東方十能力   作:nite

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六十九話 異変完全解決

山の斜面を登っていく。特に声は聞こえないし、困っていそうな妖怪や人間も見当たらない。これは本格的に終了した合図だろうか。

どのみち俺の行き先は天魔のいる御殿だし、終了なのであればすぐに別の場所に行くのだが。

妖怪の山の後は太陽の花畑だ。幽香は今回の犯人だし、ぶっちゃけ被害は全く出ておらず花畑近くの妖怪が寝た事で荒らされる心配がなかったらしいので明らかに行く必要はないのだが、幽香本人に呼ばれたことを映姫に伝えたところ…

 

「異変解決の後始末として纏めて終わらせてきてください。」

「マジですか…」

「マジです。そもそも風見幽香と対等に話す事ができる人妖は幻想郷でも数少ないのです。被害のあった場所の対処と共に対応してきて下さい。」

 

と言われ向かうことになっている。幽香が何に困っているのかわからないが、多分ビニールハウスに関してだろう。あくまで推測だが。

 


 

結局その後も特に問題はなく、天魔に報告したところ山に入るのは遠慮してもらいたいが、もし入ったとしても突然襲ったりはしないとのこと。

前回は暇潰しで侵入したが、正直これから山に立ち入ることなど依頼を受けた時ぐらいだろう。無理やり侵入することもないだろうしな。自由に行動できる範囲が広いのは俺としてもありがたい事なのだが。

まあそんなこんなで妖怪の山を出発した俺は太陽の花畑へ向かう。

妖怪の山から太陽の花畑を見ることが出来る(幻想郷で一番高い山だし当然といえば当然であるのだが)のだが、距離は見た目以上に遠い。行く過程で何か揉め事や厄介ごとがあれば順次解決していく方式でいいだろう。

 

「思いのほか平和だ…」

 

順次解決方式をとったはいいけど、結局何もなかった。妖怪も人間も誰一人として見なかった。異変の後始末のために各々で動いているんだろうけど、それにしても誰もいない。もしかしたら幽香の妖気に当てられて逃げたか?そこまで好き放題妖気を放つようなやつではないと思うんだがなぁ…まあ何故か幽香は幻想郷において恐怖の対象になっているようだし、単純に怖くて逃げたのではなかろうか。

しばらく飛べば、遠くに見えていた小さい黄色い点が大きく、そしてその正体が向日葵だったことに気付く。未だ満開とまではいかないが、それでも向日葵らしい大きな花を無数にのぞかせている。

そして依頼主である幽香は、最近手に入れたビニールハウスの近くに立っていた。農家のような麦わら帽子と作業服を着て。

 

「おーい幽香ー、来たぞー」

「あら?定晴、やっと来たわね。遅いわよ。」

「ここってそれなりに距離あるから、色んなとこ行ってから来たんだよ。」

「最初に来てくれなきゃ、私またビニールハウス取っ払って花粉まき散らすわよ。」

「それは止めてくれ…」

 

見れば、目に見えるレベルで花粉をまき散らしていた眠り花たちは静かになっていた。きっと受粉の時期が過ぎて成長段階に入ったのだろう。幽香の脅しもあくまではったりのようだ。

そもそも幽香は戦闘好きではあるが、その根源にあるのは花を大事にする思いである。花々に何もしなければ何もしてこないし、こちらが花を大切にしていれば幽香の方から歩み寄ってくることもある。花畑に近付くだけで攻撃されるっていうのは、今ままで近付いてきた奴等が大体花を踏んだり茎を折ったりするやつで、それを警戒してのことだという。幻想郷でも初期の頃はそういったやつが多かったのだろう。所謂経験則だ。

 

「で、依頼ってのは何だ?」

「私たちが戦った場所の整地よ。あそこは戦って分かったけど、結構いい土壌らしいのよ。だから次の畑はそこにしようと思って。」

「あれ、幽香って作物も育ててるんだな。てっきり花だけかと。」

「まあ、そう思うだろうけど、作物育てるのも結構面白いものよ?今日のこの格好だって農作業用の恰好だしね。」

 

戦闘中に土壌の良し悪しを判断するとは、さすがフラワーマスターである。能力は花を操ることではあるが、花を大切にする彼女が花を無理やり動かしたりすることはなく、もっぱら花の調子を調べることに使っている。

