東方十能力   作:nite

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一応言い訳だけしておくと、これは不定期投稿なので一週間くらい投稿されなくてもいいわけでして
はい、先週書き終わりませんでしたすみません


四百三十四話 龍を喰らうもの

例の洞窟のやってくると、洞窟の入り口には柵のようなものが作られていた。さらに、立て看板には「危険につき立ち入り禁止」と書かれていた。どうやら、俺たちが出て行ったあとに作られたもののようで、随分と小綺麗な見た目をしている。

 

「駒草という人が建てたのでしょうか」

「多分な」

 

昨日俺たちがこの洞窟から出てきたとき、出入り口の近くでタバコを吸っていた妖怪が駒草山如だ。どうやらこの洞窟の見張り的な役割をしていたみたいだし、勝手に入らないように看板を作ったのかもしれない。

今日も出入り口には誰もおらず、看板だけが存在している。普通に考えて妖怪の山で危険だと言われた場所には、ちゃんと危険な理由があるので躊躇すべきなのだが……

 

「では入りましょう」

「この先に何かあるはずです」

 

二人は堂々と中に入っていった。恐れるものなど何もないかのように中に入るのは、頼もしいというか、危なっかしいというか……

仕方ないので俺も後に続く。看板は躊躇される原因とはなれど、幻想郷において足止めには力不足なのである。

 

「いよいよ怪しいです。今日は一番奥まで行っちゃいましょう」

 

早苗が先導し、奥へ奥へと進んでいく。何があるのかを大体把握しているからか、前よりもその足は軽やかだ。

そうして前回止められた場所も通り過ぎ、さらに奥へ。だが、そこで俺は足を止め、早苗と咲夜の腕を掴む。

 

「どうしました?」

「ここは、まずい」

 

浄化の作用はない。あるわけがない。一般的に、それは毒があるのではなく、何もないのだから。

 

「やっぱり、この先は酸素がないようだ。それは正しい」

「え?でも呼吸できますよ」

「酸素濃度が下がった。そして、この先さらに苦しくなる」

 

突然酸素が消失するわけではないので、このまま進んでも苦しくなるだけで突然死するわけではない。少なくとも、俺の並列時空による処理は発生していないので、この先に進んでも死ぬような未来になることはないらしい。

だが、無酸素状態に身を置くということ自体の問題点がないわけではない。少しの間ならば大丈夫だが、時間をおけば高山病のような症状が発生し、最悪の場合脳に影響が出る。

好き好んで進むような場所ではないのは間違いない。

 

「早苗、無酸素でも呼吸できるような奇跡は起こせないのか?」

「無理ですよー。奇跡ってそんな安売りじゃないです。好きに奇跡が起こせるなら、定晴さんに好きなだけかけてます」

 

頬を膨らませてそう言う早苗は、仕方ないとばかりに踵を返す。

 

「早苗って、定晴様の言うことには従うわよね」

「定晴さんを信じてますから。それにまあ、そこは惚れた弱みってことで」

 

俺に向かってウィンクをしたあとに、洞窟の外へと向かう早苗。以前のデート以降、こうして明らかな好意を見せるようになり、適度にアピールをするようになった。アピールの回数で言うと、ルーミアと同じくらいかもしれない。

呆然とする咲夜を連れて外に出ようとしたその時、洞窟の奥から奇妙な音が聞こえた。

 

「待て」

 

ピタリと止まる早苗。洞窟の奥の音が明確になる。

足音と、それに混じるがりがりと何かを地面にこすりつけるような音。金属がぶつかる音が聞こえたかと思うと、奥から人影が現れる。

 

「ああん?誰だ?」

「そっちこそ誰ですか!こんなところにいるなんて怪しいです!」

 

先んじてとばかりに早苗が強い口調で言うが、相手は早苗よりも上手なようだ。

 

「俺は百々世、ここの監督だ。不法侵入者だな?」

「ひえぇ」

 

