東方十能力   作:nite

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四百四十一話 バレット弾幕の……

山頂にたどり着いたころには、すっかり夜になってしまっていた。大きな月が見え、星々がきれいに輝く。

名のある妖怪たちはまだ回復しきっていないのか、道中俺のことを襲ってくる妖怪はいなかった。ここまでボロボロにされてしまっては、現在の天狗社会はズタボロであろう。異変が終わったあとの早苗の立場が狭くならないことを祈るばかりである。

 

「戻ってくれば天狗どもは揃いも揃って倒れ伏している。お前のせいだな、人間?」

 

山頂に、まるで虹を纏ったような見た目の少女が立っていた。だが、神と話す機会が多い俺は気づく。あれが、天弓千亦という神なのであると。

飯綱丸は彼女のことを市場の神と呼んでいたが、市場の要素はあまり見受けられず、色の神だとか虹の神だと言われた方が納得できるような衣服を身に着けていた。

 

「少なくとも俺のせいではない。俺は今回特に攻撃してないからな」

 

身を守るための結界を張ったりはしたものの、基本的に天狗たちは全員早苗と咲夜の被害者である。なので、俺は嘘はついていない。

 

「まあいい。そうして暴力で市場を乱そうとしていることに変わりはないのだから」

 

千亦は見るからに機嫌が悪い。それこそ、既に臨戦態勢といったところだ。

 

「ならば、こちらも同じ手段で侵略者を落とし、それで終わりにしよう!」

 

千亦がそう言うと同時に、大量の弾幕が展開される。隙間などないように見えるほどの高密度な弾幕は、恐ろしいほどに殺意を含んでいて、当たれば致命傷は避けられない。

俺は輝剣を呼び出し、弾いたり斬ったりしながらさばいていく。

 

「俺は別に戦いに来たわけじゃ……」

「【無主への供物】!」

 

問答無用。それがスペルカードの宣言と共に突きつけられた。圧倒的な火力は絶望的な壁となり俺の前に立ちふさがる。

正直、俺はあまり戦いに前向きではない。なんせ、俺はあくまで今回完全に付き添いだったからだ。千亦が怒っている原因は俺たちが暴力により異変を解決しようとしたことらしいが、俺はまともに戦っていないのだ。だいぶとばっちりである。

 

「話し合いとかないのか!」

「そんなもの、お前たちが市場を破壊したその時にお前たち自身がなくしたのではないか!」

 

高圧的な喋り方と怒気。

そこまで言うほど、俺たち誰かと戦闘しただろうかと振り返ってみる。たかねとは一度売買をし、詐欺だったと判明したときは戦闘とも呼べないようなお仕置きはしたものの、奪ったとかではなくそのあとにちゃんと購入をしている。

天狗たちとは何度も戦闘したものの、それは俺たちが妖怪の山の頂上付近に侵入したからで異変解決とはあまり関係のないことだ。飯綱丸も、異変の相手というよりかは天狗代表という感じで戦ったから市場とは関係のないように思う。

ふむ、やはり俺たち、今回そこまで戦闘はしていないように思えるのだが。早苗と咲夜は好戦的だったものの、不要な戦いであればその前に制止していたので、売人を尋問するために戦闘するというような行為はしていないはずだ。

 

「俺たちは戦闘行為はしてない!市場破壊なんてしてないぞ!」

「市場が変動すれば私に分かる!人間が妖怪の山近辺の市場を破壊しているのは把握しているんだよ!」

 

聞く耳を持たない、というよりかは千亦は千亦で市場を破壊された証拠のようなものを握っている様子だ。そういえば魔理沙が猫の妖怪と弾幕勝負をしていたのを見たことを思い出す。もしかして、あれのことを言っているのだろうか。

ひとまず、俺の話を聞いてもらうためには弾幕勝負に勝たないといけないようだ。仕方なく、俺は輝剣を構えて……と、戦闘態勢になろうとしたその時、背後から声が聞こえた。それは、後ろから追いついてきた早苗や咲夜の声ではなく。

 

「おうおう、ここにいたか。坑道の侵入者」

「なにっ!?」

 

後ろから殺気を感じ、急いで横っ飛びに回避をする。千亦の弾幕と相殺され消えていく、これまた高密度で殺意が高い弾幕群。

 

「百々世!?」

 

そこにはスコップを手にしたままの百々世が俺のことを睨むようにして見ていた。

突然の乱入者に、千亦の動きも止まる。

 

「ちょっと、あなたは坑道を掘っていたはずでしょう。なぜここにいるんですか」

「うるせえ。お前も喰らうぞ」

 

二人は仲がいいわけでもないようで、喧嘩腰だ。二人とも機嫌が悪いようなので、三つ巴の戦いが始まる……と思いきや。

 

「こいつは虹龍洞の侵入者だ。それに、随分と美味そうな気配をしてるし追ってきたってわけだ」

「ちょうどいいです。人間を落としたあとの処理は任せます」

「へっ、まあいい」

 

瞬間、同時に俺に向かって殺意が大量に含まれた弾幕が展開された、境目の部分は相殺しあっているため、完全な協力をしているというわけではないようだが、それにしても一気に苦しい状況だ。

早苗と咲夜はまだ近くにはいないようだし、こんな状況で式神召喚しても、状況を把握するまえに落とされてしまう。完全に一人の状態で、今回の異変の強者を同時に相手取ることになってしまった。

 

「ちょっと待て!お前らは段階を踏むとかないのか!」

 

しかし、二人分の弾幕が相手では音が掻き消えて俺のことも聞こえなさそうだ。

……流石に一人で相手するのは嫌だなぁ。それに、だいぶ遅い時間だから早めに帰りたい。早苗と咲夜がいつ戻ってくるかもわからないし……

 

「はぁ」

 

………

 

咲夜さんにすごい詰められた。定晴さんを意識してるならそう言えばいいのに、徹底的に否定するものだから私も少しやけになってしまった。

頂上付近で弾幕勝負をしているらしい音は聞こえていたから早く行きたかったのだけど、咲夜さんが全然離してくれなかったせいで既に十分以上経過している。

 

「定晴さー……ん?」

 

頂上にたどり着くと、激闘が繰り広げられたことが分かる惨状になっていた。周辺の木々はなぎ倒され、地面にはいくつものクレーターができている。まるで少年漫画のような現場だけど、その中心に主人公のように定晴さんは立っていた。

それも、まったくの無傷で。その足元に転がっているのは、例の神様であろう千亦さんと、なぜかいる百々世さん。

 

「ああ、やっと来たか。こいつらが同時に襲ってきたんだ。大変だったぞ」

「それはすみません……無傷で勝ったんですか?この二人を相手に?」

「まあな。ちょっとした裏技だ」

 

倒れている二人は気絶しているだけのようで、異変はこれにて解決ということでいいのだろうか。

なんだか不完全燃焼のような気持ちだけど、定晴さんが〆をつけてくれたならそれはそれで構わない。私たちの制止役だったし、ストレスを溜めてしまったのかもしれない。

 

「さて、ひとまず二人を連れていくぞ」

「は、はい!」

「了解しました」

 

私と咲夜さんが百々世さんを、千亦さんを定晴さんが運んで、守矢神社まで下山したのだった。

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