弾幕ごっこの結果は言わずもがな。ハイタッチしている二人の周囲には、死屍累々と言った惨状が広がっていた。たかねの場所を聞くはずだったのだけど、いつの間にやら全員が気絶してしまっていて話を聞ける雰囲気ではない。
山童のところに商品を持ってきたらしいにとりと、呆れながらその様子を眺めていた。
「やっぱり紅魔館のメイドも守矢神社の巫女も怖いねぇ」
「いつもよりテンションが高いんだ。二人ともな」
「うちの商売担当なんだけどなぁ」
どうやら、一般的には河童の製品を山童に売ってもらおうという経済の流れが存在しているらしい。山童がやるのは、いわゆる小売り業の部分である。
じゃあたまに河童が直接売ってくるのはなんだと思えば、そっちは山童的に売れないと判断された商品らしい。売れるものならまだしも、そうでないならわざわざ労力を割かないというのが山童の主張らしい。そりゃそうだ。
「定晴さん、見れくれました!?私の雄姿!」
「エレガントに終わらせましたわ」
「うん、やりすぎ」
ニコニコしながら戦果報告をしてきた二人にそう言うと、二人とも崩れ落ちてしまう。そしてヨヨヨ……と、それ噓泣きすぎるだろ。
早苗だけでなく咲夜も早苗のノリに合わせてふざけているので、やはり二人ともやたらとテンションが高いのだと分かる。特に、咲夜はいつもはこういうときストッパーというか、常識人的な立ち位置にいつもはいるはずなのに、昨日も今日も幻想郷少女たちと同じ雰囲気だ。
「ちょっと、困るよー。この子たちがいないと、河童は製作費が稼げないんだから」
「あ、にとりさん。こんにちはー」
「なんで挨拶はできるのに相手をぼこぼこにしちゃうかなぁ」
霊夢と言い早苗と言い……とぶつぶつ呟いているにとりだったが、諦めたようにため息をついて指を指した。
「君たちが途中で呟いてた、たかねの家はあっちだよ。それと、これ以上ここの里を破壊されると困るからやめてね……」
「山童の皆さんがすぐに情報を吐いてくれたらよかっただけですよ」
あくまでも自らは悪くないと主張する早苗。そんな早苗に対してさらに深いため息をつくにとり。今や妖怪の山の代表としての格すらもある守矢神社の風祝がこんなのでは、流石にため息も出るだろう。
流石に俺も思うところはあるし。止めるのは面倒だったから適当にしたけど。
倒れている山童たちの介抱に行ったにとりと別れ、俺たちは教えてもらった方向に行った。そっちは山童たちの住宅地のようになっており、そんな場所だというのに誰も歩いていない。早苗たちは不思議そうにしているが、俺は知っている。早苗たちの戦いを見ていた山童の中でも、勝てないと思った人々が逃げていったのを。
「あ、ありましたよ!」
何件かの表札を見ながら歩いていたら、目的の表札を見つけた。
早苗が跳ねるような足取りでドアをノックする。
「たかねさ~ん?お話したいことがあります~」
表情は柔らかい笑みだが、そこには隠しきれない怒気が含まれていた。誰がどう見ても怒っている声色に、たかねは出てくるのだろうか……
「何ですかー」
出てきた。普通に。
寝起きなのか、随分と眠そうな表情だったたかねだったが、早苗のその表情を見た瞬間雰囲気が変わった。
「守矢の巫女!!!」
「わたくしたちもいますわ」
「まあ文句があるのは俺もそうだしな」
俺以上に怒った様子の二人がいたから非常に冷静にいられただけで、俺も文句の一つくらいは言いたい。だからこそ俺はさっきの乱闘を見て見ぬふりをしたわけだしな。
たかねは動揺したままに扉を急いで閉め、大声で捲し立てた。
「現在たかねという山童は住んでいません!べちゅの家をお探しください!」
甘噛みしながらも大声の訴えは、しかし、早苗たちに許されるわけもなく。
「どっこいしょー!」
「ひぃいい!」
弾幕によって扉が吹き飛び、中で蹲っていたたかねの頭上を破片が飛んでいく。さながらアクション映画のようだ。軍の突入シーンのようにも見えるそれは、中にいるたかねの悲鳴により事件性が増す。
「勘違いですうううう!!」
立てこもりは無意味、扉からの脱出も叶わない。それ故に、たかねは窓から逃走することを決めたようだ。本来は決められた手順により開かれるであろう窓を体一つでぶち破り外へと飛び出す。一応罪悪感はあったのか、謝罪の言葉は忘れない。
しかし、今回の俺たちから逃げられるとは思わない方がいい。というか、まあ追いかけっことなるとどう頑張っても逃げられないメイドが一人。
「どこへ行くのでしょう、この河童もどきは」
窓から飛び出したはずのたかねは、いつの間にやらナイフにより服のあちこちを地面に縫い付けられ動けなくなっていた。
「さて、事情を聞かせてもらいましょうか」
「う、ううぅ……」
涙目のたかねに問い詰める咲夜。
今日は山童にとって厄日だろうな。
厄神様「あら、こっちから強い厄の気配が……」