東方十能力   作:nite

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十三章 虹龍洞
四百二十一話 金稼ぎの手段


定晴さんに怒られた。なんか、閻魔様みたいな、華扇みたいなことを言われて怒られた。

曰く、私は怠惰すぎて水那を飢えさせているとのこと。そりゃ私だってそれは申し訳ないと思ってるけど……そもそも、水那を呼びつけたのは紫や定晴さん自身だ。水那が不自由なく生活できるように補助するのは二人の義務なんじゃないだろうか。

今の時期は紫も眠ってて外の世界のものがないし、差し入れも少ない。たまに藍が持ってきてくれるけど、紫よりも厳しくて頻度も少ない。水那が飢えちゃうのは、そうやって差し入れを少なくするからだと思う。

とはいえ、私としても、私よりも幼い水那が飢えてしまうという現状に罪悪感を感じないわけじゃない。私もそうだけど、水那もまだまだ成長期なわけだし、外の世界でもそこまでお腹いっぱい食べていたわけじゃないからこそ慣れてると言っているみたいだし、せめて毎日必要な栄養だけはしっかりと食べさせなきゃ。

そんなわけで、私は何かお金を稼ぐ手段がないかと人里に来ていた。妖怪退治は受動的な稼ぎだし、能動的に稼げる何かがないと。

 

「ふむ、ならばどこかの店で店番でもすればいいんじゃないか?」

「だめよ、もっと大きく稼がなきゃ」

「お前なぁ……」

 

慧音に相談したけど、いい返事はもらえなかった。私はね、大きく稼いで水那にお腹いっぱい食べさせられるような話を求めてるのよ。

私は仕方なく人里を歩くことにした。商売のタネはどこに落ちているか分からないもの。もしくは、博麗神社に来てくれる、ないし賽銭箱にお金を入れてくれる人が増えるような何かがあればもっと博麗神社も潤うと思うのよね。前に天子に神社を壊されたときに建て直したから神社の維持費にはそこまでお金も掛からないし、今賽銭箱の中身が増えれば直接私たちのお金にできるわ。

そうして歩いていると、人混みが道の途中にできているのを見つけた。面白いものの予感!

 

「いらっしゃいいらっしゃい!これさえあれば妖怪にも勝てるよ!」

 

人混みの中心では何かを売っているらしい。妖怪にも勝てるなんて触れ込みを使うなんて、随分と強気の商品のようね。

ただ、人混みが結構分厚くて何を売っているのかここからじゃわからない。もう少しどけてくれたら見えるんだけど……

そうして私が四苦八苦していると、人混みの外側に見知った顔があるのを見つけた。人混みの中に行くのは一度諦めて、引っ越しの言葉をかけてあげるとする。

 

「あんた、本当に来たのね」

「うん!やっほー、霊夢」

 

人混みに紛れるようにいたこいしは、笑顔で手を振ってきた。無邪気な子ねぇ。

定晴さんからも話は聞いていたし、それよりも前から閻魔様から話をされてはいたけれど、普通にこの子が地上にいると少し違和感があるわね。

 

「地上はどうかしら」

「昨日来たばかりだけどね。思ったよりも人間の皆が優しくて好きー」

「そりゃよかったわ」

 

まあ何もしてこなければ妖怪もただの子供だしね。一応こいしは地上に引っ越して来るにあたって色々と制約とか約束事を引っ提げてきたらしいけど、今のところそれでストレスが溜まってる感じはなさそうね。

一応こいしが何か問題を起こしたときは、私や定晴さんがなんとかするっていうことになってるから、そうならないことを祈ってるわ。妖怪退治をするのは別に吝かじゃないんだけど、こいしが地上に来た経緯も多少は聞いてるから無暗に地底に帰すことにならないようにはしたい。変なことをしたらすぐに退治するけどね。

 

「それで、これは何を売ってるのかしら?」

「カードみたいなやつっぽい?スペルカードとは違って、ちゃんと力が込められてるような……あ、定晴が使ってるスペルカードみたいなやつ」

 

つまり、使えるスペルカードってわけね。

普通はスペルカードというのはあくまで宣言用の紙であって、なんなら別に媒体的なものを用意していない人も多い。定晴さんはスペルカードを発動させやすいように霊力を込めてるって聞いてるんだけど、それと似たようなものかしら。

 

「でもそんなの普通の人間に使えるのかしら」

「さあ?」

 

二人揃って首を傾げる。

人里の人間はあまり霊力の扱いに慣れていないっていうのもあって、普通の弾幕ごっこですら遊べない人が多い。勿論、幻想郷に住んでいる以上ある程度は霊力を感知できたりするけれど、弾幕勝負となると話は別だ。

そんな人里の人間たちに対して『妖怪にも勝てる』なんて……今も中心から色々と売り文句みたいなのが聞こえてくるんだけど、妖怪に並び立つ力だとか見慣れた力を君のものにとか、そういう随分と強気な言葉が飛び交っている。

 

「でもこれはチャンスかもしれないわ」

「チャンス?」

「ええ、私は今お金稼ぎの方法を探していたのよ」

 

何を売っているのかさえ分かれば、あとは手段を真似れば私にもできるかもしれないわ。なんなら、こっちは博麗神社の霊験あらたかなお札もつけちゃえばガッポガッポよ。

そのためにもまずは何を売っているのか確認しないといけないんだけど……うーん、人混みが分厚くて見えないわね。もうこうなったら上から見てやるわ。

私は足を地面から離し、人混みの上を飛ぶ。こいしは見上げてくるばかりで飛ぼうとしないから、もしかしたら人里内じゃ飛ぶのも禁止されてるのかもしれないわね。

 

「ちょっと、何を売ってるのか見せなさい」

 

人混みの中心の空いているところに降り立てば、流石の人々も後ずさる。こういうときに博麗の巫女っていう役職は便利ね。

中心の商人は顔色を変えずに私に商品を見せてきた。簡易的な台の上に置かれたカードのような商品には、それぞれが別の絵柄が書かれていた。カエルとか兎とか、中にはなんだか見たことあるような絵柄も見える。

 

「これはアビリティカード。さあ素敵な巫女さん、何を買う?」

「どういうやつなの?」

「例えばこのカードは追尾する弾を撃つことができる。こっちなら自分の周囲に発射物を浮かせることができる。月を出したり力を増したり、なんでもござれなカードよ」

 

色々と並んでいるカードの中には、まさかの博麗神社のマークが書かれているものもあった。それは確かに私が使う弾幕が使えるというもので……一気にきな臭くなってきたわね。

 

「あんた、これどこで手に入れたのよ」

「それは企業秘密で」

「うるさいわ、さっさと出所を吐きなさい!」

 

人里で見つけたアビリティカード。既に異変が起きているだなんて、その時の私は思ってもいなかったのだった。

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