東方十能力   作:nite

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四百九十五話 クリスマスパーティ 下

咲夜の誘導で、輪になるように参加者が並ぶ。俺は幻空から物を取り出すが、他は前もって咲夜に預けていたようで、咲夜から各々のプレゼントを受け取っている。

 

「紫も参加するんだな。いつ用意したんだ?」

「ふふん、私なら外の世界から特別なものを取り寄せるのも簡単ってことよ」

「ちゃんとお金は払ってるだろうな?」

「も、もちろんよ!で、でも……無機物が神隠しにあっても、人が消えることほどの問題にはならないと思わない?」

 

紫のスキマ能力を、外の世界の科学で観測することは不可能に近い。そのため、たまにこうして外の世界のものを勝手に持ち込んだりするのである。

外の世界のお金はちゃんと持ってるんだから、普通に買い物をすればいいものを、そこはどうも妖怪らしいというかなんというか。

 

「定晴は何を用意したの?」

「簡単なものだ。まあ引き当てられたら喜びな」

 

パーティ全体の人数からすれば少ないとはいえ、それでも数十人は参加しているプレゼント交換会である。八百長でもない限り、俺のものが紫の手に渡るというのは難しいだろう。

今回のプレゼント交換会は、それぞれのプレゼントを一か所に集めたあと、何かしらで順番を決めて咲夜からプレゼントから渡されるという少し特殊な方式だ。渡すものは咲夜が無作為に選ぶので、大体バラバラになる。もしかしたら自分のものがそのまま戻ってくるかもしれないが……流石にそこらへんは咲夜がいい感じに調整してくれるだろう。

俺たちはプレゼントを重ねて山のようにする。そしたら、参加者は一か所に集まる……のだが、そういえば何で順番を決めるのかを聞いていなかったな。

 

『それじゃあ、順番決めるわよー』

 

少し気の抜けたレミリアの声で、参加者たちが顔をあげる。

 

『順番決めはもちろん……』

 

やはり無難にくじ引きだろうか。だがこの人数だとくじを引くにせよ結構な時間がかかってしまう。こういうのはダラダラとしてしまうのは盛り上がりに欠けてしまう。さて何を……

と、意識していなかったが無意識と感覚が、条件反射が俺の体を回避行動をとらせる。

 

『弾幕で当たった人順よ!』

 

突如襲い来る幻想郷流の洗礼!

すぐさま後方に下がったが、俺がもともといたところにはナイフが突き刺さっていた。そして、弾幕勝負でナイフを扱うものといえば、ここには一人しかいまい。

 

「今被弾したそこの妖精三人、プレゼントを取りに来てください」

 

ナイフを構えたまま、鋭い目つきで俺たちを眺める瀟洒なメイド。回避を取ることができなかった妖精たちがしょんぼりとしながらプレゼントを受け取る。

 

「た、ただの順番決めなんだよな!?」

「あら、定晴さんはこういう決め方は初めてかしら?」

 

非常に余裕そうな体勢で攻撃を回避した霊夢が、しかし咲夜から視線を外すことなく俺に語り掛ける。

さらに室内だからと帽子を外した魔理沙が言う。

 

「人数が多いときは弾幕勝負、幻想郷での常識だぜ!」

「だがやるにしても室内でやることないだろ!」

「定晴様、パチュリー様が結界を張っていらっしゃいますので、周囲への影響は考えなくてもよろしいのです。行動範囲には気を付けてください」

 

既に幻想郷に来て数年経っているが、未だにこうしてたまに新しい幻想郷流に驚かされることがある。他の皆も驚いていないし、観客も盛り上がっているので常識だっていうのは間違っていないらしい。なんなら、パーティといえばの定番企画のようなノリすらも感じる。

宴会のときは酔った勢いで弾幕勝負が始まることも珍しくないので、パーティみたいな厳か場面であればこういう規律のもとで行われる弾幕勝負が見物なのだろう。

 

「しっ!」

 

咲夜から高速でナイフが飛んできて、反応に遅れた数人が貫かれた。本気の弾幕勝負ではないため時間停止などは使わないようだが、それでも咲夜は歴戦のメイドであり、単純な弾幕であってもその物量に回避ができない人は現れる。

因みに、弾幕として飛んできているナイフは本物のナイフではなく、当たってもあまり痛くない玩具のナイフのようだ。とはいえ、そもそもその速度が非常に速いせいで、当たり所によっては傷めることもあるようだ。

 

「ふわぁ!」

 

ナイフに貫かれて声をあげたのはユズ。それに加えて、何人かがプレゼントを受け取りに咲夜のもとへと移動した。

そうして残っていくのは、大妖怪と弾幕勝負に慣れた人間たち。やはりというかなんというか、妖精たちや子供たちは早い段階で脱落してしまっている。

 

