東方十能力   作:nite

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四百二十三話 お誘い

アビリティカードの流通は止まらず、霊夢と魔理沙も毎日異変の調査を続けているらしい。だが、売人というのが意外にも見つからず難航しているとか。霊夢も、買い集めているときはすぐに見つかったのに、調査となると全然見つからないと嘆いていた。

やはり何かしらの思惑があって流通させているのだろう。霊夢や魔理沙が調査を始めたことを知って逃げ隠れしているに違いない。

 

「ご主人様、アビリティカード見つけてきたわ」

「えぇ……」

 

そんなある日、ルーミアがアビリティカードを一枚買ってきた。どうやら人里にアビリティカードを売っている人がいたらしい。そこにルーミアの能力が込められたアビリティカードがあったから買ってきたとのこと。

 

「これを使うと、ほら、こんなふうに私の闇が広がるわ」

「封印状態のルーミアのやつか」

「そうね。周囲が見えなくなる欠陥能力よ」

 

周囲から自分を隠し、自分も周囲が見えなくなるという、なんとも言えない能力。封印状態のルーミアは太陽の光に弱く、日頃から闇を纏って移動していたという。

にしても、正直こんなアビリティカード作って何がしたいのだろうか。この能力もいらないし。

 

「ねえ、ご主人様、いらないって顔してるわね」

「ああ、いや、ううん……まあ、いらん」

「言うわね。まあ私もいらないけど」

 

今のルーミアは完全に闇を操る力を持っているので、この完全劣化版の能力は必要ない。因みに、今もやろうと思えば同じことができるっぽい。

 

「俺の能力のアビリティカードとかないのかね」

「……どれを言ってるの?」

「無効化のカードとかあったら緊急用に持っておくんだけどな」

 

文々。新聞によると、アビリティカードにも持ってるだけで効果があるやつや使って効果があるやつなど種類があるらしい。その中でも使用型のカードは使用のクールタイムがあるだけで他に代償がないらしい。例え一日クールタイムがあったとしても、代償なしで無効化が使えるのなら持っていても損はない。

でも確かに、ルーミアの言う通り俺の能力をカードにすると「どれを」という話になるな。それとも、使う度に効果が変化するカードとかになるだろうか。

 

「ただまあどれにしたって、ご主人様やユズの能力がカードになってたら厄介よね」

「俺もユズもそれなりに妖怪特攻な能力だからな」

 

俺の浄化やユズの見破りは妖怪に対して使うと、それだけで致命傷を生み出しかねない。俺やユズは自分たちで制限して無暗に使わないようにしているんだが……悪意を持った誰かがこの能力を持ったら大変なことになるな。

 

「ないに越したことはないか」

「そうよ。私も、自分の能力を他に使われるのが嫌で買ってきたんだから」

 

それなりの値段はしたが、ルーミアの所持金で買える額だったらしい。いわゆる、ルーミアの自腹である。

ルーミアがソファに座り、アビリティカードをスカートのポケットにしまった。どうやら持ち歩くらしい。

俺もソファに座ろうとしたら、ピンポーンと扉のチャイムが鳴った。来客のようだ。

 

「はいよー」

 

俺が扉を開けると、そこには早苗、それに咲夜が立っていた。二人とも、その手にはアビリティカードが握られている。既に数枚集めているようだ。

いきなりの訪問に面を喰らう俺は、二人に事情を尋ねた。

 

「どうした、二人とも」

「定晴さん!」

「定晴様」

「「異変解決に行きませんか?」」

 

示し合わせたように同じことを言う二人。いや、実際に示し合わせていたのだろう。

ひとまず立ち話はなんなので家の中に招き入れる。そういえば、咲夜を家の中に入れるのは初めてのような気がするな……早苗も初めてか?

 

「どういうつもりだ?」

 

ソファに座って話を聞く。咲夜にも座るように促したのだが、咲夜は頑なに座ろうとしなかった。

早苗が先に口を開く。

 

「最近幻想郷でアビリティカードなるものが出回ってるのは知ってますか?」

「ああ。さっきもルーミアが買って帰って来たな」

「私も独自に調査してたんですよ。そしたらなんと妖怪の山が怪しいということになりまして!」

 

早苗のテンションが段々と上がっていく。そこにすかさず咲夜が割り込んだ。

 

「私もパチュリー様のご指示でアビリティカードを集めていまして。それでどうやら紅魔館から近い妖怪の山が穴場と聞きまして」

「ちょうど咲夜さんと会ったので一緒に探そうと思ったんですが……その、先日紫さんが定晴さんと一緒に解決したと聞きまして……」

 

冬になる前に起こった例の極暑異変のことだろうか。紫と行動したのは後半だけだったが、たしかに異変を一緒に解決したともいえるかもしれない。

 

「なので、その、私たちも一緒に解決したいなーと」

「あー……なるほど?咲夜もか?」

「そうですね……私も、是非」

 

咲夜の意図は不明だが、早苗の言いたいことはなんとなく理解できた。早苗からは告白もされたし、紫と同じ体験をしたい的なあれだろう。多分。

早苗はやる気十分といった様子で、咲夜も少し気合が入っているようにも思える。まあ暇ではあるし行くことは問題ないのだけど……

 

「霊夢や魔理沙も調査中だ。鉢合わせるかもしれないぞ?」

「知ってます。人里で霊夢さんに会いましたから。その時は私もまだよく分からなかったので流したんですけど、今思えば霊夢さん随分不機嫌だったような」

「あー、それは半分は俺のせいだ。九割は霊夢の自業自得だけど」

 

百分率を超える値をたたき出しつつ、霊夢の責任は確実にある。霊夢がアビリティカードをあそこまで集めなければ、そもそも俺は霊夢を煽るようなことはしなかった。

早苗はソファから立ち上がると、ポケットから一枚のアビリティカードを取り出した。どうやら事前に集めたうちの一枚らしく、それをこちらに手渡ししてくれる。

 

「これはうちのお守り的アビリティカードです。アビリティカードブームに乗っかって作ってみました」

「なるほど、そういうアプローチもあるのか……」

「定晴さんに差し上げます!異変解決後も大切にしてくださいね」

 

確かにアビリティカードの表面に、守矢神社の正式な印が書かれており、しっかりと神力を感じることから諏訪子と神奈子も手伝ったことが伺える。

 

「ということで、定晴さんも行きましょう!異変解決!」

「定晴様、一緒に来ていただけると助かります」

「ノータッチのつもりだったんだが……まあいいか」

 

最悪犯人を霊夢に渡したらいい感じに鬱憤を晴らしてくれるだろう。それに、霊夢はあまりアビリティカードのことを異変と捉えていないようだったし、解決自体は魔理沙か俺たちがすることになるかもしれない。

俺が立ち上がると、早苗は奥で座っていたルーミアに声をかけた。

 

「ということで定晴さん借りますねー」

「はいはーい」

 

凄く軽く扱われ、俺は外に出た。後ろから早苗が背中を押してくる。

んじゃ行先は妖怪の山か。一体誰がアビリティカードなんか流通させているんだか。

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