東方十能力   作:nite

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十二章 重なる日常
四百三話 ワクワク!紅魔館改築計画


フランに急かされていたので、俺は今日紅魔館にやってきていた。式神の二人は家でお留守番だ。

庭に紅魔館の住人たちが集まっており、パチュリーが魔法陣を書いているのが見えた。

 

「お兄様ー!」

 

フランが突撃してきたので、身体強化で受け止める。ここで身体強化に遅れてしまえば、俺の体はバラバラになるので注意だ。

フランが突撃したことで他の人たちも俺の存在に気が付いたようだ。魔法陣を書いているパチュリー以外が俺に挨拶をする。

 

「来たわね」

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、定晴様」

 

宴会の時はレミリアはダウンしていたと聞いていたものの、すっかり元気になったようで大きな紙を広げている。

俺がそれをのぞき込むと、それはいわゆる設計図であった。紅魔館改築計画の、その設計図が大きく広げられていた。

 

「工事は他に頼むのか?」

「鬼か天狗か…完璧に仕事をしてもらうための準備はしてあるわ」

「今は立地の整備と魔術の準備中です」

 

小悪魔が指さしたところでパチュリーは黙々と魔法陣を書き続けていた。どうやら地面を均しつつ上に何か建てても問題ないくらい地盤を固定する魔法らしい。

建物を建てたあとに温室のための魔法陣を作るというのだから、パチュリーは大忙しだ。

 

「魔法って便利だな」

「お兄様もいつか使えるよ!」

「俺の魔法の才脳はあまりないからなぁ…」

 

魔女の魂のおかげである程度は魔法を普遍的に使えるようになったけれど、俺自身の魔法への理解度が低いのが問題だ。感覚で使える魔法は増えたけれど、魔法陣のように理論的に組み立てる必要がある魔法には弱いのである。

結界とかで再現してしまった方が使いやすそうだ。

 

「それでそれで!お兄様もこれ見て!」

 

フランが指さしたのは設計図。温室の大きさや規格が事細かに描かれている。

それによると、大きさは建物二階分あり、ドーム状になっている。そこを、お決まりの咲夜の空間歪曲により中を広くするらしい。歪曲できる限界はあるものの、これくらい大きいものであれば歪曲後では四倍くらいなら安定して広げられるようだ。

 

「俺に何を?」

「中を決めてほしいの!楽しくなるようにして!」

 

外の構造は決まっているようだが、確かに、中の構造は決まっていないようだった。今のままでは、ただのだだっ広いドームが出来上がるだけだ。

温室なので別にそれでもいいのではないかと言ったら、フランがつまらないと文句を言い始めた。どうやら、折角新しく作るのだから楽しいものにしたいらしい。

 

「美鈴はそれでいいのか?」

「妹様が楽しければいいんですよ。園芸はただの趣味ですから」

 

微笑みながら言う美鈴。紅魔館の人間は、スカーレット姉妹を最優先に考える、なんとも従者らしい体系をしている。

まあ美鈴がいいのであれば、フランの要望に応えてみるとするか。とはいえ、俺は温室の楽しさはその植物を見ることだと思っているので、フランの思う楽しいを聞いてみよう。

 

「ブランコ!迷路!あと…砂場!」

「待て待て、それだと公園だぞ」

「公園じゃないの?」

 

首を傾げるフラン。いつもはもっと落ち着いているし冷静な気がするけれど、興奮していることもあってか今日のフランは見た目相応の幼さを感じられる。

温室が必要とされている理由は、周囲の環境に左右されずに常に温暖な気候で植物を育てることができるからだ。寒いときはもちろんのこと、暑すぎる日でも暖かい程度の気温で管理することができるので、暑さ・寒さに弱い植物であっても安定して育成することができるのである。

そのため、遊ぶための空間ではない。そもそも、室内遊具であれば紅魔館の中に作ることができるんじゃないのか?

