東方十能力   作:nite

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四百四十二話 後処理

守矢神社まで降りてきた私たちは、定晴さんから事情説明を受けた。どうやら、戦いの中でこの異変の顛末を聞き出すことに成功したらしい。

アビリティカードが流通するようになったきっかけは、市場の神である千亦様(本物の神様らしいので敬称をつけることにした)の力をつけるため。それはそれとして龍さんは、アビリティカードの市場で生まれる利益で稼いでいたとのこと。

市場が広がるということ自体が、千亦様の力を増やすことに繋がるとのことで、今や天狗よりも強い力の神となっていたらしい。最終的に裏切り合いが発生していたみたいで、今回の黒幕は一枚岩じゃないということだった。

じゃあ百々世さんはというと……

 

「龍をも食らう大妖怪らしいが、まじで俺たちのことを食うために襲ってきたっぽい」

「えぇ……」

 

虹龍洞で出会った時の百々世さんはすごい威圧感で、修羅場を超えてきている私をしてびっくりしたわけだが、私と咲夜さんが言い合っている間に、定晴さんは一人で制圧をしてしまったらしい。何をしたのか聞いても目を逸らされてしまい、方法は教えてくれなかった。

 

「それで、この二人はどうしますか?処しますか?定晴様の夕餉にいたしましょうか」

「待て待て、今回は珍しくしっかりと弾幕勝負だったんだ。弾幕勝負なら、終わったあとは仲直りが幻想郷流だろ?あと俺は妖怪は食べない」

 

なんだか咲夜さん、ちょっと過激になっているような気がする。それこそ、レミリアさんを害そうとした相手以上に、定晴さんの敵を許そうとしない感じだ。もしかして、恋愛感情が一周してヤンでしまったのだろうか。

 

「まあどのみち神である千亦はどうにもならないだろう。飯綱丸にでも任せるさ。百々世の方は……魅須丸に渡せばいいだろう。結果的にあいつの頼みを聞いたようなものだからな」

 

そういえば、魅須丸さんから百々世さんの退治を頼まれていたのを思い出した。揃いも揃って首を縦に振らなかったためすっかり忘れていた。

ともかく、今回の異変はこれで終幕ということでいいのだろうか。

 

「定晴さん、アビリティカードは?」

「特に問題ない存在らしいし、放置でいいんじゃないか?今更回収しようにもだいぶ流通してるみたいだし、百々世を倒したならこれ以上は増えないだろうし」

 

魅須丸さんの話では、虹龍洞で採取できるものがアビリティカードの材料になっているとのことだった。採掘係である百々世さんがいなくなれば、あとは既に掘られた分と流通している分だけが今後出回るアビリティカードということになるはず。

これ以上市場規模は拡大しないものの、神様たちのパワーバランスを考えるならこれくらいがちょうどいいのではなかろうか。神奈子様や諏訪子様がいれば妖怪の山の神様バランスは崩れないだろうし、あとは神様たちにお任せしよう。

ただの風祝の立場で、神様たちの関係に介入はできない。せいぜい、話し合いをするときにお二方を奉るだけだ。

 

「さて、夜もいい時間だし俺は帰るよ。百々世は魅須丸のところに連れてくから、千亦はここに置いて飯綱丸を呼んで回収させればいい。そんじゃ、おやすみ」

「はい、おやすみなさーい。楽しかったでーす」

「お疲れ様でした、定晴様」

 

定晴さんが百々世さんを横抱きして虹龍洞の方へと飛んで行った。敵に対してもあの運び方するんだ……ふーん。

 

「あの烏を呼ぶのは早苗に任せていいかしら」

「はい。そこらへんの天狗を捕まえて呼びつければすぐでしょうから」

「それでは私はここらへんで失礼するわ。それじゃ」

 

そう言うと、咲夜さんの姿が消える。まったく、友達の私には基本冷たい対応なんですから。

さて、夜であろうと、むしろ夜だからこそ哨戒している天狗を捕まえて飯綱丸さんを呼びつける。天狗は私の顔を見て随分と怖がっていたようだけど……ああ、そういえば天狗社会を破壊したばかりだった。

神様とはいえ、ここは千亦様を祀る場所ではないので、邪魔にならない場所に移動させておく。文さんでなくても、烏天狗は総じて速いのですぐにいなくなるだろう。

 

「諏訪子様ー、神奈子様―。戻りましたー」

「おかえり早苗ー」

「おかえり。どうだった?」

「楽しかったです!」

 

本殿の裏に回ると、諏訪子様と神奈子様が鍋を煮て待っていた。どうやら、私を待ちきれず、簡単に作れる鍋をつつくことにしたらしい。

私も混じり、夕食を共にした。定晴さんとの進展について聞かれたけれど……進展らしい進展がないと分かると、見るからに落胆している様子だった。そんな簡単に進展するなら、ルーミアさんや紫さんが苦労してません!

 

………

 

帰宅すると、お嬢様が自室でワインの瓶を半分ほど飲んだ状態で、ソファにひっくり返るようにしてお休みになっていた。遅くなるようだったら美鈴に食事を作ってもらうように頼んでおいたので、既に食事は終わらせているのだろう。

ワインを片付けるために厨房に移動すると、きれいに皿洗いされた食器と共に、私の分の炒飯が置かれていた。美鈴は中華料理をさせると私以上に美味しいものを出してくれるので、その点では信頼している。移動するのも面倒だったので厨房に椅子を持ってきてここで食べるとしましょう。

 

「あ、咲夜おかえりー」

 

声に振り返ると、妹様が厨房に立っていた。どうやら寝る前の水分補給へと来られたようだったので、一杯の水を手渡す。

 

「ありがとー……ふぅ、それで、お兄様とはどうなった?」

 

妹様が、極めて真面目な顔をして私の目を見る。吸血鬼であるということを抜きにしても、嘘をつくことのできないプレッシャーが私を襲う。

 

「どう、とは」

「そのままの意味だよ。お兄様と一緒にいたなら、何か思うところはあるよね?」

 

まるで私を責め立てているような雰囲気に、私は二の句が継げなくなる。

定晴様に対して、思うところ……やはり、妹様はあれのことを言っているのだろうか。でも、それなら答えは一つだけ。

 

「定晴様とは何もありません。これまでも、これからも」

 

妹様が恋慕している相手に対して、従者である私が何か思うことなどあろうはずがない。あってはいけない。メイドとは常に仕える相手の利益となるように行動し、不利益となる行動を慎むのが瀟洒というもの。

私がはっきりと答えると、妹様は大きくため息をつき、ジト目になって私を見つめる。あ、あれ、何か判断を失敗してしまったでしょうか。

 

「だめだよ!お兄様のことを落とすならもっと強気じゃないと!」

「おとっ!?妹様、私は別にそういうことは!私は妹様を応援するのでそういったものは……」

「私知ってるからね!お兄様が料理とか掃除しているときに目で追ってるの!お兄様の家事が得意なところに惹かれてるんでしょ!」

 

みるみる私の顔が熱くなり、つい強く言い返してしまう。

 

「私は家事の参考になるからと見ているだけです!定晴様のことはただの客人として「まさかまだ自覚してないの!?このにぶちん!」」

 

 

結局、騒ぎを聞きつけたお嬢様に止められるまで言い合いは続いた。

私があの人のことを好きになるなんて、そんなの許されるわけないんだから……私は瀟洒なメイド、例えどんな感情だって制御できるわ。

 

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