東方十能力   作:nite

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ちょうど投稿日の今日、作者の誕生日です。まあ、何もないですけど


四百二十九話 山の頂上

一応約束だったので、妖怪の山の麓にて早苗、咲夜と集合した。昨日魔理沙が異変解決をしたなら新聞に載りそうなものだが、今のところそういう話はどこからも聞かない。

 

「集まりましたね。続きにしましょう!」

「魔理沙は結局異変解決できなかったのか?」

「本人に聞くのが早いでしょう」

 

そう言うと、咲夜の姿が消える。いつものことかと早苗と数十秒雑談していたら、咲夜が戻ってきた。

 

「魔理沙は家でアビリティカードを眺めていました。曰く、頂上には何もいなかったと」

「ここから魔理沙の家まで往復したのか?」

「私にかかればすぐですよ、定晴様」

 

咲夜の能力は時を止めること。とはいえ、あくまで咲夜にとっては普通の時間が流れているので、魔法の森まで往復するには咲夜視点ではいつもの時間がかかっているはずなのだ。それをまるで瞬間移動したかのように振舞う姿は……確かに瀟洒なメイドに相応しいと言える。

 

「うーん?やっぱり、洞窟の神様が嘘をついてたんでしょうか」

「そんな感じはしなかったけどな」

 

外の世界で仕事をするときに、俺のような不明な仕事をしている人物に対しては特に嘘が多い。最初の頃こそ騙されることがあったものの、最終的には大抵の嘘には気が付けるようになっていた。気づけなかった嘘をついた人物は……まあ、浄化されたと言っていいだろう。

昨日出会った魅須丸は、戦おうとしていた早苗たちを止めるときも、頂上に向かえと助言をしたときも、嘘をついているようには見えなかった。特に、洞窟の奥が危ないことに関しては本心のようだったし、あの奥に何かあるとも思えない。

 

「そういえば霊夢の調査はどうなったんだろうな」

「聞いてきました」

 

いつの間にか左側にいた咲夜が右側に移動しており、時を止めて移動したことが分かる。つまり……

 

「咲夜、自分からやることを止めるつもりはないけど、あまり無理はしないでいいぞ?」

「無理はしていません。メイドですから」

 

俺がふと思った疑問を言い切る前に、咲夜は時を止めて博麗神社まで行き、聞き込みをしたのである。時止め状態に他の人を連れ込むことができるとは聞いたことがないので、俺が一言を言う一瞬のうちに聞いたということだろう。

「そうい」で移動し、「ろうな」で帰ってこなければ不可能な早業。普通のメイドはそこまで出来ないと思うが。

 

「あちらは進捗がないようです。妖怪の山が怪しいという情報は掴んだようですが、尻尾は掴めなかったようで」

「よくあの一瞬でそこまで聞けたな」

「メイドですから」

 

なんか咲夜のメイド観がおかしいような気がする。随分と咲夜は張り切っているようだけど、そこまで無理をさせるつもりはないので、やんわりと抑えつつ、情報を整理した。

 

「じゃあ妖怪の山は白か?」

「分かりません。ですが、妖怪の山に売人が多いのは間違ってないと思います。実は昨日も、帰った後に売人が来て神奈子様にカードを売っていったんですよ」

「神奈子は買ったのか?」

「いえ、むしろ守矢神社の力が込められたありがたーいお守りを売りつけて帰しました。アビリティカードの売人にうちのお守りも売ってもらえればうちの信仰も鰻登りですね!」

 

やはり守矢、強かである。

とはいえ、神社相手にも堂々とやってきてアビリティカードを売ろうとするその精神は随分なものだ。そういうところまで売人が来るときというのは、大抵買い手が不足してきたことを意味する。

 

「妖怪の山には売人が飽和してるみたいだな」

「ですです。最近だと幽香さんのところにも売人が来たとか」

 

幻想郷では何かと遠巻きに見られることの多い幽香のところにすら売人がやってきているのか。市場が拡大していると見ることもできるが、それだとしてもわざわざ幽香のところに行くようには思えない。幽香と関わりがある妖怪が売人をしているなら分からなくもないが……

 

