東方十能力   作:nite

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四十三話 神社に住まう狛犬

俺が家で本を読んでいた時。突然玄関のチャイムが鳴った。前も同じような事があったな、なんてことを思いながら玄関のドアを開ける。

今回も魔理沙かと思っていたら、そこに立っていたのは同じ魔法使いのアリスだった。

 

「珍しいな、アリスが来るなんて」

「じゃんけんで負けて呼びに来たのよ。お菓子作ったから霊夢と魔理沙達とどう?って」

 

お菓子を作ったのは口ぶりからしてアリスだろう。それなのにじゃんけんでアリスを伝言役にするのは如何なものかと思うものの、霊夢と魔理沙相手だと案外普通のことだったりする。

 

「そういうことか。折角だし貰うよ。博麗神社か?」

「ええ、先に戻ってるわよ」

「分かった。すぐに行くよ」

 

それだけ伝えると、アリスはそのまま博麗神社の方に飛んでいってしまった。俺も素早く準備を整え風を使って博麗神社に飛んだ。

準備と言えども幻空の中に必要なものは全部入っているので、準備するものなどないのだけど。

 


 

俺が博麗神社に着くといつもの三人と針妙丸と萃香、更に今まで一度も会ったことが無い犬耳を生やした女の子が座っていた。

既に六人。そのうちの四人が妖怪であることは妖力を見れば明らかで、博麗神社が妖怪神社と呼ばれるのも納得できる。

 

「遅いわ!」

「早くここに座るんだぜ!」

 

俺が到着すると霊夢と魔理沙が急かしてくる。それをアリスが宥める。見た目からして三人の年齢はそこまで変わらないと思うのだがどうにも漂うアリスのお姉さん感…

 

「こらこら二人ともそんなに急かさないの」

「お菓子は逃げませんよ」

「そそ、酒さえあれば待てるんだから」

 

上から順に霊夢、魔理沙、アリス、針妙丸、萃香だ。

いつも通りの雰囲気に穏やかな気持ちになりつつも、一度も見たことのない犬耳の少女が気になる。

犬耳を付けているし妖怪かと思ったら、どうやら妖力よりも他の力の方が強そうで、妖怪と括るのには無理があるのかもしれない。

 

「ちょっと待って下さい」

 

そこで犬耳の子が断りを入れて俺に近付いてきた。そして丁寧にお辞儀をしてきた。なんか幻想郷でここまで丁寧に対応されるのは久しぶりだな。雑ではないのだが幻想郷の挨拶は素っ気ないものが多い。

 

「初めまして!高麗野あうんと言います。ここで守神みたいなことしてます!居候ですが」

「俺は堀内定晴だ。宜しくな」

「霊夢さんから色々聞いてますよ。何やらとても強いそうで」

 

最後の言葉に俺は引っかかりを覚える。もしや彼女も戦闘好きなのだろうか。霊夢の友達はなんか強い人が多い気がするのは気のせいだろうか。霊夢自身も強いのだし、強ち間違っていないのかもしれない。

俺の不安を感じ取ったのかあうんが一言付け足す。

 

「あ、私は戦ったりしませんよ。萃香さんや魔理沙さんとは戦ったようですが」

「ああ…そうしてくれると助かる」

 

戦わないでいいのなら助かる。外の世界でも出会い頭に戦いを挑まれたことも一度や二度じゃないからな。なんで戦闘に巻きこまれる回数が外の世界と幻想郷で大差ないのかと思いたくなるが、外の世界でやっていた仕事を思うと致し方ないという気分になる。

ただし、俺は戦闘を嫌っているというわけではない。単純に必要のない戦闘を避けたいだけだ。どいつも戦闘力という意味では申し分ないので練習にはなるけれど…やはり、殺し合いのような戦いを得意とする俺に弾幕ごっこは少し向いていない。

 

「話は終わった!?早く食べたいんだけど!」

「ああ、悪い。もう大丈夫だ」

 

霊夢に急かされて俺は机の周りに座る。するとアリスがカゴの中から袋に入ったクッキーを取り出した。綺麗な焼き色とクッキーから香る匂いが食欲をそそる。

普通のクッキー以外にもチョコチップクッキーのような特殊なものも交じっている。どのクッキーも丁寧に焼き上げられていて、アリスの料理スキルの高さがうかがい知れる。

 

「さあ、召し上がれ。これが普通のでこっちが色んな味を混ぜたやつね」

「「「いっただっきまーす!」」」

 

言うが早いか一斉に皆がクッキーに手を伸ばす。俺も一枚取り口の中に放り込み噛みしめる。

クッキーの独特なサクサクとした触感と、口の中に広がる甘い匂い。そしてなによりほのかな甘さに思わず舌鼓を打つ。アリスは料理が上手だと前から聞いていたが、まさかここまでとは…

 

「うまい!」

「そう?ありがとう」

 

魔理沙の隠すつもりのない賞賛にアリスも堪らず照れる。

これは外の世界の下手な菓子職人より美味いかもしれない。俺も料理はできるのだが幻想郷では材料や設備が足りず暫く作っていなかったのだ。久し振りに作りたくなってきた。

ちなみに足りない設備というのが上等なオーブンだ。あまり必要としなかったため外の世界で買わなかったため、簡易的なものしかできない。対するアリスはどうやって焼いたのか、気になって質問をしてみた。

 

「アリス、どうやってクッキーを焼いたりしたんだ?」

「あら?魔法を使えば直ぐに出来るわよ?調整は大変だけど」

「ああ、そうか。魔法の事すっかり忘れてた。魔法ってなんでもできるんだな…」

 

なるほど…魔法ね。よし、今度一度作ってみよう。外の世界でも幻想郷でも魔法を使う機会がほとんどないので焦がしてしまいそうだけど。調整が難しいというので、俺にとっては猶更難易度が高いかもしれない。

 

「でもまあ、オーブンを使うのが早いわね」

「オーブンがあるのか?」

「ええ、備え付けよ」

 

アリスの家には行ったことがないけれど、オーブンが備え付きであるような家なのか。幻想郷では和風建築が主であり、紅魔館のような特殊なところでもないと洋風建築はないと思っていたのだけど…

いったい誰が手掛けたのだろうか。洋風建築もできるような妖怪がいるのなら紹介してほしいものだ。

クッキーを食べながらワイワイしているみんなを見る。博麗神社で出されるお茶に合うクッキーを作ってきているあたり、アリスの料理センスは抜群だ。そんなことを思いながら、俺はクッキーをもう一枚口に放り込んだ。

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