東方十能力   作:nite

442 / 503
四百三十九話 からかい下手の早苗さん

早苗にしっかりと口止めをしてから、妖怪の山の頂上を目指す。なお、白い妖狐のことはやはり忘れていて、俺が指摘すると顔を赤くしながら白状してくれた。

とはいえ、場所が不明な白い妖狐を探すよりかは具体的に時間を使えるということで、飯綱丸のところまで行くという案は採用ということになった。広い妖怪の山で人探しをするならば、また椛のところに行かねばなるまい。

 

「妖怪の山の上下関係って難しいんですよ。私も、神社を急に作ったっていうので天狗たちからたくさん攻撃されまして……神様たちが威光を示してくれたのでなんとかなりましたけどね」

 

相手が神であっても、天狗の山の情勢を変えないがために強気に出るというのは、幻想郷では有名な話だったりする。昔から妖怪の山で立場のある鬼が相手でもない限りは、天狗はどの種族に対しても領域を主張できるのだ。

とはいえ、相手が神だと分が悪いらしく、妖怪の山には神様がだいぶ自由に住み着いているのだとか。

 

「そういう時ってどれくらいの立場の天狗が来るんだ?」

「最初は哨戒天狗とかがやってきます。でも、神社が相手だと分かると大天狗とかも出てきましたよ。当時は幻想郷の神社は博麗神社しかなかったので、神社という建物自体に警戒が強かったんだと思います」

 

守矢神社が幻想入りをした当時は、まだ命蓮寺もなく神霊廟も動いておらず、宗教施設は博麗神社だけだった。そんな中突然新しい神社が現れたら……そりゃ警戒もされるだろう。

 

「今じゃ宗教戦争状態ですよ。聖さんや神子さんはいい人ですけど、宗教のことだとちょっと過激になりがちなので……」

「過激さは守矢神社も変わりませんよ」

「紅魔館のメイドに言われたくないですー!」

 

俺からすればどこも過激だ。そもそも、話し合いをするくらいなら弾幕勝負となる幻想郷ルール自体が過激な原因であると思われる。今や慣習のようになっている弾幕勝負だからこそ成り立つが、外の世界では成立しない規律だろう。

 

「咲夜さん、今だってこっそり近寄ってこようとしていた天狗たちを落としてますよね」

「定晴様の手を煩わせるわけにもいかないもの」

「別にそこまで俺に恭しくする必要はないぞ?」

 

一応俺も気が付いていたことだが、俺たちの周囲に飛んでいた天狗などの妖怪たちの妖力が、ふとした瞬間にふっと消えるのだ。それは、軒並み咲夜が時間を止めている間に仕留めているからである。

咲夜は平然な振りをしているが、ちょくちょく飛んでいる座標がずれているので、いつ仕留めているのかは俺たちにもわかる。

 

「いえ、定晴様は大切なお客様ですので」

「本当に~?お客様で……ひぃ!」

「早苗。変なことを言うとナイフを飛ばすわよ」

「もう飛ばしてます!」

 

なんだか紅魔館で見たことあるようなやり取りである。紅魔館ではよく美鈴が失言をして、咲夜のナイフの餌食となっている。咲夜は口よりも手が動くタイプなようで、脅しよりも先にナイフが飛ぶことが多い。

 

「あ、ほら、もうつきますよ」

 

焦った様子の早苗が指さすと、木々の様子が変わり、山頂が近づいてきたのを感じ取る。大天狗や天魔の趣味なのか、麓や道中とは山頂は植生が少し違っているのだ。

そうしてエリアを跨げば、その瞬間……

 

「うおっ」

「きゃあ!」

「っ!」

 

突風が吹き荒れる。まるで、壁のように、俺たちが山頂に進むのを防ぐかのように防壁が生まれる。あまりの突風に俺たちはそれぞれ少し後ろに吹き飛ばされる。

自然のものではないその壁を睨むと、大きな妖力が上から降ってきた。大きく黒い翼をもつそれは、件の大天狗その人であろうことはすぐにわかる。確か飯綱丸と、文は言っていたはずだ。

ため息一つ、小言を言うように口を開く。

 

「今日だけでどれだけ部下を落とすつもりだ。被害が大きすぎて急遽戻ってくることになってしまった」

「すぐに出てきてくれればいいんです。事情を知るすべてに話を聞くのが目的ですから」

「ああ怖い怖い。紅魔館のメイドっていうのはナイフを説得と勘違いしていると見える」

「あらあら、説得の段階すらも踏まずに攻撃をしてくるのは天狗の特権でしょう?」

 

大天狗と咲夜があはは、うふふと笑いあう。それでいてそれぞれの目が全く笑っていないのが、非常に恐ろしい。

 

「私は飯綱丸龍。天狗の領域を荒らそうってんなら覚悟してもらおうか」

「ふふ、鳥頭風情が何匹出たって一緒ですよ」

 

どうやら今回は咲夜が戦うようで、その圧倒的な殺意を前にして早苗も少々及び腰だ。すごすごと後ずさり、俺の隣に飛んでくる。

 

「なんだか咲夜さんが怖いです」

「早苗が変なからかい方をするからじゃないか?」

「あれで過度だって言われるなら、咲夜さんはちょっと短気すぎです!」

 

早苗の文句も最もながら、咲夜は少々ご機嫌斜めといったところ。

こちらに被害が及ばないように注意しながら、俺と早苗は咲夜と飯綱丸の戦いを眺めることにした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。