東方十能力   作:nite

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四百三十三話 途中報告

咲夜が綺麗に皿洗いを行い、汚れ一つ見つからないくらいまでピカピカになったあと。

俺たちは折角ならとパチュリーのいる大図書館を訪れていた。咲夜は元々パチュリーに頼まれてアビリティカードを集めるようになったと言っていたし、何か進展があったかもしれない。小悪魔の案内で図書館の中心に移動すると、数冊の魔導書を押しつぶした状態で机に伏せているパチュリーを発見した。

 

「小悪魔、何があった?」

「流石のパチュリー様も五徹は堪えたみたいで。ふらりと」

 

いくら魔力により食事や睡眠を廃し、不老長寿としての体を得ようとも、肉体的本能に負けることもあるらしい。きっと今潰している魔導書を読んでいる間に、突然限界が来て倒れるように眠り始めたのだろう。

 

「因みにどれくらい寝てるんだ?」

「今で……大体十時間くらいですかね?」

 

睡魔をどれだけ遠ざけても、体に疲労は溜まっていく。どうせ起きている間はずっと魔導書を読んだりして研究し続けていたのだろうから、脳に蓄積された疲労は相当なものだ。パチュリーにはゆっくり眠ってもらいたい。あとで、どうして起こしてくれなかったのかと怒りそうだけども。

 

「そういうわけで、今はパチュリー様は話せないのです。私が答えられるものならお答えしますけど」

 

持ってきた毛布をパチュリーの上に被せる小悪魔。咲夜が傍観していることから、パチュリーの基本的な世話は小悪魔に一任されているのだと分かる。

そんな小悪魔なら、アビリティカードの研究成果も知っているかもしれない。そう思って聞いてみたのだけど……

 

「アビリティカード?うーん、確かここらへんに……」

 

小悪魔は机の上に重ねられた魔導書やら書類やらを丁寧にどかしていき、まるで穴を掘るようにかき分けていく。そうしていくつかの書類の山が生まれた頃、下の方から一枚の紙を取り出した。

 

「ありました。これですね」

「この一枚だけか?」

「実物もないのにこれだけまとめたのは凄いことですよ」

 

そこには、伝聞の情報だけで研究を行った成果が書かれていた。俺たちが椛に告げられて初めて知った、特別な通貨によってのみ使用可能になることすらも書かれており、俺たちは揃って苦笑いを浮かべる。

とはいえ、俺たちが知る情報以上のことは特に書かれておらず、ただ、妖怪の山から流出してるっぽいことが書かれているのみだった。アビリティカード自体の研究は実物を手に入れてから、と下の注釈のところに書かれていた。

 

「小悪魔、ひとまず手に入れたアビリティカードを渡しておくわね」

「ああ、はい。パチュリー様が起きたら渡しておきます」

 

咲夜が懐から出したのは、たかねのところで騙されて手に入れたアビリティカード。返金はされたものの、特殊な通貨を持っていなかったため、これ自体は未だに効果のないままだ。ただの紙となっている状態ではあるが、使えるようになるのは間違いないので、パチュリーなら何かしら発見してくれるだろう。

 

「うーん、パチュリーさんの見立てだと、妖怪の山がメインってことですよね?」

「そうですね。パチュリー様は、妖怪の山に生産場所があると踏んでいます」

 

早苗も最初にそう言っていたし、やはり妖怪の山がアビリティカードの原産地であるということは間違いのないように思える。となれば、俺たちが未だに犯人を見つけることができていないのは……

 

「やっぱりあの坑道にいた自称神が犯人なんじゃないですか?」

「うーむ」

 

坑道で出会った魅須丸、彼女から感じる力は確かに神様のものだったので、ちゃんと神なのは分かっているのだけど。あの時の魅須丸は嘘をついているようには見えなかったし、頂上を目指すようにと告げたのも意地悪などではなかったように感じた。

だが、怪しい人物と言われると魅須丸しか浮かばない。結局頂上付近では誰にも会わなかったしな。

 

「坑道の奥は無酸素だと言っていたけど」

「そうですね。魔法とかでどうにかならないんでしょうか」

「それこそ、あなたの奇跡の出番じゃないの?無酸素の奇跡とかないわけ?」

「ええ?うーん、諏訪子様、神奈子様、無酸素の加護はありますでしょうか……」

 

俺たちが坑道をどうにかしようとわちゃわちゃしていたら、図書館の入り口が大きな音をともに開かれる。

 

「おにいいいいいさまあああああああ!!」

 

そうしてドタドタと走ってくるような音が聞こえ、本棚の裏にチラチラと光が反射しているのが見える。七色の光は、それだけで反射が見えやすい。

 

「フラン、ここだー」

「お兄様!」

 

ひょこっと本棚から顔を出すフラン。チラリとパチュリーを見るが、未だに突っ伏して眠っており眠りを妨げている様子はない。とはいえ。

 

「フラン、図書館では静かにするものだ」

「あ、そうだったっ」

 

急いで両手で口をパシッと塞ぐフラン。その様子が子供らしく無邪気で、俺たちは揃ってほっこりしてしまう。

 

「フラン、どうしたんだ」

「お兄様がアビリティカードを集めてるって聞いて。持ってきたの!」

 

そうしてフランがスカートのポケットから取り出したのは、こいしの帽子が書かれているアビリティカード。特殊な力をカードから感じるので、多分正規の方法で手に入れたものなのだろう。なるほど、ちゃんと売買をすればきちんと力を感じられるのか。

 

「これはフランが?」

「うん。こいしちゃんのカードだったから買ったんだー」

「特殊なお金が必要って聞いたけど」

「そこらへん飛んでる妖精倒したら落とすよー」

 

アビリティカードは盗んだりなんだりをすると力を失うが、そのやり取りをするための資金自体は誰かから盗んだものでもいいらしい。判定は本当にそれでいいのか。

 

「ありがたいけど、俺は別に集めてないんだよな。多分一番欲しがってるのはパチュリーだ」

「そうなの?じゃああとでパチュリーに渡しておくね!」

 

早苗は異変解決の手段として手に入れているだけ。俺はあくまで付き添い。アビリティカードを集めるために行動を起こしているのは咲夜だけで、その咲夜が集めている理由はパチュリー。

霊夢や魔理沙はアビリティカード集めにそこまで積極的というわけではないみたいだし、基本的にパチュリーに渡すのがいいだろう。もしかしたら、魔理沙も研究しているかもしれないが。

 

「お兄様、これからどこ行くの?」

「妖怪の山だ。再調査だな」

「頑張ってね、お兄様!」

 

そうして俺にぎゅっと一度ハグしたあと、フランはドタバタと図書館を出て行った。どうやら本当にアビリティカードを渡すためだけに来たらしい。

フランのことだから遊んでとせがんでくるかと思ったけれど、そんなことはなかった。もしかしたら、こいしを部屋においてアビリティカードを渡してきたのかもしれない。

 

「フランちゃん、素直でかわいいですよねぇ」

「妹様はいい子なんです。最近は特に」

「狂気に呑まれる様子もないし、安心してみてられる」

 

そうして俺たちはほっこりしつつ、紅魔館をあとにした。ここまで来たならと咲夜も同行するようだ。

ひとまず昨日途中で引き返した、あの洞窟へ行くことにした。

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