東方十能力   作:nite

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六十六話 山と厄神

到着。

一年を通して彩られてるこの山は、多くの妖怪が住んでいる。その筆頭といえば、異変中はほとんど見ることがなく、異変が終わった今ではその分を埋めるように山の周囲を哨戒している天狗だ。

この山の統率を取っているのは天狗の長だ。名前は知らないけどな。そもそも妖怪の種族名はあっても個体名はないことが多い。種族名というのは、妖精、天狗、河童などのことだ。個体名というのが、チルノ、文、にとりといった名前のことだ。種族名は人間が勝手に呼んでいるもので、個体名は妖怪たちが勝手に名乗っているものだ。

それに対し紫は同じ種族がいない唯一無二の妖怪だ。そして種族名もない。他からはスキマ妖怪と呼ばれているし、人間からも同じように呼ばれているが、真名というものは無く紫自身もよく分かっていないらしい。

まあ紫は突然変異で生まれた個体で、能力が強すぎた故にそう呼ばれているからもしかしたらどっかで同じような妖怪が生まれてるかもしれない。まあ確認する術がないから分からないけどな。

話が逸れてしまったが、ここでの依頼は哨戒天狗の援助だ。

一度俺を罪人として扱っている天狗たちが俺に依頼を頼んでくるとは驚きだが、それほど手が回っていないんだろうな。

人里でもそうだったが、一日休むだけでこんなにも影響があるものかと驚かされる。もし外の世界の行政機関が幻想郷のように一日でも休んだら日本は終わるだろうな。そう考えさせられるほどの影響力だ。

依頼内容は簡単で、暴走状態の妖怪の鎮静と哨戒だ。人里と同じく今回の被害の大半は眠らなかった弱い妖怪たちの暴走のようだ。眠らずとも活動できる妖怪は寝ていない。というかいつも寝ていない妖怪、の方が正しいか。天狗たちも寝なくても良い筈なのに寝ていたというのはそれが原因だろう。

山の周囲を飛びながら下を見ていたら一人で歩いてる人影を見つけた。

 

「お、さっそく発見。」

「ん?」

「妖怪じゃー!狩れー!」

「キャー!」

 

俺が見つけたのは、暴走状態の妖怪ではなく…

 

「いったーい…久しぶりに会ったと思ったら突然襲ってくるなんてひどいじゃない。」

「雛がボーっとしてるのが悪いんだろ?」

 

鍵山雛。妖怪の山に来た時に最初に会った子だ。見た目は俺より幼そうだが、幻想郷において見た目など全く意味を為さない。それは俺もよく実感した。

だってフランやレミリアなんて幼稚園生か小学生レベルの背の低さなのに五百歳近くあるんだぞ。それほど見た目というのは当てにならない。

 

「何しに来たの?聞いたわよ、貴方あの後山に入って天狗に捕まったんだって?」

「萃香に助けてもらったよ。天狗全員を吹き飛ばすなんてしたくなかったしな。ありがたい限りだ。」

 

そして雛は俺を上から下までじっくりと観察する。因みに今は前回程近くは無く、かといって遠すぎると感じない程度の絶妙な距離で話している。流石にあれは脅すような距離だった。後悔はしていない。

俺を観察し終わったのか雛は少し思考している。

何の種族なのかはよく分からないが、厄を受け取って身を清め、周囲の人たちに不幸ができるだけ訪れないようにするのが本元だろう。

そのせいで雛の周囲には厄が常に溜まっており、近づくだけで自らも厄を受け取ってしまうから雛は自発的に離れて会話をしていたといったところか。

前回は考察をしなかったが、考察してみると新たな発見や思い出すこともあるから知らない妖怪に会ったらこうして考察するのが俺の密かな楽しみである。

考えがまとまったのか雛は顔をあげ俺に尋ねてきた。

 

「貴方って人間なのよね?霊力で動いているのは分かるわよ、分かるんだけど何か霊力が随分と他の人と違うから…」

「人間だ。霊力に混ざってる色々っていうのは多分俺の能力の影響だ。例えば今は厄を払うために浄化を使用しているから霊力にも多少そういうのが混じる。」

「ふーん。前回は逃げちゃったけど、なんか人間より妖怪みたいな感じがして来たからもうそんなに怖くないわ。」

 

やっぱり怖がっていたのか。突然来て、山に入れるよう。脅すやつなんて怖いに決まってる。あの時は暇つぶしで来たから、あれで駄目だったら引き下がっていたが。

 

「今回は何しに来たの?」

「天狗たちの援助、どうやら色々面倒ごとが起きているようだからな。」

「そう。頑張ってね。」

 

前回あんなことをしてしまった割には随分と友好的に話してくれるなと驚きつつ、雛と別れ山を登ることにした。

 

 

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