東方十能力   作:nite

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四百二十七話 虹龍洞、その名を知るのはまだ先で

なぜか早苗ではなく咲夜が顔を真っ赤にしていたが、早苗に促されるままに洞窟に入った。咲夜のことは気にしなくていいらしい。

 

「これも地底に繋がるんだろうか」

「どうでしょう。地底への入り口はそんな何個もないはずですけど」

 

そうして洞窟に入ると、そこそこ広く、誰かが通るために坑道のようになっていた。ライトの類は少ないものの、真っ暗というわけでもなく、歩くのにも支障がない。

地面にはレールが敷かれており、トロッコを動かすということが丸わかり。つまり、この洞窟は本当に坑道として使われているということだ。

 

「山童のことはあまりよく知らないんだけど、河童の仲間だよな。この洞窟、河童たちの採掘場だったりしないか?」

「可能性は高そうですね……でも、それなら入口とかに注意書きが書かれていないのは不思議です。彼女たちは縄張りに無断で入られることを嫌がりますから」

 

妖怪の山には河童の集落が存在しているが、そこの境目には河童製のロープが張られ、入るなとご丁寧に一定間隔で看板が立っているのだ。それは、偏に住処に入るなというだけでなく、機械が多いので入ったら五体満足で出られる保証はないぞという警告でもある。

俺が行くときはにとりか、もしくは近くにいる河童に必ず声を掛けるので、今のところ謎の機械に殺されかけるという経験はしていない。

 

「定晴さんが光の魔術を使えてよかったです。何もなしだと暗そうですもん」

「明るくしたとて何も見えないけどな。レールしかないぞ」

 

レールを使って鉱石を掘る妖怪……やはり河童しかイメージできないけれど。

誰とも会わないし道具もないので、現在この坑道は使われていないように思える。その割にはきれいな見た目ではあるものの、坑道の劣化具合など見て分かるようなものでもない。

 

「妖怪の山って何が採れるんでしょうね」

「河童たちが大抵使ってるだろ。これとか」

 

そう言って俺が取り出したのは、河童製の水鉄砲。本物の銃と同じような質感に、ずしりと手にかかる重量。威力は弾幕ごっこ出禁となるほど。

ただこの重量、機械が積まれてるとかそういうわけではなくて、単純に物自体が重いようなのだ。手触りからして鉄とかそういう見慣れた金属というわけではないみたいだけど、何かしらの金属を加工して作られたものだということが分かる。

 

「定晴さん、それなんです?」

「河童謹製の水鉄砲。使うと人は死ぬ」

「えぇ……?」

 

少なくとも弱い妖精は一発でピチュるので、人里の人間に使えば骨折とかするんじゃなかろうか。まじでこの水鉄砲どうにかしろ。

 

「でもまあ、幻想ビニルとか作ってるみたいだし、素材も色々組み合わせてるかもしれないが」

「魔法的素材がいっぱいありますからねー。魔法の森の木材とか特殊らしいですし」

 

そう思えば、妖怪の山の地層というだけで、それなりの効果を発揮する素材になるかもしれない、と考えていると、奥から足音が微かに聞こえた。

 

「誰かいる」

「!!」

 

即座に静かにする俺たち。足音は少しずつこちらに近づいているようだ。

道中分岐はなく、隠れられる場所もない。とはいえ情報を手に入れたいがために入っているので、逃げるという選択肢をとれるわけでもない。

俺たちは静かに、足音の主がここまでくるのを待った。一応何かあってもいいように、咲夜と早苗の目の前に結界を展開しておく。

 

「おやおや、どうしたのですか。そんなに身構えて」

 

暗闇の奥から出てきたのは、洞窟という空間には似合わないほどにカラフルな恰好をしている女性。カラフルな勾玉のようなものを肩から腰にかけてつけており、その色合いはフランのものにも近い。

 