「さて、予想通りの人々が残りましたね」

 

咲夜が俺たちを眺めるように見渡して言う。咲夜たちからしても、俺たちが残ることになるのは想定通りらしい。

霊夢や魔理沙、早苗のような弾幕勝負に慣れている人たちと、紫やルーミアのような大妖怪、そして妖夢や文のような素早さに自信のある面子が残っている。

尚、ただの順番決めとはいえ、弾幕勝負に負けるということは幻想郷において各々のプライドを刺激することになるので、そう易々とやられることはない。特に、霊夢たち弾幕勝負自体を生業にしているような人たちは、観客に強さを見せつけるという意味も含めて、無様にやられるところは見せられない。

 

「では、ここからは熱を上げていきましょうか」

 

咲夜の持っているナイフの本数が目に見えて増える。それと共に、今までとは違う軌道のナイフも増え始め、猛者たちの脱落も少しずつ増えていく。

少しずつ弾幕らしい攻撃が増えていき、途中から時間停止なども混ざり始め、早苗や妖夢も被弾し始める。

 

「がっ」

 

そして、ここで俺も脱落。いつも弾幕勝負をするときは、輝剣や結界により弾自体を処理するようにしているので、単純な回避をしなくてはいけない場合はちょっとまだ苦手だ。

そうして少しずつ数を減らしていき、最後の最後まで残り続けたのは……

 

「ふん、私の勝ちね」

「……次は負けないわ」

 

堂々と勝ち誇るのは当代最強の博麗の巫女……を下した俺の式神、ルーミアであった。

 

「貴女、そんなに強かったかしら?」

「最近の私はやる気があるのよ。怠惰なだけの最強には負けてられないわ」

「はぁ、なんで普段着でもないやつに……」

 

そうして霊夢、ルーミアの順番にプレゼントを貰ったところで山は完全になくなった。途中から忘れかけていたが、これはあくまでただプレゼントを交換するための勝負だったな。

霊夢がルーミアに負けたとあって、観客も少しばかりざわざわしているのが聞こえる。霊夢には悪いが、式神が勝ったのを見て俺は少しばかり誇らしい。

 

「定晴ったら、ドヤ顔しちゃって」

「式神が勝ったら誇らしいだろ。紫だって、藍がいい働きをしたときドヤ顔するだろ?」

 

俺の手元には小さな箱、紫の手には大きめの箱があった。少なくとも、紫が持っているものは俺が用意したものではないな。

折角なので俺はここで開けてみることにする。すると中には小さめの本が入っていた。これは……人里で売られている小説だろうか。ルーミアたちも読むのでそれなりに新しい本を買うことも多いのだが、これは持っていない本だ。やはり、新しい本が手に入るというのは嬉しいことだ。

 

「私のは大きな盃だったわ。酒飲みの誰かのおさがりね」

「マイ盃か……俺はそういうの持ってないんだが、幻想郷じゃ皆一つは持っているもんか」

「そうねぇ、宴会が多いから持ってないと不便ってことはあると思うけど、逆にそういうところでばかり飲むから自分のものは用意してないって人もいるわね。基本的に宴会は主催が食器を用意するから」

 

紫の持つそれは、派手でもなく、高級そうなものでもなく、しかしそれなりにしっかりとした作りであり上等なものであるということは分かるようなものであった。

紫はそこまでという反応だったが、人によってはこの場で早速一杯飲むくらいのものではなかろうか。送り主は……ふむ、候補が多すぎて絞り切れないな。

 

「ふふ、皆微妙そうな顔をしてるわね」

「まあプレゼント交換会なんてそんなもんだろ」

 

真にほしいものなど、サンタさんに望めばいいのだ。ここで貰えるのはただの思い出なのである。

 

『さて、それじゃ盛り上がってるところで、今日の楽団に準備をしてもらおうかしら』

 

レミリアの声が響き、端っこの方で演奏をしていたプリズムリバー三姉妹がステージ上に移動してきた。そしてそのまま、アップテンポの曲を演奏し始める。

それに合わせて、今までのゆったりした雰囲気からパーティらしい盛り上がった雰囲気に会場が変化していく。

 

「さて、それじゃ食事の続きを……」

 

プレゼントをスキマの中に片づけて、紫が食事の並んでいる机の方に移動しようとする……瞬間。

 

ぞくり

 

言い得ぬ悪寒と強い危機察知。紫にはさらにはっきりと感じ取れたのか、その視線は真上を向いている。

周囲の人々も、気が付いている人は半分くらい。現在幻想郷の強者のほとんどがここにいるが、そんな皆が殺気を覚えるほどのその主は空の上。

紅魔館の屋根が貫かれる。パチュリーの結界やその他諸々の結界をも貫き、それはそのまま俺の位置に

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