むしろ狂気だと認知できないってことか」

「正解!流石定晴!」

 

いい笑顔でサムズアップをしてくる紫。なんというか、そういう反応はちょっと古めかしい感じがするな。

狂気が蔓延している原因は不明だが、この暑さが狂気によるものなのは間違いないらしい。そのため、俺たちは狂気であると気づけなかったわけだが…

 

「でもやっぱりおかしいぞ。俺の浄化っていうのは状態異常に対して常に効力を持ってるんだ。幻想郷が狂気に包まれてたとしても、俺にもかかっているのは変だ」

「そこなのよねぇ…定晴にも効果が出てるっていうのは私たちからしても変なのよ」

「もしかしたら、狂気以外の原因もあるかもしれませんね。もう少し調査をしてみなければ」

 

一応先ほどから浄化の出力とか範囲を変えて試しているものの、暑さの感覚は変わらない。紫と藍が平然としているので、死ぬ暑さではないはずなのだけど…

うーむ、浄化を過信していたのだろうか。とはいえ、何の反応も示さないというのはおかしな話だけれど…

 

「あ、そうだ!霊夢たちはもう大丈夫そうだし、私が異変調査に同行するわ!」

「眠らなくて大丈夫か?」

「あら、妖怪は夜こそ真骨頂よ。むしろ、定晴こそ休まなくて大丈夫かしら」

 

重装甲は重く動きづらいが、これくらいならどうってことはない。少なくとも、休憩が必要なほど疲労はしていない。戦闘とかはしていないしな。

藍は屋敷に戻って霊夢たちの世話をしつつ、スキマを使って調査。そして、紫が俺に同行して実地調査をすることになった。紫が体を使って調査をするのに違和感を覚えてしまうな。

藍がスキマで戻ったあと、紫は俺の方をじっと見つめている。

 

「なんだ?」

「いえ、折角一緒にいるのに顔が見れないのは残念で…そうよ、狂気くらいなら私の能力で排除できるわ!」

 

紫が俺に向かって手を伸ばす。ムムムとまさぐるような手つきをした後に…

 

「見つけた」

 

突如、俺に寒さが襲い来る。急いで重装甲の中に展開していた魔術を解除し、重装甲を脱いでみる。

夏の夜特有の暑さはあるものの、先ほどまでのような暑さというのはなく長期活動していても精々喉が渇く程度にしかならない。今までの、生身で外に出たら即死のような暑さはきれいさっぱり消えてしまった。

 

「凄いな…すごいな、紫」

「ふふん、私にかかればこれくらいっ」

 

どや顔している紫を見ていると、魂の狂気が騒ぎ出した。

 

『狂気を感知したぞ。彼岸の方からだ』

『はい?』

 

彼岸の方向には閻魔である映姫がいて、幻想郷で死者多数になりかねない今の異変を見過ごして放置しておくわけないとは思うのだけど…しかし、場所が彼岸であるならば行くしかないだろう。

 

「紫、どうやら彼岸の方が怪しいみたいだぞ」

「任せなさーい」

 

目の前にスキマが開く。スキマの中の目玉が俺の方をぎょろりと見てくるが、流石にもう慣れた。

 

「彼岸直行便よ」

「ほんと便利な能力だこと」

 

俺と紫はスキマを通って三途の川の畔まで移動。移動時間は僅か数秒。

到着した彼岸はいつも通りの感じだった。先ほども来たけれど、特に支障が出ている様子はないんだよな…

 

『もっと向こう。三途の川を渡った先だ』

 

だが、狂気曰くここが目的地ではないらしい。どうやら、狂気の元は本当に彼岸にあるらしい。それこそ、本当に映姫が許しておく理由がないとは思うのだけど…

 

「紫、どうやら彼岸は本当に彼岸みたいだぞ」

「ええ?ならなんであの閻魔が動かないのよ」

「忙しいんじゃないか?」

 

実際に死者多数になっている場合、調査なんかしている場合ではないだろうしな。

とはいえ、死神たちは通常運行みたいなので、彼岸はそこまで切羽詰まっているわけでもないらしい。幽霊の量もいっぱいいるわけではないみたいだしな。

 

「仕方ないわね…スキマオープン!」

「俺もそれ欲しい」

「模写でどうにかできないのかしら」

「トンデモすぎて模写なんてできねえよ」

 

俺と紫は彼岸へ。三途の川を無視して移動できるのは本当にチートだと思う。ミキの転移もそうだけど、瞬間移動系は使い勝手がめちゃくちゃよさそうで俺も欲しい。

瞬間移動しないと死ぬような状況になれば俺も覚醒できるかな…無効化と同じくとんでもない代償を持ってかれそうだ。

 

「はい到着。それで、どっちかしら」

「…向こうだな」

 

それは奇しくも、動物霊の異変で通った道を指し示していた。それが意味するところは、地獄。

 

「地獄が暴走してるのかしら」

「行ってみればわかる」

 

俺たちは地獄に向かって歩き…

 

「はいスキマ」

「本当に楽だな」

「一応これでも別世界にわたってるからちょっと苦労してるのよ」

 

スキマを通って地獄に向かった。

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