東方十能力   作:nite

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前回の題名を書かずに投稿していたようで、それに気づかず数日…すみませんでした。



六十七話 秋の神と初夏の出会い

今回は山に入っても良いよという天魔からの許可を貰ってるため、コソコソしなくても自由に行動できる。やはり自由というのは気持ちのいいものだ。

頭上では絶えず天狗たちが哨戒しているため、俺は歩いての移動となる。なにせ妖怪の山は木で覆われているため空から見ても分からない箇所が多々あるのだ。天狗たちはあまり歩くのは慣れていないようで歩くと結構早い段階でバテテしまうらしい。ので、体力のない天狗に代わって俺が歩いて妖怪を探している。

しばらく歩くと正面に煙が立ち昇っているのが見えた。そこまで遠くはない。

 

「山火事か!」

 

急いで煙の根源に向かうと、そこでは二人の少女が魚を焼いていた。結構多く煙を排出しているが、周囲の葉などはどかしてあるため安全には気を付けているようだ。

ひとまず山火事ではなかったのに俺は安堵した。なにせ異変の時に河童が一度火事に巻き込まれているのを間近で見てしまうと、どうしても心配になってしまう。

それにしても…この二人は河童や天狗ではないようだし、そもそも妖力を感じない。そしてその代わりに感じるのは神力。つまり、彼女たちは神様、もしくは神に準する者だということを示している。

取り敢えず挨拶をする。こんなところにいる理由も聞きたいしな。

 

「よう。何を焼いているんだ?」

「キャ!突然後ろから話しかけないでよ。吃驚するじゃない。」

「おっと、それはすまないことをした。」

「というか貴方人間でしょ?何でこんなところにいるのよ。危ないから山を降りなさい。」

 

この山の住民というのはまず最初に何で俺が、というか人間が山に立ち入っているのかを聞いてくる。

それが迷子なら麓まで案内しないとだろうし、不法侵入者なら排除しなければいけないからだろう。排除といっても殺すわけではなく気絶させて強制的に山から降ろすだけだろうけどさ。そもそも妖怪に襲われるかもしれないから規制をかけているんだし。殺してしまっては元も子もない。

それにしても彼女たちは何を焼いているのだろ。直火で焼いているのでは無く、葉で包んだ状態で焼いている。いわゆる包み焼きという方法で焼いているようだ。旨味や熱が逃げにくく、匂いも閉じ込め食材に風味を付ける効果もあるので色んな食材で応用できる万能な焼き方だ。

その代わり俺は何を焼いているのか分からないのだが。直接訊いてみるとあっけらかんと答えた。

 

「魚よ。そこで釣れた。」

「この時期の川魚といえば…サクラマスか?」

「魚の名前なんて知らないわよ。取り敢えず食べられるようだったから焼いているだけ。焼けたら食べるわ。」

 

どうやって名前も知らない魚が食べることができると知ったのだろう。ここら辺は川が多くいので、そこらへんの川で生活している妖怪にでも訊いたのだろうか。

というか名前すら知らない魚をよく食べる気になったな。正体不明の食材を食べるのはやはり勇気がいるものだが…

そこで、俺は挨拶をした後に自己紹介をしていないことに気付く。

 

「俺は堀内定晴っていう。よろしくな。」

「私は秋穣子。」

「秋静葉です。姉妹なんです。」

「そして秋の実りの神なのよ!」

 

穣子が誇らしげに胸を張る。それにしても秋の実りとな…服は紅葉らしき柄がかいてあるし、名字が秋だからなんとなく秋関係の神様だとは思っていたが、秋の実りとなると結構多くの人に信仰されていそうだな。

にしても秋か…

 

「秋の神様は出てくるには早くないか?今初夏だぞ?」

「神だってその季節以外は消えてるなんてこと出来ないのよ。リリーホワイトやらレティ・ホワイトロックやらだって春や冬だけってわけじゃないでしょう?それと同じ。私たちも秋以外はここら辺でひっそり生活してるのよ。」

 

なるほど…確かにごもっともだ。聞いた話によるとレティは彼女たちと同じように妖怪の山にある涼しい洞窟で生活しているらしい。冬を象徴するような妖怪ではあるが、冬以外だって生活をしないといけないだろうからそうやって自分に都合のいい場所を選んで生活をするのは、一つの生存本能のようなものなのだろう。

だがリリーホワイトってのは誰のことなのだろう。多分まだ会ったことがないはずだ。静葉の口振りからして春の象徴の妖怪なのだろうけど、今年の春は何かと忙しくてあまり幻想郷をまわれていないから会えていないのかもしれない。レティもリリーもホワイトが名前に入っているのは単なる偶然か。

この二人は特に問題はなさそうだが、それでも俺は尋ねるべきことがある。

 

「一つ質問いいか?何か困ったことは起きていたりしないか?それか困ってる奴とか見てたり…」

「何故?」

「今回は臨時で呼ばれてるからさ、ここで自分が有能なことを知らせればまた呼んでもらえるかなって思ったからだ。」

「ふ〜ん。姉さん、何か見た?」

「そうねぇ…」

 

それから二人は思い出そうと頭を捻ったが、返ってきた答えは【知らない】というものだった。まあ無理やり困ってる奴を作れとは言わないし、問題事がないなら無いで安心できる。問題事があり過ぎてもこっちが困ってしまうからな。平和に過ごせているのならこちらから言うこともないだろう。俺は映姫じゃないので説教をしたりする気も無いし。

起こっている問題について有力な情報は得られなかったし、二人はこれから食事をするだろうから俺はさっさと立ち去ることにした。

 

「そうか。ありがとな。二人とも気をつけてな。」

「山の上の神程ではないけど、私たちもそれなりに力はあるから心配しなくても大丈夫よ。」

「ならいいか。それじゃあな。」

 

秋の神と別れ初夏の暖かいと熱いの中間くらいの空へ飛び立つ。

でだ。何で俺があんな質問をしたのかには色々と理由がある。さっきも言った通り名を挙げたいというのもその中の一つである。他の理由はそれなりに信頼を得たいというのもある。というのも、前々から分かっていたことだが最近になって金銭的な問題が発生したからだ。それなりに貯蓄があるし、妖夢の剣術指導でもお金を貰っているから今すぐに深刻化する問題でもないのだが、幻想郷では何が起きるか分かったもんじゃないからな。金銭はあったに越したものはない。

幻想郷のお金は外の世界とは違うから、幻想郷でのいくらが外の世界での何円分なのかもパッと計算出来るわけではないが、少なくとも外の世界のお金に換算して百万程度は貯蓄しておきたい。

百万欲しいと言うと周囲からは強欲に見えるかもしれないが、日常的な生活を何不自由なく送るにはこの程度の金を貯めておくのが万が一何か起きたときも対応できるから丁度いいのだ。ちょくちょく霊夢たちが食事しに来るからそのためにも貯めとかなければならないしな。

とどのつまり、何かしら仕事が欲しい。外の世界ではなんでも屋みたいなことしてたし、幻想郷で広く知られて手に職を付けたい。経験だけはあるから幻想郷でどんな仕事に就けるのか楽しみだ。

まあそういうことなので、仕事を得るためにも今回の異変の後始末だって無駄にはできないのだ。名を挙げて仕事を得るために俺は妖怪の山を歩いて援助が必要なことを探す。

 




アンケート終了は後日談が終わって三日後ぐらいです。

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