四十九話 惰眠を謳歌する幻想
随分と最近は暖かくなってきたように思える。紫はまだ寝ているのだろうが、幻想郷にも春が来たという事なのだろうか。
春というにはなんというか少し早い時期であるようだが…何かこう、違和感を感じるというか…まあ、突然暖かくなることはたまにあるし、特に問題は無いか。
「うーん…」
「というか霊夢は起きておけよ。急に何かあったら動けないだろ」
「失礼ね、起きてるわよ。ただ、異様なまでに眠いのよね…」
俺は最近博麗神社にいることが多くなっている。そもそも幻想郷内で行くところと言えば基本ここか紅魔館か白玉楼の何処かに絞られるのでどうしようもない。未だに幻想郷の地理を把握していないのであまり遠くに行きたくはないのだ。不定期に幽香には会いに行ってはいるのだが。行かないと幽香が拗ねてしまい暫く口すら聞いてくれなくなるからな。
「れーいーむー…」
「おい、魔理沙。大丈夫か?随分とフラフラしてるじゃないか」
「今までに無い程に眠気に襲われているんだぜ…研究しようにも全然手につかないからこっちに来たんだが…魔法の森が原因じゃないか…」
足取りはおぼつかないし、話し方にもいつものような覇気が無い。つか、どうしてそんな状態でここまで来たのか…魔理沙の家からここまでの道中で落ちなかったのを褒めるべきだろうか。
と思えば魔理沙は無理やり片腕を上に突き上げて宣言した。
「さあ!眠気を吹き飛ばす為に弾幕ごっこだぜ!」
「そんな状態ですると怪我するぞ」
「痛みで眠気を制す!」
だめだなこりゃ。俺は警告したからな。後で何かあっても俺は知らないぞ。
ただどうやらやる気があるのは魔理沙だけらしく霊夢は起き上がる気配すらない。それでいいのか博麗の巫女。
「嫌よ面倒くさい。そんなにしたいなら定晴さんとでもすれば良いじゃない」
「最近したばかりだからな!他のやつともしたいんだぜ霊夢!」
「なら萃香やアリスとしなさいよ」
霊夢が弾幕ごっこの誘いを拒否。まあそうだよな、霊夢は必要があること以外は基本しないし。逆に霊夢が乗ってきてくれると思った魔理沙の方が不思議である。
霊夢の返答が気に食わなかったのか不満を隠すことなく魔理沙は言葉を続ける。
「二人とも起きないじゃないか!」
「ふーん、そう。他の人は?」
「皆寝てるんだぜ。春だからってだめだよなぁ」
もう既に霊夢の返答が適当になっている。というか皆寝ているだと?確かに今日は暖かくて眠たくもなるが、皆が皆寝ているのはおかしくないか?魔理沙の運が相当無かったんだろうな。
「皆って何よ?早苗とか咲夜とか、起きてそうな人は一杯いるじゃない。一部の意見で全体の意見のように話すのは悪い考え方よ」
「それが本当に皆寝ているんだぜ。咲夜は単純に応えてくれなかっただけだけどな。あいつが寝ているところを見たことがない…でも、妖怪の山の奴らは大体寝てたぜ!あそこで起きてるの見たのは白狼天狗位だし、そいつも眠たそうにしてたぜ!ふらふらしてたし見てて危なっかしかったぜ」
因みに言うと先ほどのお前も飛んでいる姿が危なっかしかったぞ。
咲夜はそうだろうと思ったが…早苗とか天狗の奴らは仕事とかあるし起きていると思ったんだがな。本当に不思議である。
なんて考えていたら、突然魔理沙が声を張り上げて言った。
「は!そうかこれは…異変だぜ!」
異変だとなんでもかんでも決めつけるのはどうかとも思うが…
今まで色んな異変が起こってきたと本には書いてあったが、その殆どは博麗の巫女が解決していたはずだ。となると今回の異変とやらも霊夢が解決するのか?
「へー、なら解決してきてよ。私別に困ってないし。このまま仕事もなければ私は楽していられるわー」
「異変って博麗の巫女が解決するもんじゃないのか?」
なんとも適当な答えを返す霊夢に問いかける。
「誰かがお礼として何かくれるのなら考えるけど、特に困ったことも無いなら放置してるわ。実際魔理沙や咲夜とかが解決した異変とかもあるしね」
それって業務放棄って言うのでは?まあ見返りが無いのであれば動きたくない気持ちも分かるのだが、もう少しやる気を出した方が良いんじゃないか?博麗の巫女ってそういう打算的な考えでやるものではないと紫に聞いたような気がするのだが…まあ当代の霊夢がこの調子なら案外やる気はなくてもいいのかもしれない。
しかし魔理沙はじゃあどうするのかと聞いてみたらなぜか魔理沙は俺の腕を掴んでいる。
「なら、いいぜ!私がスパっと解決してやるからな!定晴!来い!」
「え!?俺?」
「霊夢が動かないなら定晴に手伝ってもらうぜ!」
えぇ…それって完全にとばっちりなのでは?とも思ったが、魔理沙は聞いちゃくれないだろうしスルー。ここは流れに任せるままに魔理沙に協力するとしよう。
「そんじゃ行くぞ!」
「霊夢もやる気が出たら来いよー」
「出たら、ね」
こうして俺と魔理沙はこの幻想郷に蔓延している睡魔の原因を調べることになった。