東方十能力   作:nite

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スマホがデストロイしていたため二ヶ月も間が開きました申し訳なく思っております。


四十一話 月の物語④

さて、俺の目の前ではとある二人が言い争っている。方や月の都のお姫様。方や都の重鎮の…名前の知らない誰か。地球へ行くための装置について言い合っているようである。

 

「だ・か・ら、早く使わせてって言ってるでしょ!?」

「しかし今日は使用されないと言ったので今日は…」

 

融通が効かないあたり月の民も人間なのだと実感する。

重鎮曰く予定にない使用は認められないとのこと。姫様も月の民の中ではそれなりの地位だと思うが、それでも認めることができないらしい。

 

「予定が入ったのよ!そんな事も分からないの!?」

「いい加減されてください!許可なく使うことは許されていません!」

「それで地上の民を残しておくって言うの!?」

 

俺としては正直めっちゃ迷惑がかかっていると思うんだが。というか依姫達が威厳たっぷりで歩いてたから手筈は整っていると思ったんだが、そうではなかったらしい。

結局五分ほど言い合った後に依姫が次の言葉で折れた

 

「これはそれなりに危ない物なのですよ!そこの奴から穢れを感じないのならば何処かの部屋にでも明日まで隔離しておけば良いじゃないですか!」

 


 

そして俺は連れられるままにとある密室に連れてかれた。窓はあるが開かず、ドアも外から鍵を掛けられた。連れてこられた後に豊姫が「ごめんなさいね」とは言っていたから若干の罪悪感的なものは感じているのだろうが、どのみち今すぐ帰れないなら一緒だ。

まぁ一応殺されたりはしないようだから安心…とまでは言えないが、少なくとも希望の光は見えた気がする。地球に帰れず月で死すとか訳わからんにも程がある。

 

「定晴さん、食事を持ってきましたよ」

「ん?ああ、ありがとう」

「そんな、だって貴方完全にとばっちりみたいじゃないか」

 

依姫が申し訳無さそうな顔をする。

持ってきてくれた料理は俺も見たことないものばかり。豪華ではないがある程度配慮して作られたものであろうことがわかる。

 

「まあ、これも一つの結果だったと言う事で。そういや一つ思ったが俺に撃ってきたレーザーって使えないのか?」

「あれは今別の所が使っているから無理なんだ。申し訳ない…」

「姫がそんな簡単に頭下げちゃったら駄目だろ?ほら、顔上げろ」

「でも…」

 

ウジウジ言っているが結局俺の責任の方が大きいと思うから、依姫達にはほとんど責任は無い。そもそも馬鹿正直にビームを躱していなかったら今頃困惑しつつも地球にいた筈なのだ。

依姫がなかなか顔を上げないので俺はしびれを切らし無理矢理首に手を持っていって上げさせる。

 

「ほら、くよくよしない!そんなに申し訳なくされても俺が困るだけだ。だからここでは笑顔を見せて欲しい。少なくとも俺はそう思うぞ」

「ああ、そうだな」

 

そう言って俺は素早く食事を始める。だから俺は気付かなかった。今の依姫の顔が真っ赤に染まっていたことなんて。

 


 

次の日、俺はやっとこさ帰れる事となった。昨日来た部屋に連れてこられ機械に乗せられる。

 

「これは帰還と共に記憶を消す装置よ?一応辻褄が合うようにはなるとは思うけど…保証はしないわ」

「マジかよ。まあ、ありがとな豊姫、依姫もな」

 

豊姫は笑顔だが依姫はなぜか少し俯いている。ふむ、体調でも悪いのだろうか。

 

「え、あ、はい。そのー、えっと」

「あら?元気無いわね。どうしたのよ」

 

簡単に別れを告げた後直ぐにそこにいたうさ耳が報告をする。昨日の重鎮ではなく下っ端のうさぎのようだ。あれだけ厳重に管理されていたのでただの下っ端、というわけではないだろうが。

 

「準備完了、三十秒後に起動、転送します」

「それじゃあさよならだ」

「ええ…」

 

顔を俯いたままの依姫は静かに俺に近付き…

 

「定晴さん!」

「え?」

「あらー…うふふ」

 

俺は困惑するのだが、豊姫はまるで全て知っていたかの様な顔をする。因みにうさ耳は作業に集中していて気付いていない。

 

「これを飲んでください」

「なんだこれ?」

「記憶が消えないまま帰れる薬です」

 

どうやらこの薬を飲むことで俺は記憶を消されぬまま地球へと戻ることができるらしい。まあ月での経験はそれなりに面白かったから忘れるのはちょっと惜しいなとは思っていたが。

 

「そんな事したら重罪になっちゃうし…大丈夫なのか?」

「その、私達の事を憶えておいて欲しいですし…もう一度会って話がしたいのです。貴方の強さは、また会いたいと思えるものでした」

 

依姫が力強く言う。その顔は…微笑んでいた。

 

「残り十秒!」

「早くお飲み下さい」

「あ、ああ!」

 

素早く蓋を取り中身を一気に飲み干す。飲んだ瞬間体の中にトロトロした何かが入ってきた感覚がした。うーん、ゼリーに似たような薬だ。

 

「転送、開始!」

 

うさ耳がそう言ったら機械が重い音をたてて動き出す。そして俺の目の前がどんどん白くなっていく。転送装置なんて使うの初めてだが、こんな感じなのか。体を粒子に変換して到着地点で再変換…というよく言われるプロセスなのだろうか。

 

「それじゃあまたな」

「はい!お元気で」

「またね〜」

 

豊姫は扇子で口は隠していたが目は確かに笑っていた。対する依姫は微笑んでいながらも目は少し潤んでいた様な気がする。ふむ、そこまで名残惜しいか?

こうして俺は我らが地球へと戻って来たのだった。

 

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