図書館の奥へと飛んでいく魔理沙を追いかけながら呼びかける。
「魔理沙ー!」
「ん?お!定晴じゃないか!どうしたんだ?」
特に減速することもなく飛び続ける魔理沙に並走しつつ話す。これ、結構疲れるな。
「魔理沙こそ、何しに来たんだ?」
「私はここの本を借りに来ただけだぜ!」
借りに…か。なんとなくパチュリーがこの言葉を嫌がっていた理由が分かったような。というか魔理沙が本を借りるというだけでそこはかとなく不安感に襲われるのはなぜだろう…
そう思っていたら俺のさらに後ろからパチュリーが追いかけてきた。
「魔理沙は盗んでいくだけでしょー!」
やっぱりな。借りると言ってずっと返さない、いわゆる借りパクをしている訳だ。そりゃ貸すのも嫌になるよな。
パチュリーの言葉に魔理沙は笑顔のまま大声を出した。
「人聞き悪い事を言うな!私は死ぬまで借りているだけだぜ!」
「魔理沙、それは盗んでいるのと同じだぞ?」
まあ魔理沙が種族としての魔女ではなく人間の魔法使いだから言えることだろうけど、それにしたって基本的には六十年くらいは先である。幻想郷は文化レベルが外の世界よりも低いとはいえそれでも何十年も先まで借りるのはどうなのだろうと思う。
「定晴もパチュリーの味方をするのか。ならば…魔符【スターダストレヴァリエ】!」
「おい止めろ!」
まさかの室内弾幕。魔理沙を中心として周囲に弾幕が拡がる。この図書館が異常に広いからなんとかなっているものの、他の本にダメージがあるかもしれない。
俺は結界と剣で弾を避けつつ魔理沙に近付き…
「障壁【衝撃板】!」
「ふぎゃっ!?」
結界で創ったまな板のような形をしている板で魔理沙を叩く。少しネタ要素を入れたスペカなのだがその威力は高く、あの魔理沙でさえ高度が落ちてふらつく。まあぶっちゃけ板ぶつけてるだけだしな。
「くっそー!こうなったらもう一…「魔理沙ー!私も交ぜてー!」…うげ!フラン!」
ここで参戦フランドール・スカーレット。持ち前の素早さと武器のレーヴァテインを手に魔理沙に突っ込む。流石の魔理沙もこれには焦ったのか早口でスペルカードの宣言をした。
「ちょっ!ストップストップ!彗星【ブレイジングスター】!」
フランから反対側にミニ八卦炉を使って逃げる魔理沙。しかしその先には先回りしておいたこの俺がいる。
「よっ」
「へ!?定晴!?いつの間に!」
身体強化をしてからそのまま突っ込んできた魔理沙を捕まえる。
「サンキュー、フラン。さて、魔理沙?図書館から盗んだ本を返せ」
「私が《借りている》んだ。そんな人聞きの悪い言い方は止してくれ」
「いや、ここの管理者が《盗んでいる》って言うなら盗んでいるんだろ。ほら、本を持ってこい」
「くー、今日のところは諦めるぜ…」
魔理沙は観念したのか入ってきた窓から出ていった。寒いから閉じてほしいのだがな。
魔理沙が返しに来なかったら霊夢に家を聞いて直接乗り込むとしよう。そもそもパチュリーの様子を見た感じ借りること自体も無許可らしいからそれくらい構わないだろう。
さて、追いかけてきたパチュリーに向き直る。
「う、嘘…本当に本が返ってくるのね」
「やりましたね!パチュリー様!」
「ありがとう定晴。さっきの話だけど、良いわ。好きな本借りていって良いわよ。一週間後にちゃんと返してね」
ちゃんとというところを強調しながら借りることの許可を貰えた。きちんと一週間後に返しに来ますよっと。
欲しいのは魔術の本と剣術の本だ。この二つは俺の攻撃の軸だからな。図書館の大量の蔵書の中から見つけるのには少々手間取ったが、小悪魔が手伝ってくれたおかげでなんとか目的の二冊を借りることができた。家に帰って読むのが楽しみである。
「へー、魔理沙が本を返してくれるのね」
「そうなのよレミィ。これで本の整理が進むわ」
本を借りた後最初の部屋に戻るとレミリアと咲夜がティータイムの準備をしていた。俺とレミリア、フラン、パチュリーの四人分だ。そして咲夜が作ったクッキーが置いてある。
「さ、定晴様。次は私の作ったクッキーです。お食べ下さい」
「ああ、ありがたく頂くとしよう」
というか、咲夜が凄い心配そうに見ているけど別に命に関わるような事でも無かろうに。
クッキーを一つ食べる。齧るとカリッとした食感と仄かな甘み。その甘みに合う美味しい紅茶。どれもが良い相性で、とても美味い。やはり本業にしているだけのことはある。
「うん、良い味だ。紅茶ともよく合うし、やっぱり咲夜の方が料理は上手だな」
「いえ!そんな事無いです!定晴様の方が美味しくできていたと思いますよ」
「そんな謙遜することないのに…」
紅魔館は賑やかで楽しいな。今後も何度も訪れることになるだろうし良い関係を続けることができればいいと願うばかりである。
「あとで弾幕よお兄様!」
「少し休ませてくれ…」