「じゃあもっと遠いところを探した方がいいか?」

「うーん、ひとまず私たちも頂上を目指しませんか?魔理沙さんの目が節穴の可能性もありますし……あの二人よりも私の方が山には詳しいですから!」

 

ふふんと胸を張り宣言する早苗。天狗のエリアだからあまり地理を知らないと言っていたのは誰だったか……言わぬが花だろう。

ひとまず山の頂上を目指す俺たち。それにしても、結局山を登るなら守矢神社集合でもよかったのでは?という疑問を早苗に聞いてみると、

 

「お二人にばかり移動させて私が動かないなんて、私が意地悪みたいじゃないですか」

「そんなことはないが……」

「それに……待ち合わせは大事なイベントじゃないですか」

 

もじもじと呟く早苗。反応に困る。

今日は守矢神社側の麓から山を登っているので、守矢神社の上空を通過するようにして妖怪の山の頂上を目指す。道中川で釣りをしている諏訪子が見えて、寒そうにしていたので早苗が暖かくなるお札を渡していた。寒くても釣りをするなんて、諏訪子が釣りが好きなのだろうか。

 

「ここからが天狗エリアです。この、ちょっと木の色が違うのが目印です」

「哨戒天狗が飛び回ってるがいいのか?」

「蹴散らしましょう」

 

あくまで好戦的な早苗。咲夜もナイフを構えて攻撃態勢。仕方ないから俺も狂気に若干だけ同調して、罪悪感なく天狗を落とせるように。

天狗エリアを飛んでいくと、案の定天狗たちが襲い掛かってくるが、三人がかりで叩き落していく。妖怪の山に不法侵入して天狗たちに追い回されたのも随分と懐かしい記憶だ。

 

「こんなに私たちに襲ってくるなんて、天狗さんたちは暇なんでしょうか」

「これが仕事だぞ」

 

変な疑問を抱く早苗を横目に、俺たちはさらに登り、頂上まであと少しというところまで来た。

襲ってくる天狗の数はさらに増え、落とした天狗の数はそろそろ三桁に至ろうというところだ。これだけ天狗たちを落としてしまうと、妖怪の山の管理体制に影響が出てしまうような気がするけれど……まあ、天狗たちは優秀だからちゃんと仕事の配分はしていると思おう。

 

「そろそろ頂上ですね」

「本当に何もないな」

 

何事もなく山頂に辿り着いてしまった。いつもの異変ならこういうところに真犯人が待ち構えるように立っていて、よく来たな的な感じのことを言うのだが。

山頂は少し平たい空間になっていて、宴会などにも使えそうな広さがある。しかし、そこには誰もおらず、見張りとかもいない。もしかしたら見張りは俺たちが落としたかもしれないが。

 

「山の頂上……のさらに上っていう可能性は?」

「この上ですか?ここから更に昇れば有頂天、つまり天界に辿り着きます。天子さんとかがいますね」

「ああ、あの」

 

不動の異変の時に数少ない仲間として手伝ってもらった天子と衣玖。彼女たちは日頃は空の上で過ごしているらしく、それぞれ天人と神の遣いとして色々やっているらしい。

 

「あの天人が犯人ということはないと思いますわ」

「咲夜?」

「天界は空気がとても澄んでいる影響で、妖怪たちにとっては非常に過ごしづらい環境になっています。売人として仕入れる必要がある以上、そういうところでアビリティカードが生産されているとはとても思えません」

 

天界には浄化の力を持つ色々なものがあり、そのせいで常に俺の浄化のフィールドが展開されているような場所になっているらしい。俺との親和性は高そうだが、確かに妖怪たちが売人として活動するには苦しいだろう。

とはいえ、妖怪の山の頂上に何もないのもまた事実だ。やはり嘘をつかれていたんだろうか……?

 

「犯人が隠れている可能性もあるか」

「だったら、見つけましょう!」

 

そう言うと、早苗は山を降りて行った。襲ってくる天狗たちをなぎ倒しながら。




襲ってくる哨戒天狗は、通常なら早苗や咲夜でも苦戦するような天狗たちです。二人とも気分が有頂天なのでなぎ倒せます(定晴効果)
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