「これが事の顛末だ」
俺は三十分程かけて月においての物語を話した。永琳は手を当てて考えていて、鈴仙はポカンとしている。
「それって…本当?」
「嘘を言ってどうする?」
「それも…そうよね」
永琳はまたも考え始めた。永琳としては俺が月に行ったことある事が相当衝撃だったのだろう。地球人が月へと行くには相当苦労する。なんせ普通にロケットで行ったところで月の裏側はバリアがあるので見ることすらできないからな。
「あのー…」
「ん?」
ここでやっと正気に戻った鈴仙が口を開いた。頭の中で色々と処理を終えたらしく落ち着きを取り戻している。
「その事って誰にも言わなかったんですよね?」
「ああ勿論。あいつらが記憶を消そうとした位だからな。それ相応の秘密があったんだろうな。それにそもそも信じてもらえるはずもないだろ?外の世界では科学的証明こそ全てみたいな風潮があるんだ。月の裏側の、未だに観測されていない世界があるだなんて戯言としか思われない」
俺がそう言うと部屋には静寂が訪れる。永琳も鈴仙も何かしら考えているらしく口を開こうとしない。かといって話題を振ったのは俺なのでこちらから新しいことを言うのも憚れる。居心地の悪い無音が部屋を満たしていた。
一分程に感じられた静寂を破ったのはまさかのスキマの音だった。そしてそこから紫が現れる。どうやら俺の話をスキマ越しに聞いていたらしい。理由は分からないが少々不機嫌そうである。俺の話に何か不満な点があったのだろうか。
「ねぇ?定晴、今までそんな話聞かなかったんだけど」
「だから、秘密があったかもしれないから月人とか関係者にしか話さなかったんだよ。」
「あら、私は一回月に大規模攻撃したことありますけど?」
紫がねっとりした声で喋る。若干の嫌味も込められていてとても不愉快な気分になる。つか紫のその話こそ初めて聞いたんだが。なんだよ月に大規模攻撃って。幻想郷って外の世界に基本的に不干渉じゃなかったのか?
「お前、何でそんなに不機嫌なんだよ」
「そりゃぁ、だって…秘密にされてた事があるのが嫌なんだもん…」
「は?」
「とにかく!私が嫌いな月人の事をこれ以上話すのは止めて頂戴!依姫たちはともかく普通の月人ったら私達のことを見下してるのよ!?」
何を言ったのかは聞き取れなかったが、紫は月があまり好きじゃないらしく月人達と交友を持った俺に対し少し怒っているようだ。ふーむ、これに関しては理不尽と言うよりほかない。
「それなら紫は永琳達も嫌いなのか?」
「そういう訳じゃないわ。私はただ、妖怪の事を下に見てる上にその事を嘲笑ったりする人が嫌なの!だから幻想郷が好きで、妖怪の事も理解してくれている月人は嫌いじゃないわ」
だから依姫たちは良いのか。紫は結構妖怪であることを誇りにしているらしいし、幻想郷を愛しているので馬鹿にされるのが堪らなく嫌なのだろう。
「そうか…なら良いんだ」
「取り敢えずそういう月人関係で何かあったら私にも言いなさいよ!」
そう言って紫はスキマに飛び込んで行った。言いたいことだけ言って去って行ったな。いやはやまったく、まるで嵐のような奴だ。
そしたら俺達の会話を傍観していた永琳が突如俺に話しかけてきた。
「今日の所は帰ってもらっていいかしら?私達も色々用事があるし、さっきの話も整理しないといけないもの」
俺も突然斬りかかったし仕方ない。
「ああ、分かったよ。じゃあまたな」
俺は鈴仙に連れられ部屋を追い出された。
出会い頭そうそう少し険悪ムードになってしまったが大丈夫だろうか。そんな不安を抱えながら俺は永遠亭の出口に着いた。
「えっとー、今日はこんな雰囲気ですが師匠…あ、永琳さんの事です…師匠も突然の事で少し気が動転してるだけなので、また来てください。次来てくれたときはちゃんと出迎えることもできますので」
「ああ、俺の方こそ悪かったな。またいつか来るよ」
こうして俺は永遠亭を後に…
「帰り道分かりますか?」
「…」
「妹紅さん呼びましょうか?」
「すまない頼む」
俺は妹紅と共に永遠亭を後にした。