「ああそうそう、ここから先は行かないことをオススメします。無酸素ですから」

「無酸素?そんなに奥深くまで続いているのか?」

「ええ、堀内定晴くん」

 

俺の名前を呼ばれ、手の中に輝剣を出現させ警戒度を上げる。

しかし、少女は緩く両手を挙げながら首を振る。

 

「敵ではありません。私の名前は玉造魅須丸、あなたたちと同じく異変調査をしているんです」

「なぜ俺の名前を……」

「むしろ、今の幻想郷であなたの名前を聞いたことがない人の方が少ないでしょう。あなたは今や、博麗霊夢や霧雨魔理沙と同様に有名な人間なんですよ」

 

手を背中側で組み、こんこんと説くように説明する魅須丸。まるで通せんぼするように立つその姿は、俺たちをこの奥へと行かせないようにしているようだ。

 

「無酸素であんたは大丈夫なのか?」

「曲がりなりにも神様なので大丈夫です。人間であるあなたたちには辛いものがあるかと」

 

よくその気力を見てみれば、確かにその身に宿るのは神奈子やミキと同じ類の力。妖怪少女ではなく、神様であったらしい。幻想郷、意外に結構色んなところに神様がいる。

まあ無酸素なら危ないし戻るか……と思っていたら、それで歯止めが効かない二人がいた。

 

「ですがその先に何かある可能性もありますよね?」

「道を塞ぐなら排除しますよ?」

 

いつの間にやら立ち直っていた咲夜ですら、その瞳に殺意を携えて魅須丸を見る。

魅須丸は俺の方をちらりと見て、俺と同じタイミングでため息をついた。

 

「二人とも、何かあったとしても探索は無理だ。引き返すぞ」

「この人が嘘をついている可能性をどうして否定できましょうか!」

「定晴様、こういう異変解決では嘘つきは殺戮の始まりですわ」

「物騒だぞお前ら!」

 

いや確かに嘘をついている可能性はあるのだが……魅須丸の、なんというか呆れたような顔を見れば、嘘をついているようには思えない。

しかし、同時に仕方ないですねというような口元なのが怪しい。もしや……

 

「危険なことはしないことをオススメします。ここは、洞窟ですから」

 

そう言いながら気力を高める魅須丸。それに呼応するかのように、早苗と咲夜も霊力を高めていく。

今にも弾幕ごっこが始まりそうな雰囲気だ。どうして誰もかれも戦いをしないと落ち着かないのだろうか。勝負を一度もしない異変解決だって存在していいはずなのに。

 

「ではスペルカードは四枚で……」

「いざ!」

「尋常に!」

 

ただまあ。

ここは洞窟で危ないという理論はとても頷けるものであり、それに三人で弾幕ごっこをしてもそこまで動き回れる広さでもないのは事実。巻き込まれないように俺だけ退避しようにも、道は一本しかないので隠れる場所も傍観できる場所もない。

ということで、

 

「帰るぞっ!」

 

三人の間に結界を展開して、強引に勝負を中断させる。これには流石の早苗と咲夜も不満そうな表情を……

 

「……まあ、定晴さんがダメっていうなら、しませんけど」

「……ご命令とあれば」

「あ、そう?」

 

意外にもすんなり落ち着いてくれた二人。さっきまでのが冗談だったかのように静まっていく霊力は、さながら俺の拍子抜け感を演出している。

二人が落ち着いたのを見て、同じく神力を収めていく魅須丸。ごほんとため息を一つ、

 

「あなたたちが目指すべきはもっと上です。山の頂上、そこに目当てのものがありますよ」

「洞窟に関してはあとでにとりにでも聞けばわかるだろ。行くぞー」

「はーい」

「かしこまりました」

 

緩く手を振る魅須丸を背後に、俺たちは洞窟を後にする。

それにしても、異変の首謀者のことを知っていたというのに、なぜ魅須丸はこの洞窟にいたのだろう。

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