とてつもない威圧感と強い口調。そして何より、圧倒的な妖力。大妖怪と肩を並べるほどの妖力は、そのまま言霊となって早苗を襲う。ぺたんとその場に座り込んでしまった早苗を庇うように、俺が前に出る。

 

「こんなところで何を掘ってるんだ」

「んなこた関係ないだろ?勝手に入ってくるなんて、覚悟ができてるんだろうな」

「っ!」

 

突如として広がる弾幕。坑道の中ということもお構いなしに、狭い洞窟内で逃げ場もない攻撃が襲い掛かる。

俺は急いで早苗を回収し、来た道を戻る。早苗はまだ動けないようなので、庇ったまま弾幕勝負をするのは流石に分が悪い。

咲夜に援護射撃をしてもらいながら洞窟の外まで逃げ延びると、そこには俺たちを待っているかのように一人。

 

「看板を立てたのに無視したのか。流石に許してはおけないね」

「山如……」

 

ふぅ、と煙を吐き、やはりこちらも臨戦態勢。後ろからは未だにガリガリと金属の擦れるような音がしており、俺たちのことをただで逃がすことはないのだと悟る。

 

「咲夜、逃げ道を!」

「かしこまりました」

 

俺が言うと同時に、山如の全方向にナイフが出現。突然の攻撃に山如の動きが止まったところで、俺は大きく飛び上がる。

咲夜のナイフは弾かれてしまうが、そのころには俺も咲夜も大きく距離を離していた。文でもなければ、この距離を一気に詰めることはできないだろう。

 

「撤退!」

 

そうして俺たちは急いで洞窟から逃亡した。しばらくは背後から弾幕の音が聞こえていたが、それも、守矢神社が近づくと聞こえなくなり、完全に撒いたことを理解した。

狭い洞窟の中で危うくミンチにされるところだった……と、俺が安堵していると、腕を優しくタッチされる。

 

「あの、そろそろ、下ろしてもらえると……うぅ……」

「ああ、悪い」

 

俺は横抱きにしていた早苗を、優しく地面に下ろしてあげる。もう立てるようになったようで、ふらふらとしながらも早苗は立ち上がる。

そこで、本殿の方から軽い声が聞こえてきた。

 

「いいじゃん早苗!距離を詰めれてるようで!」

「す、諏訪子さま!」

 

そこには、賽銭箱の上に座る蛙帽子の小さな神様、諏訪子の姿があった。その手にはみかんがあり、半分ほど減っている。なぜわざわざ外でみかんを食べていたのだろう、という俺の疑問を解消する暇もなく、早苗は諏訪子に駆け寄った。

二人がわちゃわちゃ会話をしている間、俺は咲夜と作戦会議を行う。

 

「攻撃してきたが、あれが犯人だと思うか?」

「可能性は高いと思います。問答無用で攻撃してくるのは、大抵異変の黒幕だと相場が決まってますから」

 

霊夢たちと同じく、今まで何度か異変解決に尽力したことがある咲夜が言う。立ち入り禁止と書かれたエリアに侵入したのは俺たちが悪いものの、だいぶノータイムで攻撃してきたところを見ると、何かしら怪しいことをしているのは間違いないような気がする。

妖怪の山の地下で、大妖怪と同等の力を持つ妖怪が採掘をしていた。その事実だけで捜査対象だ。

 

「だが、アビリティカードと関係あるか」

「売人とはすれ違いませんでしたが……入口にいたあの妖怪が仲介している可能性もありますね」

 

入り口、となると山如のことか。確かに、昨日も今日もいたとなれば、見張りとしての仕事をしっかりやっているというわけで、他にも何か怪しいやり取りをしている可能性は捨てきれない。

今度は戦闘になることを見越して、備えたうえで洞窟に戻るかと、二人で作戦を決めたその時、頭上から神の力を感じて頭をあげる。てっきり神奈子が戻ってきたりしたのかと思ったが、そこに浮いていたのはカラフルな勾玉を身に着けた少女で。

 

「あそこは深入りしないことをオススメしますよ」

 

笑みを浮かべて、俺たちを見下ろしていた。

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