東方十能力   作:nite

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予約できてなかったごめん!


四百三十話 山童襲撃

「それで私のところに来たんですか?同族を薙ぎ払って?」

「あはは……」

 

呆れたような目で見てくるのは、哨戒天狗の一人でふさふさの尻尾を持つ白狼天狗の椛。山の麓に近い滝の裏、休憩していた椛を見つけたのは早苗であった。

妖怪の山で人を探すなら椛!という思考でここまで来たらしいが、そんな早苗は椛の天狗の一人であるということを失念していたらしい。

 

「今日は休みですけど、それでいたって頂上付近で騒ぎがあればここから見ますよ」

「えへっ」

「無理ですって」

 

椛はその千里眼の能力により、遠いところの情報も動かずに収集することができる。滝の裏にいながらも、俺たちが山の頂上で天狗たちを薙ぎ払ってきたのは知っているらしい。

 

「あれ、一部怒った大天狗も混ざってましたよ?早苗さんたち、普通になぎ倒してしましたけど」

「今日の私は最強なのです!勿論、咲夜さんもね」

「いえ、私は……」

「お二人のテンションがいつもより高いのは見てわかりますけど」

 

呆れるような椛の目に、咲夜は恥ずかしそうに、早苗は誇らしそうにする。

冷えた滝の水を一口飲み、ため息を一度ついたあと、椛は口を開いた。

 

「要件はなんですか?」

「い、いいんですか?」

「今日は休みなのでいいのです。それに、テンションの上がった早苗さんたちを止めるのは私には力不足ですから」

 

また一度ため息をついた椛は、なんとも言えない表情をしていた。わざわざ天狗社会をはちゃめちゃにしたうえで頼る先が天狗なのだから、ため息もつきたくなるだろう。俺も天狗社会を崩壊させた一助をしているので何も言えないけれど。

 

「実は異変を……というか、今アビリティカードというのが流通しているのは知っていますか?」

「ああ、あの。私は買ったことありませんが、どうやら専用の通貨と専用の取引方法があるようですね」

「そうで……専用の通貨?」

「はい。その通貨を使わなければ購入しても効果が発動せず、ただの紙切れに過ぎないと聞きましたけど」

 

俺たちは急いで、昨日たかねから購入したアビリティカードを取り出した。そこには特殊な力が込められているのが分かるけれど、しかし振っても何をしても力のようなものが出ない。

 

「じゃあなんだ、俺たち詐欺られたのか」

「許せません!」

「……」

 

昨日たかねと取引するとき、たかねは何も言わずに何食わぬ顔でアビリティカードを普通の金額で取引した。その時たかねは値段を数字だけ言ってきたんだが……俺たちが普通のお金を出しても、平然と取引をしたというわけだ。

 

「よし、詐欺をしたあの山童を懲らしめましょう」

「後悔させてあげましょう」

 

殺意に溢れた表情をする二人を後目に、椛にそもそもの目的を尋ねた。

 

「アビリティカードの供給元が妖怪の山っぽいんだ。なんか知らないか?」

「供給元?そうですねぇ……いえ、私は知らないです。そういうことならむしろ文さんtかの飛び回ってる天狗の方が知っているのでは?」

「文は知らなかったんだよ。昨日会ったけどな」

 

椛は基本的には下っ端なので、山の頂上付近を勝手に盗み見るようなことはできないらしい。こっそり見てもバレないとは思うのだけど、仲間にそういう能力を持っていると知っている上司たちは対策もしているのかもしれない。

なんにせよ、今すぐにでもたかねの所までカチコミしそうな二人を落ち着かせないといけない。ちゃんと冷静になってから、

 

詐欺をした罪を償ってもらおう。

 

「山童の種族ってどこに住んでるんだ?」

「麓近くの川と隣接する森です。切り立った崖側で、河童の集落の川の下流ですね。河童と交易するようの用水路的扱いみたいです」

「了解」

 

昨日たかねと出会ったあそこが、椛の言う切り立った崖だろう。川は何本か分からないけれど、河童の集落から辿っていけば自ずと辿り着くはずだ。

 

「よし、行くぞ」

「はい!」

「許しません」

 

乾いた笑いを零す椛に見送られながら、言われた通りに河童の集落から下山する形で下流まで移動すると、昨日たかねと遭遇した崖までやってきた。周囲を見渡してみるが、たかねの姿も山童の姿もない。

確か昨日たかねは俺たちとやり取りしたあと森の方に降りて行ったはずだ。

 

「あの森が怪しいな」

 

妖怪の山は頂上近くになると坂が急になり崖も増える、いわゆる切り立った地形が多くなるのだが、麓の方であれば緩く穏やかな地形も多い。眼下に広がっている森もそのような緩やかな坂に形成されているものであり、その広さはそれなりにある。

集落ともなれば流石に上からでも見えるようになっているとは思うが……

 

「定晴さん、焼き払いますか?」

「なんでそんな嬉々としているんだよ……」

 

目を輝かせているようにも見える早苗を宥めていると、森の中をじっと見つめていた咲夜が静かにナイフを取り出して、森の一点を指した。

そこはここからでは何もないように見える森の一区画。

 

「あそこに、何かいますわ」

「何も見えないが」

「あら、定晴様でも幻覚に惑わされることがあるんですのね」

「一応な。咲夜には見えているのか?」

「いえ、ですがあそこらへんに、こう、生命の気配が」

 

そう言われてもやはり何も感じない。もしかしたら、俺よりも咲夜の方が生命の気配を探知する能力が高いのかもしれない。日頃から吸血鬼の元で働いているのもあって、微小な生命の気配でも察知することができるのかな。

 

「まあ近づいてみればわかるさ」

 

咲夜のナイフの示す先にゆっくりと近づくと、ある程度まで近づくと体全体を包み込むような謎の感覚が襲い、なんだろうと疑問に持つよりも先に、原因が分かる。

謎の感覚を抜けた瞬間、先ほどまでただの森だったはずの場所が集落へと変化したのだ。

 

「どうやら見えなかったのは河童の……いや、こっち原産か?まあともかく、いつもの技術力によるものらしい」

「そういえばにとりさん、光学迷彩とか使ってましたね」

「あいつそんなこともできるのかよ……まあ、そういうことだ」

 

つまり、幻覚などではなく、科学技術により偽装されていたからこそ、俺の浄化が反応せず惑わされたということだ。先日の異変のせいで、俺の浄化も完璧なものではないということが分かり不安だったのだが、今回のは俺のせいではないと分かり一安心である。

 

「さて、じゃあ脅してあの山童の位置を聞き出しましょうか」

「ちょ」

 

俺が制止する間もなく、咲夜は近くの知らない山童のところに瞬間移動し、ナイフを首元に突き付けた。

 

「たかねという人物に心当たりは?」

「ひっ、ひえええ!」

 

ナイフに怯えて山童の少女が声をあげると、周囲にいたほかの妖怪たちも咲夜の方に視線を向ける。そして、ナイフにより脅されていると分かると、その途端妖力を高めて殺気が膨れ上がる。

そりゃ突然現れてナイフを突きつけたら敵認定されるだろ……咲夜ってたまに天然なところがあるんだよな。

 

「あら、でしたら口を割るまで相手を致しますわ」

「私も参戦しますよー!」

 

早苗が咲夜の方へ御幣を振りながら突撃していく。そして流れるように二人対多数の弾幕ごっこが勃発。俺はそれを傍から見ていることしかできない。

 

「やっぱりあの二人、思ったよりも好戦的なところあるよな」

 

ひとまず、周囲に被害が出ないように広域結界を展開しつつ、戦いが終わるのを待つことにした。

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