今回はその応用で、戦ってた土地に育っていた植物の状態を判断して土壌の調子を診たのだろう。本当にこういうことに関しては器用なことをする。

幽香として、できるだけ植物には適した環境を作りたいのだろう。だから今回依頼という形で俺に手伝いを頼んだわけだ。ちなみに依頼報酬は終わったあと決めるとのこと。時価でっていうのはあれだが、友人なんだからタダでして!って人もいるのだし、ここは良しとしよう。

そもそも幽香が用意できる報酬など、大体予想はできるのだが…

それはともかく、テキパキと作業をする準備を整えていく幽香。俺はどこに何があるのか知らないので傍観するだけだ。

と、準備が終わったらしく声がかかる。

 

「さ、やるわよ。定晴。」

「まずどうすりゃいい?」

「私が土壌を整えておくから、貴方は柵を立てておいてくれる?つる植物が育つように、全方向にお願いね。」

「はいはい。」

 

予想していた事ではあるが、幽香の悩みは異変関連ではない。しかし、魔理沙や霊夢たちが他の場所の解決に行ってくれてるのでここで作業をしていても特に問題はないだろう。

幽香に言われたとおり、枠で区切り柵を立てていく。畑の守護用ではなくつる植物が育つための比較的細く長い柵だ。それに柵と言っても名ばかりで、木を軽く組んだだけのものに近い。それなりに頑丈ではあるが、突風などが吹いたときはどうするのだろうか。幽香のことだし何かしら策は練ってると思うが。次ここに来る頃までには何かしら対策をしているだろう。

グルッと一周柵を立て、後は内部を四つに区切るだけとなった時、幽香から声が掛かった。

 

「定晴、今回の依頼報酬に関してなんだけど…」

「その時決めるって聞いたが?」

「考えてみたんだけど…ここで出来た食材ってのはどう?」

 

なるほど…俺は現在今のように依頼をして手に入れた報酬と外の世界から持ち込んだ財産で生活しているが、いつかは尽きてしまうだろう。今は何でも屋として依頼を受けて生活しているが、そろそろ定期的に収入が入る仕事を探そうと思っていたところだ。その中で食費や生活費に所持金を割いてしまうのは出来るだけ避けたい。だから幽香のこの提案は正直凄いありがたい。

俺は幽香の提案に快く応じた。

 

「なら決定ね。いつになるのかは分からないけど、別に定晴がすぐに幻想郷を出て行くわけではないんでしょう?」

「まあその予定だ。少なくとも数年でどっか行くということはないだろうな。」

「それでいいのよ。もうこれ以上あまり離れたくないし。」

「ん?何か言ったか?」

「ほんと、都合のいいんだか悪いんだか分からない耳ね。」

 

幽香の声が小さくて何て言っているのかは分からなかったが、それよりも今は仕事だ。

四方に区切った柵の内部を四つに分けていく。育てる作物で分けるそうだ。

実は同じ土壌で育てているのだから区切ってもそこまで意味はないのだが、それでも柵があれば何を育てているのか分かりやすいし問題はない。

更に看板を立てていく。そこにはまだ何も書かれていないが、何をするか決まった時にでも書くのだろう。人里の愚かな人間がこの畑に手を出そうとしても、看板に幽香の名前が書いてあれば勝手に引くだろうと言う算段だ。

そもそもここら辺に人間が来ることは滅多にないし、来たとしてもそれは畑狙いではなくて幽香との勝負だとか迷った時とかで、わざわざ自ら藪をつつくようなことはしないだろう。

一通り終わり、時刻は五時半。流石に暗くなってからでは危険度が増すし、きっと今頃ほとんどの問題ごとは霊夢や魔理沙が解決しているだろう。あの二人のことだから解決方法は聞いてはいけない。

取り敢えず今日の分のお礼ということで幽香の家で夕飯を食べることとなった。といっても作るのは俺だが。幽香は俺の料理の腕を知っているので任せたのだろうが、俺より上手い人なんて世の中には溢れ返っているだろうけど。何度言っても幽香は俺が一番美味しいと言う。それは嬉しいのだが、切磋琢磨して磨いてきた料理人もいるのだし、実際俺はそういったところで依頼を受けたこともある。だから俺としては複雑な心境だ。

結局その夜は幽香と一緒にご飯を食べて別れた。帰る途中に慧音と話して、霊夢たちが問題ごとを解決したと聞いた。つまり異変の後始末は一日で終わったわけだ。

これで今日は不安もなく寝れる。昨日だって不安があったわけではないのだが。

これで異変は晴れて、全て解決したのである。

 




すみませんグダグダと…今回で異編は終了です。
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