東方十能力   作:nite

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四百五十一話 争いは、同レベルの者同士でしか発生しない!

おやつを食べて微睡んでいると、何やら言い合うような声が聞こえた。なんだろうと思って体を起こすと、困ったような表情を浮かべるご主人様と、その傍で釈然としないような表情を浮かべる咲夜。それに、どういうわけか竹林のお姫様がご主人様に詰め寄っていた。

 

「何が約束できないよ!あれくらい制御しなさいよ!」

「制御はできる!だが、それとこれとは話が別なんだ!」

「ちらちらと永遠が頭をすり抜ける感覚が、あなたには分からないでしょうね!」

 

どうやら輝夜は、ご主人様に対してクレームをつけにきたみたいだけど、ご主人様が困っているというのなら、式神たる私が出ようじゃないの。

 

「どうしたのよ」

「そういえば式神だったわね貴女。主に言いなさい、別時空を生成するのはやめなさいって!」

「別時空?」

 

いまいち話の要領がつかめない。ああ、だから咲夜は釈然としない表情をしていたのか。

だが、どうやらご主人様には伝わっているらしく、しきりに謝罪しつつもやめることはできないと弁明をしている。

 

「一体何の話?」

「あなたの主、事あるごとに別時空を観測して消し去ってるのよ!こっちからしたらたまったもんじゃない!」

「ことあるごとじゃない!ちゃんと、必要な時に必要なだけだ!」

 

うーん、本当に何の話か分からない。

 

「ルーミア、あれだ。俺が死なないように最善を取れるって話だ」

 

なんとなく、そういう話をされたことがあるような……正直、私もご主人様の能力のこと完全に把握していないから分からないのよね。随分前のことだけど、ミキにもご主人様のことを色々言われたし、ちょっと気になることは多い。

 

「私はあくまで式神だから、主のことを咎めることはできないわ」

「従者なんだからしっかりしなさいよ!」

 

まあ、こう言うくらいが無難だろうか。ご主人様が死なないように何かしていることは分かるし、私もご主人様に死んでほしくないし、ならまあやめされるというのはどのみち私にはできない。

振り向けば、スイーツを食べて幸福感に包まれていたにも関わらず、目の前で始まった言い争いに怯えているユズとフランの二人。

 

「大丈夫?二人とも」

「私は大丈夫だけど……ユズちゃん、部屋に戻る?」

「は、はい……」

 

私が誘導して、ユズを部屋へと送る。まだ、この子にはこういう刺激的な感情のぶつかり合いは毒だ。

戻ると、フランは段々と慣れてきたようで、次はご主人様のことを心配そうに眺めていた。

 

「ルーミアちゃん、あれって竹林の人だよね」

「面識あるの?」

「ううん。一回だけ見たことがあるだけ。私、こう見えても行動範囲は広くないから」

 

ということは、フラン視点だと「よく知らない人が突然兄に問い詰めだした」という状況か。そりゃ怯えるし、心配する。

ただ、ここで飛び出して言い争いに参加しなくなったのは成長なのかしら。フランは、もうちょっと感情的に動くような子だった気がする。

 

「誓いなさい!ここで!もう使わないと!」

「だからそれは無理だって!」

 

……いい加減鬱陶しいわね。輝夜も、ご主人様も。

二人が言い争っている間に、私は頭につけているリボンへと手を伸ばす。ご主人様が調整したおかげで、自分で外せるようになったそれを外すと、体内の妖力が一気に膨張する。

流石に突然現れた妖力の塊を無視することはできないのか、二人して私に目を向ける。

 

「あなたたち、うるさいわ。言い争いなら外でやりなさい」

 

闇を広げ、まるで電気がなくなったように真っ暗。定晴も、輝夜も、フランも、咲夜も、全員の姿が見えなくなるほど真っ暗な中で、私だけが見える状態。闇を操るなら、これくらい簡単だ。

 

「喰らうわよ」

 

