東方十能力   作:nite

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四百二十四話 厄神様への聞き込み

外は、雪こそ降っていないものの行動に支障が出るくらいには寒かった。これは数日のうちに雪も降り始めるだろうな。

 

「目的地は妖怪の山です!ごーごー!」

 

早苗の先導で妖怪の山へ移動する。早苗が先頭で、俺が真ん中、咲夜が俺のもっと後ろにいる。咲夜に声をかけても、大丈夫ですとしか言わないし、機嫌が悪いのだろうか。

 

「……定晴さん、気にしなくていいですよ。咲夜さんは、ちょっと難しいお年頃ってやつです」

「早苗も咲夜も年齢そんなに変わらないだろ」

「まあそうなんですけどねー」

 

どうやら咲夜は異変とは別に悩んでいることがあるらしい。早苗曰く俺が気にする必要はないということなので、一旦考えないようにしておく。女性の悩みなんて俺が聞いたところで何もできないしな。

そうして妖怪の山まで移動している最中、近くを誰かが爆速で通過した。驚く間もなく、背後から弾幕が遅いかかり、急いで結界を展開する。

 

「なんなんですか!」

 

そのまま弾幕を放っている人物は、同じく俺たちの横を通過していった。どうやら俺たちに放った弾幕というわけではなく、先の人物と弾幕勝負をしているうえでの流れ弾らしい。

前を見ると、俺たちの横を爆速で移動したのは魔理沙。弾幕を放っているのは三毛猫の妖怪のようだ。幻想郷、猫の妖怪多いな。

 

「私たちの横を通過するなんて迷惑ですね……あ、定晴さん、結界ありがとうございます」

「邪魔をするなんて許せないわ。定晴様、二人まとめて始末してきます」

「どうどう、落ち着け」

 

いつの間にやら標的を狙う表情をしてナイフを構えていた咲夜を落ちつかせる。流石に弾幕勝負に割り込むのは後々面倒なことになる。

魔理沙は異変解決の調査をしていたはずだが……まあ、道中に弾幕勝負をするのは異変調査のあるあるか。そこまで妖力量が多いわけではないし、あの三毛猫が黒幕という可能性は低いだろう。

 

「なんであれ、俺たちはさっさと妖怪の山に行っちゃおう」

「それもそうですね。善は急げです!」

 

魔理沙と三毛猫が弾幕を放ちあいながら移動しているので、巻き込まれないように注意しながら妖怪の山へと急ぐ。まったく、弾幕勝負が好きなのはいいのだが、周囲のことをもう少し気にしながら戦ってくれ。

 

妖怪の山まで移動すれば、特にいつもと変わらず至って普通の様子であった。哨戒天狗はいつも通り飛び回っているし、極暑異変のように見た目で分かりやすい変化が起こっているわけでもない。

 

「そういえば、妖怪の山が怪しいってなんでわかったんだ?」

「明らかに妖怪の山はアビリティカードの流通量が多いんですよ。まるで誰かが配っているように、色んな妖怪がアビリティカードを持ってて……これは元締が妖怪の山にいると思いまして」

「私はその話を早苗から聞いただけです。あくまでアビリティカードを集めることが私の目的なので」

 

守矢神社は妖怪の山のほぼ中心に位置している神社だ。それのおかげで妖怪たちとの関わりも深く、話す機会も多いのだろう。早苗が気が付けたのは、そういう日頃の些細なことからだったのかもしれない。

 

「でも、どこに行けばいいんだ?」

 

妖怪の山というのは、幻想郷で一番大きい山だ。妖怪の分布も広く、上から見れば結構な大きさがある。闇雲に探すにしては少々広すぎるのだ。

妖怪たちもどこまで信頼できるものか分からないし、アビリティカードの売人がどこに潜んでいるのかも分からない。あまり大々的に動くと、霊夢たちのように売人から逃げられるだろうし……

 

「そうですね……絶対に異変に関係しないという方がいれば話を聞けるんですけど」

「妖怪の山は縦社会。他の妖怪と一切の関わりがない妖怪っていうのは存在しないわ」

「ですよねぇ。定晴さん、あてがあったりしますか?」

 

俺も妖怪の山に詳しいわけじゃないからなぁ。確かに、妖怪の山はコミュニティがしっかり形成されていて、情報伝達が早いイメージがある。首謀者に気づかれないように聞き込みをするのも難しそうだが……

