東方十能力   作:nite

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四百三十六話 人里の商人

適当に守矢神社を飛び出した俺たちだったが、残念ながらこれからの指針というのは何も決まっていなかった。

 

「正直、これ以上調べられるところってないんじゃないか?」

「うっ、私が思っていたことを言うのやめてくださいよ」

 

早苗曰く、妖怪の山がアビリティカードの流出元らしい。それは、魅須丸の龍珠の話が真実だと仮定するならば、辻褄は合っていたことになる。

加工方法や加工場所は不明だが、妖怪の山から算出された龍珠がアビリティカードとして流通しているようだ。実際、売人も妖怪の山に多いみたいだし、加工場所も妖怪の山のどこかとみていいだろう。

その加工場所を見つけることができれば芋づる式に黒幕も、流通場所もすべて判明しそうなものだが、今のところそれらしい場所の情報は一切ない。山童のところでは加工はしていなさそうだったし、にとり曰く河童でそういったことを取り扱っている情報はないらしい。

勿論、河童だって一枚岩ではないので他の場所で加工している可能性は大いにあるが……

 

「むぅ……でもまあ、私は正直だいぶ満足してるんですけど。咲夜さんはどうですか?」

「え?私は、必要なことは既に終わってるから」

「そもそも咲夜さん、解決目的じゃないですからねー、だからこそ誘ったわけですけど」

 

じんわりと解散の空気が流れ始める。俺としては二人が満足したのならそれでいいと思うし、ちゃんと異変が終わるというのなら、霊夢や魔理沙が終わらせてくれるだろう。

それに、パチュリーの推測ではそこまで危険なものではない。アビリティカードが作られた側も、特に能力が弱くなったりなくなったりしているわけではないし、アビリティカードを危険視している数は少ないだろう。

 

「あ、ならデートしませんか?」

「デート?」

「はい!折角なのでアビリティカード巡りでもしましょうよ!聞いた話だと人里でもアビリティカードを売っている人がいるらしいじゃないですか!」

 

異変解決が有耶無耶になれば、異変を楽しもうとするマインドは見習うべきだと思う。

早苗は嬉々としてデートへと誘い、なんなら咲夜をも誘って三人でアビリティカード集めをしようと言い出した。どんなものがあるか把握しているわけではないし、もしかしたら面白い出会いがあるかも、というのは早苗が目を輝かせて言ったことだ。

 

「ほら、もうおやつ時じゃないですか。人里でおやつ食べながら歩きましょー」

「そう、ね。定晴様も、ご迷惑でなければ」

「折角だしな。もしかしたら何か新しいこともわかるかもしれない」

 

ということで、俺たちは本格的な異変調査を諦め、人里へと向かうことにした。虹龍洞の色々も、回りまわって霊夢たちが解決してくれるだろうことを願いながら。

 

人里では、暖かい恰好をした子供たちが駄菓子やスイーツを歩いていた。早苗の言う通り、現在はおやつ時、寺子屋の終わりに思い思いに遊ぶ子供たちが増える時間帯だ。

 

「なあ、今更なんだけど、早苗は寒くないのか?」

 

俺は、いつものように色々なところが空いている早苗を見る。防寒着ことないもののしっかり着込んでいる咲夜と違い、風通しのよさそうな巫女服を着ている早苗は見ていてとても寒そうだ。

 

「私には神様たちがついていますから。寒さなんて効きません!」

 

どこまで本当のことなのか分からないことを言う早苗。しかし、実際これまでもあまり寒そうにはしていなかったし、去年も同じようにずっと巫女服だったような気もするので、ツッコむのをやめた。

さて、適当に買った水飴を三人で舐めながら歩いていると、人だかりを見つける。

 

「これさえあれば妖怪たちとも渡り合えるよ!」

 

売っているのは怪しい風貌だが、普通の人間のようだ。そして、少しボロボロな板の上に置かれているのは、例のアビリティカードだ。どうやら人里ではそれなりに人気の商品らしく、商人の周囲の人たちは、何が売られているのかを理解したうえで集まっているようだ。

客の中には、狙っているものがある人がいるようで商人に対して特定のワードを投げかけたりしている。アビリティカードの通称……だろうか。

 

「ここの人たちは例の特別な通貨を持っているんでしょうか」

「他の金銭が流通している隙はなさそうなんだけどな」

 

と、そんな商人の人混みとは別に、何人かの村人が一人の男性を囲んでいるのが見えた。そちらの男性は妖怪のようだが、顔をしっかり隠しているためか里の人たちには正体がバレていないようだ。

 

「定晴様、あの妖怪が持っているのが例の通貨ではありませんでしょうか」

 

見れば、その妖怪は人里のお金を受け取り、通貨を渡しているようだった。つまり、あの妖怪が換金係であるということだ。換金をしてもらった人から商人の人混みの方へと合流していく。

 

「てことは、俺たちも買えるんじゃないか?」

「確かに。換金してみましょー」

 

そうして妖怪の方に行くと、妖怪は俺たちのことを見てギョッとするが、深呼吸を一つすると普通に換金に応えてくれた。俺たちがただの買い物客であるということを理解したようだ。

どれくらいの相場で換金されているのかは不明だが、ある程度まとまったお金として受け取った。特殊なところは見られないが、どうやら何かの力が込められているらしく偽装はできそうにない。妖力のような力や神力のような力など、色々な力を感じられるので、誰が作成者なのかは不明だ。

 

「よし、しっかりと自分の分を買いましょう!」

 

人混みをかき分けて早苗が突っ込んでいく。薄着の巫女が突っ込んできたのもあってか、早苗から人々が離れていく。

そうして商人の机を見れば、やはり見たことのあるような柄が書かれているアビリティカードがちらほら。見たことないカードでも、なんとなく効果が分かるようになっているのは視覚的にいいことだとは思うのだが……

 

「じゃあこれとこれを……」

「おっと、一人一枚まで。それが決まりなんだ」

「そうなんですか?じゃあ、このカエルの書かれているやつで!」

 

早苗が手に取ったのは、カエルが書かれているカード。ただ、そのカエルは氷漬けになっており、多分だがチルノの能力が込められたアビリティカードであろうことが分かる。

俺が手に取るのは陰陽玉の書かれたカード。咲夜は、フランの翼のような虹色が描かれたカードを手に取った。

 

「はいよ」

 

よくわからないまま、商人に言われるままにお金を差し出す。そうすれば、なんとなくアビリティカードに妙な力が宿るのを感じる。

念じてみれば、俺の周囲に霊夢がよく使っている陰陽玉が出現した。早苗がアビリティカードを振れば、氷が散らばり、咲夜が振ればその氷たちがバラバラになった。

どうやら、今度はきちんとアビリティカードが使える状態になったらしい。たかねのときは気が付けなかったが、あの時買ってからすぐに試せば、あの悲劇は起こらなかったのだ。

 

「まだ他にも商人がいるかもしれません!」

 

アビリティカードの力を見て目を輝かせた早苗は、意気揚々と歩き出した。

なるほど、確かにこの力があれば、ある程度妖怪と戦うことだってできるだろう。弾幕を扱う力がないような人間であっても、弾幕ごっこをすることができるだろう。

今のところ悪い印象がない。それが、俺のアビリティカードへの感想であった。

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