コン コン コン
『おい!客だぞ!起きろ!』
「ああー?」
狂気にたたき起こされて目を開ける。
ドアがノックされているのは確かに客が来た証拠だろう。どうも最近は来客が多い気がするなと思いつつ伸びをしながら玄関に向かう。魔理沙、アリスと来れば次は霊夢あたりだろうかと思い扉を開けるとそこには咲夜が立っていた。
「咲夜?珍しいな、どうした?」
「はい、突然来て申し訳無いのですが、今から紅魔館に来て頂けませんか?」
あくまで恭しいまま俺に紅魔館に来るように提案をしてきた咲夜。わざわざ呼びに来るだなんてと少しばかり警戒してしまう。
「ん?何かあったのか?」
「実は最近妹様が遊びたいと暴れておりまして…どうやら定晴様との遊びを期待しているらしいのでこうして足を運びました」
「マジかよ」
遊びたいからってフランが暴れているのはなんとも子供らしい…と言っていいのだろうか。というか俺にフランの暴走を止めることができると期待するのは流石にお門違いである。多分フランの事だから夜になるまで遊び続けると思うのだがどうだろう。
「それで…」
「分かった。取り敢えず行くけど、どうなっても知らないぞ?」
「あ、ありがとうございます。では、先に行っておりますね」
咲夜は懐から懐中時計を取り出すと…気が付いたら姿がなくなっていた。あれか、時間を止めて移動したのか。
俺は一度扉を閉めて素早く準備に取り掛かる。こんな事もあろうかと前もって用意していた
紅魔館まで飛ぶこと十数分。博麗神社近くに住んでいる身からすれば霧の湖近くにある紅魔館はちとばかし遠い。
「やっと着いた。俺の家からだとやっぱり時間がかかるな…」
眠っている美鈴を一瞥したあと門をくぐる。ざる警備とかそんなレベルじゃないのだけど大丈夫だろうかこの館。
「おーにーいーさーまー!」
「ん?ぐはっ!?」
門の中に入ったら早速吸血鬼魚雷が飛んできた。俺は身体能力強化をしていたはずなのに二メートル程吹き飛ばされる。おかしいなぁ…純粋な鬼にも力負けしないというのにどうしてフランは余裕で俺を吹き飛ばすのだろうか。
「よ、よう。フラン。元気だったか?」
「うん!元気過ぎて有り余っちゃうくらい!」
「あ、ああ、そのようだな」
フランがピンポイントに鳩尾に飛び込んできたため俺の腹が悲鳴を上げている。しかし、仮にもフランから兄として認識されている俺が痛がっている様子を見せる訳にはいかず、必死に隠す。取り敢えずバレないように再生をかけておこう。
「大丈夫?」
「ああ、全然平気さ」
「そう?」
フランがちょっとだけ心配するような顔をしたので俺は嘘をつく。すると安心したのか更にフランは強く抱きしめてきた。子供とはいえ吸血鬼。一言で表すとしたら…死にそう。うん、かわいいのだけどもっと力を弱めてくれてもいいんだぞ。
「わ、分かったから、離してくれ。頼む」
「分かった!」
そしてやっとフランは離れた。妖怪の腕力により搾られた俺の体に激痛が走っている。痛すぎて再生能力が間に合わないレベルで。
するとにっこりしたままフランは早速遊びの体勢に移行した。
「取り敢えず弾幕ごっこしよ!」
「ああ、分かったから少し休憩を…」
俺が休憩をとろうとしてもそれを無視してフランはスペルカードを宣言した。
「よーし、行くよー!禁弾【スターボウブレイク】!」
「マジかよ!?」
返事も聞かずフランはスペカを発動。元気なのはいいことなのだが迷惑っちゃ迷惑だ。というかこんなところで弾幕ごっこなどしようものなら紅魔館のきれいな庭園が乱れに乱れること必須である。ここの世話をしているという美鈴が涙目になる前に止めなければいけない。
「一度落ち着け!剣術【五月雨切り】」
フランが放った弾幕の悉くを斬りフラン自身を剣の峰で叩く。
「ふきゃん!!」
弾幕が途切れ、頭を押さえながらちょっと涙目のフラン。そこに俺が諫めるように言葉をかける。
「一度落ち着けフラン。お菓子も持ってきてるから」
「お菓子あるの!?頂戴頂戴!」
お菓子という単語が出た途端、先ほどまでの涙目は嘘のように消し飛びキラキラとした目をしだした。やはりお菓子は偉大か。
ぴょんぴょんと飛び跳ねるフランを手で抑えながら紅魔館の中に誘導する。
「はいはい。取り敢えず中に入ってからな?」
「はーい!それじゃ行きましょ、お兄様!」
紅魔館に入るまでの短い間でここまで体力を持っていかれるとは…フランの元気が原因か、それとも紅魔館の雰囲気か…どのみち帰るころには無事とはいかなそうだな。