東方十能力   作:nite

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五十四話 天狗の家

意外にも…ということもなく予想通り、決着は比較的早くついた。魔理沙が放ったスペルカードが椛に直撃し気絶。そのまま森に落ちていきそうなところを受け止めた。狼とはいえ天狗の仲間なんだし、文の居場所を知っているかもしれない。

とはいっても気絶したままだと会話もできないので能力で回復させる。目覚めた時にまた攻撃してきたら今度は俺が気絶させるけどな。うまい具合に拘束できるようになれないだろうか…

 

「う、う~ん…」

「お?起きたな」

 

数秒再生をかけ続けたらすぐに起きた。気絶程度ならすぐに回復させることができるのはとても使い勝手の良いと感じている。

 

「負けた…?」

「魔理沙との弾幕ごっこで見事にスペルが当たって気絶してたんだ」

「へー、そうなんで…!?」

 

少し眠気眼で周囲を見回していた椛だったが、俺に気づくと突然顔を赤くして飛び起きた。俺って何かしたっけ?って思ったけど、今思えば挨拶すらしてなかったな。会ってすぐに弾幕ごっこを始めてしまったから自己紹介すらしていない。流石に喋ったことがない人に抱えられては嫌なのは当たり前か。

 

「すまん、俺は堀内定晴だ。回復させてもらった」

「へ?あ、私は犬走椛です」

 

魔理沙が椛のことを犬だとからかっていたが…苗字に犬という漢字が入っているのであながち的外れな揶揄いでもないように思える。

 

「起きて早速で悪いんだが、文の居場所を知らないか?」

「え?いや、侵入者に教えるわけにはいきません!」

「そうか…」

 

教えてくれないなら仕方がない。また襲ってこられても困るし、もう一回気絶させておくか。

 

魔術【五つの属性】

 

今度は俺が放ったスペルが椛を襲う。俺から急いで離れた椛は必死になって弾幕を避けながら叫ぶ。

 

「分かりましたー!教えますから止めてくださいー!」

「ん?そうか…スペルブレイクっと…」

 

荒い息をしながら椛がこっちにやってくる。睨んでるようにも見えるが気のせいだと信じたい。

 

「文さんは自分の家で寝てますよ。家は向こうの方です。ここから近いのですぐに分かると思います」

「ありがとな。最初から教えてくれれば戦闘しなくても済んだのに」

「業務上侵入者は追い払わないといけないんです。私が定晴さんたちを通したと知られたらめちゃくちゃ怒られるだろうなぁ…」

 

椛が遠い目をしている。だがそんなこと知ったこっちゃない。こっちだって異変解決の為に動いているから多少の犠牲は払おう。今回は関係なさそうなやつの犠牲だが。

幻想郷流の決闘方法とはこういう外の世界では毎回文書で提出しないといけないようなことをすぐにその場で解決できるという点で非常に優れている。まあ力ずくと言うとそこまでだが。

 

「取り敢えず文の家に向かうか。魔理沙、行くぞ」

「了解だぜ」

 

椛と別れて俺達は文の家に向かって飛んだ。

 


 

山に沿って飛んでいるとポツポツと建物が増え始め、しばらく行くと文の家を見つけた。途中から一軒一軒標識を確認するという手間のかかる作業となったが、六軒目でやっと射命丸文の文字を見つけた。

家の前に立ち、魔理沙が大声で名前を呼ぶ。

 

「おーい!文ー!いるかー!?」

『……は~い?』

 

扉の反対側から文の声が聞こえる。ずっと寝ていたのかいつもより声が延びているように感じる。

少しずつ足音が近づいて来て、ガチャの音と共に扉が開かれる。

 

「はいはい、どちら様ですか?」

「よ!烏天狗!」

「おはよう、文」

 

やはり寝ていたのだろう。髪の一部には寝癖がついており、服はゆったりとしていて、顔もどこか眠そうだ。いつもの文は元気があって言葉もハキハキと話すだけあっていつもとのギャップがすごい。