 

「空き部屋とかないのか?」

「あるにはあるけど、ちょっと難しいのよ。ほら、フランってば興奮しすぎると壊しちゃうから」

「もうそんな子供じゃないもん!」

「先日妖精メイドを数匹ぴちゅらせたじゃない」

 

紅魔館の中に作ることはできる。ただし、その場合周囲の部屋も改装するか、吸血鬼の腕力をもってしても破壊されないような素材で作り直す必要があるとのこと。

流石のフランもそこまで子供ではないと思うが…今の興奮しているフランを見ていると、過言ではないような気もしてくる。

 

「狂気は大丈夫だよ!」

「無邪気さが危ないのよ」

 

フランの精一杯の声はレミリアに即否定された。フランはしょんぼりとするが、俺もレミリアの意見に全面的に賛成である。

 

「お兄様からも何か言ってよ!」

「うーん…最近のフランは物を壊したりはしないけど、危なっかしいのは変わらずだからなぁ」

「えぇ~…お兄様が言うなら我慢する」

 

不貞腐れながらも渋々諦めたようだ。もうちょっと姉の話も聞いてあげてくれ。

ひとまず、温室公園化計画は阻止できたようだ。その代わりに、普通に公演を庭に作ってくれと美鈴に頼んでいる。美鈴の趣味の庭であるから、庭の裁量権は美鈴が握っているらしい。美鈴が頭を掻きながら考えますねと言っている。

 

「定晴、ちょっといいかしら」

「パチュリー?」

「魔力の固定がいるから、しばらく魔力を流し続けておいてほしいのだけど」

「わかった」

 

パチュリーに言われ、俺は魔法陣に魔力を流し始めた。その後ろで、フランとレミリア、美鈴が話し合っている。

 

「温室って何が必要なの?」

「必要設備はほとんど整ってますから、あとは何を育てるか、それと何を置くかですね」

「向日葵!」

「育てることはできますけど、妹様は向日葵がお好きなんですか?」

「幽香が前にアクセサリでつけてたの!」

 

やはり、俺はあまり口出ししない方がいいと思うな。この庭の作成計画は、一つのコミュニケーションになっているのだ。部外者の俺が何かと色々言わない方がいいように思える。

 

「定晴、十分よ」

 

パチュリーが魔法陣の作成の続きを始めた。今の俺には見ても内容がわからない。

パチュリーに魔法陣の作成を引き継いだので、俺は静かに帰るとするか。フランにはあとから色々言われるだろうけど、まあそれも一種の俺のお節介ってことで…

 

「定晴さん、お待ちを」

 

そんな俺の肩を、後ろから捕まれる。

振り向けば、美鈴が優しい笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。美鈴と話していたはずの二人は、今は設計図を前に何やら言い争いをしていた。

 

「あなたの気遣いは素晴らしいものだとは思いますが…私のお節介で止めさせていただきます」

「美鈴…」

「妹様を含め、私たちはみなあなたのことも一員のように思っています。勝手に帰るなんて寂しいことしないでください」

 

美鈴の言葉は、まるで水のように俺の中を静かに流れた。そういえば、美鈴は気を見て行動することができるんだったな。

俺は足を戻し、美鈴に軽く謝る。それは、反省のないような軽さではなく、家族に謝るかのような柔らかさで。

 

「すまん、悪かった」

「分かればいいんですよ。門番として、行くときも帰るときも、私の許可なく通しません!」

 

明るい笑顔でそう言う美鈴。ああ、なんと素晴らしい門番であろうか。

俺はフランのところに戻り話しかける。

 

「じゃあ、入り口を工夫するのがいいんじゃないか?」

「お兄様の意見に賛成!」

「ちょっとフラン、あなた定晴に肩入れしすぎよ!」

 

あくまで出すぎないように、でも俺も一員であるように、俺は二人と話し合う。

後日、紅魔館にはちょっと淡い紅い色をしている温室が建てられた。その壁には、紅魔館の皆の顔が書かれていた。

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