紫に続いて俺もスキマから出る。俺の目の前には博麗神社が建立されていた山の何倍もある巨大な山があった。一部には岩肌が見えているが、滝も遠目から見える。
また近くの山からは煙があがっていた。まさか幻想郷にも火山があるのか?
「とりあえず定晴に幻想郷をざっくり案内するわね」
「あ、ああ宜しく頼む」
確かに家を建てる場所を決めるのには手っ取り早い方法だ。その土地がどんな特徴を持っているのかを知ることでどこがベストなのかも分かるし、俺も判断しやすくなる。
「まずここは幻想郷で一番大きな山で妖怪の山っていうのよ」
「妖怪のっていうことは妖怪が沢山いるってことなのか?」
「ええ、ここでは天狗が大きなコミュニティをつくっているの。だから基本的にここの中には入れないの」
じゃあ何故俺をここに連れてきて紹介したのだろうか。山に入れなければ家を立てるとかそういう話ではなくなるだろう。
「勿論コミュニティの中の幹部や大天狗と仲が良かったら入れるかもしれないけど。因みにちゃんと天狗以外もいるわよ」
「どのみち選択肢からは除外だな。そもそも山の中に建てると行き来が面倒だし」
よく見ると空を飛んでいる影がちらほらと見えるから、紫が言ったように見回り等がいるのだろう。でもそんな場所だからこそ入りたいという願望もある。だめだよと言われると入りたくなるあれだ。
どうにかして入ってみたい場所ではある。
回りを見渡して見ると大きな湖が背中側にあることに気付いた。
「なあ紫、向こうに見える大きな湖はなんだ?」
「あれは霧の湖っていっていつもは霧で覆われているのだけどね、今日は晴れているわね」
「見通しが悪そうだから却下かなー」
湖が近いと水には困らない。なんせ幻想郷には水道がないので水源が必要になるのだ。最悪奥の手もあるが無闇に使う必要はない。
しかし見通しが悪いのは少し厄介なのでボツ。
というか向こうからとてつもなくデカイ魔力や妖力を感じるから出来るだけ避けたいのである。でも夏とか涼しそうだ。
「まあ家を建てるなら人里がいいんじゃないかしら」
なんだ人里があるなら最初から言って欲しい。そりゃ周りに人がいるならそれに越したことはない。
「ならそこに行ってくれ」
そうして二人でスキマに入る。でも人里よりは森とかの方が刺激があるかなとは思う。まあ住みやすい方が楽だろうけど。
妖怪の山の山頂近く、天狗の長がいるその場所にて…
「天魔様!」
「なんだ?」
「先程賢者様が麓に来られたのですが、同時に巨大な霊力が感じられました」
「博麗の巫女では無いのか?」
「博麗の巫女は只今神社に居ると射命丸から報告がありました」
「ふむ、その霊力には警戒しておけ」
「分かりました」
「犬走、他の者にも連絡しろ」
「はい!」
人里に来た俺達はそこをまわることにした。
人間たちが活気溢れる様子で仕事をしている。商いの人に誘われ通りがかった女性は足を止める。外の世界の商店街とそこまで変わらないな。
人里以外に家を立てることになっても売買はここですることになりそうだ。
「確かに平和な場所だな」
「顔が知れている妖怪も入ることが出来るのよ。まあバレるといけないのだけど」
「へー」
しかし、妖怪だけではないようだ。さっきから自然エネルギーを感じるし、少しだが神力も感じる。つまり紫が目指した人妖が共存出来る世界を具現してるわけだな。
「待て!」
「ん?」
突如後ろから止められる。後ろを振り返ると一人の女性が立っていた。青い髪をした人間…?少し違和感があるのはなんだろう。
「お前、見ない顔だな。紫殿、こちらは誰なんだ?」
「彼は私の…彼氏よ♪」
「おい!嘘つくな!あー、俺は堀内定晴。紫の友達なんだ」
紫が変なことを言うので否定しておく。紫はこうしてたまに俺のことをイジってくるのでそれだけは辟易してしまう。
「私は上白沢慧音だ。すまないな威圧的な態度をとってしまって。紫殿が同行してるということは何か問題があるのかと思ってしまってな」
「いやいや、その様子だと守人かなんかだと思うし。知らない人を警戒するのは当たり前だ」
慧音の謝罪は不要なものだ。人間をまとめるにはある程度の警戒も必要であるということは俺も理解している。
俺が気にしていないことに安堵した様子で俺達に質問をしてきた。
「何の用で、ここに来たんだ?」
「住む場所を決めようと思って」
「うーむ、そうか…」
そう言うと黙ってしまう慧音。もしかして悪いタイミングだったのだろうか?
「実はな…」
慧音から現在の人里についての状況を聞かされた。
慧音の話をまとめるとこんな感じで…
・今人里にはそもそもあまり場所がないこと。
・今人里は工事している所が多いこと。
・今人里に入ってくる外来人が多いこと。
・そのせいで今住める場所がないこと。
ざっとこんな感じだ。
「じゃあ必然的に除外か…」
「本当に申し訳ない。その分人里に来たときは手助けさせてもらうよ」
「いや、いいんだ」
さてどうしたものか。やはり霧の湖にするべきなのだろうか。他に良いところが無いかと周囲を見渡してみる。するとここから博麗神社のある山は見える事に気付く。よし!
「なあ紫、ここと博麗神社の間のどこかにしてくれないか?どちらにも行きやすいようにな」
「それでいいの?」
「ああ。折角だし刺激を求めて森の中にしてみるよ」
「ならいいわ。霊夢と仲良くしてね♪」
こうして俺は、博麗神社と人里の間の森に住むこととなった。妖怪もいるというのである程度間引く必要がありそうだな…