私の中の、最近じゃご無沙汰な妖怪の本能を表に出す。即ち、さっさと落ち着かないなら武力行使も辞さない。

リボンを外し、闇を元に戻す。すると、ご主人様が「ちゃんと話し合いをしよう」と言って外に出る。輝夜も同意し、すごすごと外へと出て行った。まったく、最初からそうしなさいよ。

 

「わぁ、ルーミアちゃんってすごいね!」

 

至近距離にいたはずのフランは、無邪気に笑っていた。あれだけの妖力を見て尚、こうして子供のように笑えるのは、彼女もまた吸血鬼という大妖怪の仲間だからだろうか。

 

「まあ、あまりやらないけどね」

「なんで?」

「そこまでやる理由はないし、こっちの方が馴染みがあるでしょ?」

 

私がリボンを外すと、その妖力量に比例して体が成長する。スタイルがいい女性になれるので、ご主人様に迫る時には使えそうだけど、その姿でいるメリットは基本的に存在しない。

それにあの姿、私が日頃封印している妖怪としての本能が勝手に出てきちゃうのよね。人を喰らいたいという強い欲求、それを封印するためのものが私が最初につけていたリボンのはずなんだけど。今はその感情はご主人様への想いによって堰き止められているため、リボンを外すと剝き出しになってしまうのだ。

正直、ご主人様を食べたら美味しそうだなと思わないこともないけど……まあ、今は封印解除状態でもちゃんと自我を保てるから大丈夫。

 

「ルーミアちゃんはどっちの姿でもかわいいよ!」

「そうそう!凄いかわいい!」

「あらありがとう……ん?」

 

ふと、背後から声が聞こえて振り向くと、なぜかそこにはもう一人。

ニコニコした様子のこいしが、いつの間にやら私の後ろに立っていた。フランも咲夜も気が付いていなかったみたいで、これには驚きだ。

 

「いつの間に来たのよ」

「さっき。定晴と輝夜が出てった時に、入れ違いで入ったよ。能力使ってたんだけど、普通に定晴には挨拶されたー」

 

流石ねご主人様。全然気が付かなかった。

どうやら博麗神社に行っていた帰りらしく、随分と上機嫌だ。

と、こいしが来た衝撃で正常に脳が動き出したのか、今まで何も話さなかった咲夜が時計を見て口を開く。

 

「妹様、そろそろお帰りの時間です」

「え?夜までいるって話じゃなかったの?」

「実は先ほどパチュリー様から伝言が来まして、もう戻ってきて大丈夫だと。そして、大切な話があるからと」

 

どうやら、紅魔館に帰る時間が来てしまったらしい。今日はこのままお泊りまでするつもりだったフランは、それはもう不機嫌である。

 

「まだ遊び足りない!」

「……妹様、本当に大切な話のようです。私も詳細は知りませんが」

「咲夜だってまだいたいよね?!」

「私もそう思いますが、それはそれ、これはこれです」

 

どうやら咲夜の中で、帰宅することは決定事項らしい。ここまで頑固の咲夜は、流石のフランでもどうしようもなく、諦めて帰宅の用意を始めた。

それにしても、咲夜、今帰りたくないっていう意見に平然と同意したわね。うーん、午前中はそこらへんぎこちなかったような気がするんだけど、私たちが眠っている間に何かあったのかしら。

 

「じゃあね、ルーミアちゃん、こいしちゃん」

「またねー」

「ええ、それじゃ」

「それでは失礼します。妹様、少々用事があるので香霖堂の近くで……」

 

二人は悲しそうにして外へと出て行った。まだ言い争いをしていた二人は戻ってきていないから、外で挨拶をすることになるだろう。

と、こいしはフランが座っていたところへと代わるように腰かけた。

 

「ねえねえ、咲夜って何かあった?」

「やっぱりそう思う?」

「うん。雰囲気変わったなって」

 

二人で頭を傾げる。うーん、これはあとで定晴に問い詰める必要があるかもしれないね。

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