 

「あら、こんなところで三人とも何してるの?」

「あ、雛さん!」

 

俺たちが考えていると、茂みの奥から厄をまとった雛が出てきた。俺たちに気が付くと、その場で静止し距離をとったまま会話が続く。

 

「そうだ、雛さんは関係ない可能性が高いですよ。売人とかできないじゃないですか」

「まあ確かに」

 

雛は厄神という種族の性質上、近づくと周囲の人々に厄が移ってしまう。悪意のあるものならばそれも嬉々とするのかもしれないが、雛はそれをよしとしないのでこうして他の人とはある程度の距離をとって会話をする。

こうして俺と早苗が話していても、雛には聞こえないくらいの距離は空いている。会う度に、なんとも難儀な種族で頑張ってるなと思うのだ。

 

「雛、ちょっといいか」

「え、ええ。どうしたの?」

 

聞き込みをするには話しづらい距離なので、代表して俺が近づいて雛と会話をする。俺は浄化の力のおかげで、雛に近づいても俺に厄が移ることはなく、むしろ厄を浄化するのだ。

 

「アビリティカードってのが流通してるのは知ってるか?」

「そうねぇ、なんだか怪しいカードが多いって椛から注意されたわ」

「実はそれで調査をしているんだが……」

 

俺は雛にかいつまんで事情を説明した。雛は予想通りアビリティカードの売人と出会ったことはなく、基本的に他人と距離をとっているので異変に関わっているということもなさそうだ。

 

「何か知ってることはあるか?」

「私が誰とも密接なやり取りをしないと思ったから話しかけたのよね。むしろ、事情を全然知らないから役に立てないわよ?」

 

どれだけ雛と秘密の会話をしようと思っても、俺のように普通に近づける能力でもなければ、ある程度大声で話さないといけない。流石に隠し事のようなことを雛と企てようとする人もそういないだろう。

だが、必ずしも何も知らないかと言われればそうではない。雛は厄を集めるために色々なところ歩き、そして厄を流すために川に行く。他の人と会話することは少なくとも、雛は結構移動するタイプの妖怪なのだ。

 

「まあ、あなたに頼りにされるのは嬉しいけど……んー、そういえば最近崖の方が騒がしいような」

「崖?」

「そう。あまり近づかないように言われてる崖なんだけど、そっちでよく人を見るのよ」

 

あまり近づかないように言われている崖なのに近づいている雛が言えたあれでもないとは思うが、ひとまず有益な情報だ。俺はどこなのか知らないけれど、早苗なら何かしら知ってるだろう。

 

「ありがとう。ちょっと見てみる」

「お役に立てたなら幸いよ」

 

早速早苗と咲夜に情報を伝達。やはり早苗はどこのことを指しているのかなんとなく理解できたようだった。

 

「あっちは確かに私も見てないですね」

「なんで近づいちゃいけないんだ?」

「理由は知らないんですけど、諏訪子様や神奈子様も止めてくるので私としてもどうにできず……ですが、異変調査のためならやむなし!きっとお二人も許してくれるでしょう!」

 

制限の中で調査なんてしてられるかー!と意気込む早苗。どうやらそちらの風祝さんはあなたたち神々の言いつけを守るつもりはないみたいですよ。

咲夜の方を見ると、咲夜はそもそも崖の存在を知らないらしい。まあ、妖怪の山に住んでいないし、咲夜が妖怪の山に来る理由もないだろうから仕方ないだろう。

 

「雛さん!ありがとうございましたー!」

「失礼いたします」

「雛、またな」

 

小さく手を振る雛に別れを告げて崖の方に向かう。飛び立ってすぐ、背後から小さな叫び声をかけられた。

 

「定晴さん、また私と話してね!」

 

俺は手を振り返して空を飛ぶ。確かに最近妖怪の山に来る機会が減ってたし、もうちょっと来るべきかね。早苗もよく神社に来てと言っているわけだし。

と、横から視線を感じて見ると、早苗がジト目でこちらを見ていた。

 

「定晴さん、雛さんからもモテてるんですか」

「いや、雛とあの距離で会話できる人物が少ないから、妖怪の山に行くと高確率で雛と話してるだけだ」

「どーだか」

 

早苗にいらぬ疑いをかけられながら崖を目指す。なんだか咲夜の方からも視線を感じてしまい、どうにもいたたまれない気分になるのであった。

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