 

「あー、魔理沙さん。と…さ、定晴、さん?」

「ん?どうし…」

 

言い終わる前に扉を閉められてしまった。

しかも、それはもう強く閉めすぎて風が発生している位だ。流石天狗…なんて言っている場合ではない。

そういえば俺は天狗に嫌われているんだったな。侵入の前科持ちだし。警戒対象となっていてもおかしくはない。

扉の前でしばらく待っているとドタバタと物音が聞こえ、もう一度扉が開く。

 

「は、はーい。何の用ですか?」

 

今度の文は服装と身嗜みを整え、幻想郷でよく見る姿で登場した。まだ少しだけ髪が跳ねているところもあるが、そういうところはご愛敬である。

若干の焦りも見えるが…多分取材に行こうと思っていたが異変のせいで寝過ごしてしまい、急いで準備した…といったところか。

 

「文、今幻想郷で異変が起きていることは知っているか?」

「え?あー、はい」

 

一瞬何のことか分からないという顔をしたが、こんな時間まで眠ってしまったことこそ異変かと気付いたのか肯定の意を返した。

 

「それでな、映姫によると空気中に粒子が浮いていて、それが原因で引き起こされているらしいんだが分かるか?風に乗ってるんじゃないかと思ってな」

「粒子…」

 

文は俺の話を聞き少し考える。粒子の正体が分かれば万々歳なのだが、文は粒子を操る能力ではないらしいし、駄目元で質問していることを忘れてはいけない。

数秒ほど待っていたら文が口を開いた。

 

「粒子が何なのかは分かりませんが、風に飛ばされているのだとしたら向こうからですかね。分かりにくいですが弱い風が向こうの方から流れてきています」

 

そう言って文が指さしたのは人里…の更に向こう側だった。人里の奥にあるものとすれば…

 

「迷いの竹林か太陽の花畑か…」

 

月の人々が住む竹林と花の妖怪が住む花畑の二箇所である。永琳や鈴仙とは気不味い別れ方をしたため当分は会いたくない。が、犯人がその二人を含む兎集団だったら行かなければならないことになる。

ただ太陽の花畑が原因だったらほぼ確実に幽香が犯人ということになる。まさかあいつが異変を起こそうと思っているとも思えないのだが…

 

「定晴?なんでそんな思いつめたような顔をしているんだ?」

「ん?いや、な。どっちに行こうかなと…」

 

俺は今嘘をつきました。只々永琳達と会わずに済む方法を模索していただけだ。ま、そのおかげで取り敢えず向かう先は決まった。

まずは太陽の花畑に向かう。そこが原因だったら終了。花畑が違ったならば竹林に向かう。が、大方は魔理沙に任せる。竹林も違ったならば更にその奥の行ったことのない場所まで足を運ぶ必要があるのだが…その時に考えればいいか。

 

「よし、魔理沙。まずは太陽の花畑に向かうぞ」

「花畑って…幽香がいる所か?」

「ああ、そうだが」

「そ、そうか…」

 

魔理沙の声に覇気が無い。というか全体的にさっきより元気が無い。どうしたのかと聞いてみたら魔理沙は幽香にボコボコにされたことがあるらしい。しかも魔理沙の十八番のマスタースパークで。

幽香がマスタースパークを使えることにも驚きだが、あの魔理沙をボコボコにって…もしかしたら俺も負ける可能性が出てきたな。霊夢であれば勝てるのだろうか。彼女は今映姫にコンコンと説教されているところだろうけど。

 

「それ、行くぞ魔理沙。文、情報ありがとな」

「は、はい。え、えっと…さっき見たことは忘れてくださいね?恥ずかしいので…

「ん?なんだ?」

「いえ!別に大丈夫です!それでは私は取材に行ってくるので!それでは!」

 

なんとも慌ただしく飛び出していったな。そこまで取材に命掛けるとは…流石ジャーナリストと言ったところか。

それはともかく。まずは魔理沙と共に花畑に向かうことにしたのであった。

 

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