東方十能力   作:nite

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七十一話 黒猫

博麗神社へとやってきた。幸いな事に未だに雨は降っていない。

地底に降りる穴がどこにあるのか分からないため霊夢に訊きたいのだが、どこを見ても霊夢は見つからない。もしかして入れ違いになってしまったか?その場合紫を呼ぶのだが…

とそこへ、一匹の黒猫が奥の方からやってきた。猫特有の鳴き声を発しながら寄ってくる様はいつ見ても可愛らしいものだが、霊夢は猫を飼っていたのだろうか。

よく見ると尻尾が二つに分かれている。これはこの黒猫が妖怪であることを示している。尻尾が分かれている猫妖怪といえば代表的なのはやはり猫又だろう。猫又関係の話ならいくつもあるのだが、そのほとんどが見間違いや焦りからくる幻影だったりする。その代表的なのは徒然草のとある話。

とある人間が黒い影に襲われ逃げまどってるうちに川に落ちてしまう。その近くを通りかかった別の人に自分は猫又に襲われたのだと言い、その付近ではその話が広がったらしいのだが、実は黒い影は追われた青年の飼い犬で、帰ってきた主人に甘えただけだった。というのがこの話の大まかな流れである。

バカのような話だと思うかもしれないが実際にこういうことは結構起こりうる。特に夜はそういった勘違いというのは起こりやすい。やはり眠気や疲れなどで正常な判断ができなくなってるのかもしれない。

閑話休題

その黒猫は俺の履いているズボンに体を擦り付けてきた。妖怪なのは明らかなのに可愛らしいと思えるのはやはり猫だからだろうか。

その猫はしばらくスリスリしたあとに俺から離れ、奥へ走っていく。茂みの前まで行くと走るポーズで固まりこちらを振り向く。もしかして付いてこいと言っているのだろうか。霊夢がこの猫を捕まえて伝言でも頼んだのだろうか。

俺が付いてくることを察したのか黒猫は茂みに飛び込んだ。俺も追って茂みに飛び込む。そこにはそれなりに大きな穴があった。これが地底への道なのだろうか。案内を終えた猫は穴の傍で座っている。

これは…中々に恐怖心を煽る。試しに覗き込んでみるが全く底は見えない。比喩ではなく本当に一寸先は闇状態だ。試しに石を投げ入れてみても全然音は響いてこない。相当深いのだろう。

勇気を出して飛び降りる。勿論能力を使ってゆっくりだ。すると穴の傍に座っていた筈の黒猫は俺より断然慣れた様子でさっさと穴の奥へと下っていった。しかも案内などではないようであっという間に先の見えない闇の中へと溶け込んでいった。

俺の周囲も段々と暗くなってきたので魔術で明るくする。それでも全然底は見えないのだからこの穴も大概だ。

俺は猫のように素早く降りることは出来ないので慎重に下った。

 


 

数分かけてやっとの事で底に着いた。

するとそこには博麗神社で俺を案内した黒猫が座ってまっていた。置いていった訳ではなかったのか。多分一本道だから大丈夫とかそういう考えだろうか。確かに横道はほとんど無く、あったとしても細くてとてもではないが通りたくはない状態だった。

それにしても道中と違って底はそれなりに灯りが点いているんだな。簡素な作りではあるがしっかりと明るくなっている。

俺が着地したのを確認したのか黒猫は横穴へと走っていく。それに俺も付いていくのだが、地面が舗装されておらず走りにくい。かといって飛ぶには少し天井が低い。ということで頑張って走った。

そして走ること一分程度、開けた場所に出た。天井ではなく空と言えるほど頭上には空間がある。目の前には塀だ。なんの塀かは分からないが、取り敢えず塀である。

黒猫は左へ曲がり、塀に沿うように歩いていく。それに俺も付いていく。今度はそれなりに地面が均されているので、比較的歩きやすい。というか猫。お前少し遊んでないか?塀の上に登ったり突然走り出したり止まったり…段々誘導が面倒になってきたのだろうか。 

二回程角を曲がったところでとうとう塀が途切れる。入口のようだ。紅魔館のように大きくはないが、それなりに立派な作りの門のようだ。その横には表札。そこに【地霊殿】の文字。こいしが言っていたこいしの…そしてその姉、地底の主の家である。

黒猫は門の隙間を縫って勝手に入っていった。いや、流石にそれはどうかと思うぞ。それにどのみち俺は入れない。幻想郷のやつらは飛べるやつばかりだから門というのはさして意味などない。しかし、それでも門の前で開くのを待つのが礼儀というものである。

そして待つこと数分。奥の方から二人の少女がやってきた。

 

「ようこそ、地霊殿へ。」

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