東方十能力   作:nite

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いつもよりちょっと長め


五十三話 欲求の発散

人里を飛び立ったのはいいのだが、なにしろ目的地が決まっていないためほとんど彷徨っている状態だ。何かしらヒントはないものか…魔理沙は何か謎の粒子について知っているだろうか。

 

「さっきの映姫の話を聞いて何か思い当たることはないか?」

「そうだなぁ…うーん、粒子って風に乗って浮遊していくだろ?だから…風関係?」

「風を操る…俺か!?」

 

まさか魔理沙が俺のことを疑っていたとは…映姫の話を聞いた時から俺のことを犯人ではないかと思っていたのだろうか。

 

「定晴のことなんか疑ってないぜ。というか風を使ってる奴なら何か知ってるんじゃないかってことを言ってるんだぜ。風を使う使うやつは別に粒子を作り出す能力なんかないだろ」

「あ、俺じゃなかったのか。無駄にドキッてしただろ」

 

まあ俺は犯人ではないということを自分で分かっているのでドキッてする理由もないのだが。

 

「疑うもなにも定晴が言うまでお前が風を使って飛んでいることを忘れてたぐらいだぜ。風の使い方上手くなったよなぁ」

 

最初は魔理沙に風が乱れて飛びにくいって言われたから必死に特訓した成果が出たわけだな。練習した甲斐があったってもんだ。

おっと、脱線してしまった。風を使う幻想郷住民って誰かいたっけか…

 

「風を使うといえば文だな。あいつは風を使って加速したりしてるから何か知ってるかも知れないぞ。私も文には追いつけないんだ」

「でも妖怪の山のやつらは寝てるって言ってたじゃないか」

「別に動けなくなってるわけじゃないんだから。無理やりにでも起こせばいいんじゃないか?」

 

ゆっくり眠っていたのに叩き起こすのは少し可哀想な気がするが…おっと狂気がやる気になってやがる。基本何もしないし狂気と言うにしては静かなこいつだが、やはりこういったことには興味が沸くのは狂気としての性だろうか。

まあ今の俺たちにはちょっとの情報も欲しいし、目的地を探していたところだ。魔理沙の案に乗ってみるのもいいかもしれないな。

 

「よし、じゃあ妖怪の山に行ってみようか」

 

ちょっと日が傾いてきたな。まあ異変解決に二日以上かけてはいけないという決まりはないので今日で無理やり終わらせる必要はないのだが、影響が大きそうな異変なので早めに終わらせたいところだ。

 


 

いつもより急いだお陰でいつもの三分の一くらいの時間で着くことができた…のだが無断で山に侵入したというのに、すぐに飛んでくるはずの天狗の姿が一切見えない。映姫が言っていたことは本当のようだが、映姫に叩き起こされたという一部の天狗は何処に行ってしまったのだろうか。

まさか睡魔に負けてしまってもう一回寝てしまったなんてことは無いだろうか。そんなことしたら映姫にどうされるのか分からないぞ。もしそうだとしても同情はしない。

 

「魔理沙、天狗たちがどこにいるのか知ってるか?」

「麓に近いところは下級妖怪が住んでいることが多いぜ。天狗みたいに役職とかがある妖怪は山の頂上の付近に住んでいるはずだぜ」

 

どうやら妖怪の山の中でのカーストの三角形がそのまま妖怪の山の高度に関係してくるようだ。なんとも上下関係がはっきりしている妖怪社会である。

 

「なるほど。じゃあ登山すればいいのか?」

「今は哨戒天狗が飛んでないから頂上まで一気に飛んでいっても良いと思うぜ。とはいえ文はそこまで幹部ってわけじゃないから中腹くらいに住んでいると思うけどな」

 

ならば飛んでいこう。それに魔理沙と一緒の場合だと天狗と会っても弾幕で吹き飛ばしてしまいそうだし、何より今は異変解決のために動いている。多少強引にしても問題ないだろう。

 

「よし、じゃあ行くぞ。魔理沙、もし邪魔してくるような妖怪がいたら吹き飛ばしてもいいぞ」

「やった!ついにこの八卦炉が火を噴く時がきたぜ!」

 

魔理沙もやる気になったみたいだ。今まで調査ばっかだからそろそろ溜まったストレスを発散させないと、暴れだしそうで正直怖い。魔理沙には勝ったことがあるが、あれは不意打ちやら急襲やらが上手くいったからで、もう一度戦ったら対策されていてボコボコにされる…なんてこともあるかもしれないしな。この山の妖怪たちには犠牲になってもらおう。

 

「定晴!早く来い!」

「はいはい」

 

全く、魔理沙は少し子供っぽいところがあるな。あんだけ物静かな霊夢とは対照的で、霊夢と同年代だとは思えない。霊夢は霊夢で子供っぽいところが無いわけではないが、魔理沙のようにここまで分かりやすく発現することはない。二人は環境が違うから当たり前といえば当たり前ではあるのだが。

ただ総じて二人とももう少し落ち着きがあればいいのだがと思ってしまうのは俺だけだろうか。

 


 

たまに出てくる眠そうにしている妖怪を吹き飛ばしつつ(にとりのような姿が一瞬見えたが魔理沙が吹き飛ばした。一言も発することもできずに吹き飛ばされる妖怪たちを少し不憫に思うものの異変解決中の魔理沙の前に出てしまえば戦闘になるのは必須のはずなので申し訳ないが諦めてもらう。

そんな中山を登っていると魔理沙の弾幕を避けて近づいてくる一匹の妖怪と出会った。若干眠そうであるもののその動きには他の妖怪と違ってキレがあり魔理沙の適当に放っている弾程度なら問題なく避けることができている。

 

「ちょ…ちょっと待ちなさい…」

「お?あ、お前は白ワンコ!」

「犬じゃなくて狼です!それに椛っていう名前もちゃんとあります!」

 

魔理沙の言葉に反論する椛。狼…白狼天狗だろうか。白い毛で覆われた狼であれば白狼に違いない。まさか灰にまみれているというわけでもないだろうし。

天狗は動物型のやつもいると聞いたことがあるが、実際見てみると…動物好きなやつが見たら襲っちゃいそうだな。分かりやすく立っている尻尾。それでいて剣と盾を装備していて、臨戦態勢といったところか。

 

「あー、何か今の突っ込みで眠気が覚めた気がします。よし、よし…さあ!行きますよ!」

「よっしゃ!来い!スペルカードは三枚だぜ!」

 

魔理沙の使用スペルカード枚数の宣言と共に二人が構える。

 

山窩【エクスペリーズカナン】!」

魔符【スターダストレヴァリエ】!」

 

おっと、早速弾幕ごっこが始まったか。魔理沙も随分と楽しそうだし、雑魚ばっかじゃ飽きてきただろうから良いタイミングだ。俺は離れて戦いを見守ることにした。美しさを勝負する弾幕勝負で乱入というのは無粋なのである。

 

 




定晴は狂気がノリ気の影響で考え方が少し過激になってます。
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