「まず定晴さん、地底についてどのくらい聞いていますか?」
どのくらいと言われてもなぁ…地底の場所は教えてくれたけどあとは何も聞いていないし、紫の言う厄介事というのが何なのかも知らないままここに来たのが現状だ
それこそこいしが地底に住んでて、地底の主の妹ということくらいしか知らなかったわけで、さとりがどういう性格で、見た目で、能力なのかすら知らなかった
「そうですか…なら本当に何も知らないんですね」
「恥ずかしながら…」
俺が悪いわけではないんだろうけど、少なからず悪いことをした気になってしまう。それこそ俺が罪悪感を抱くぐらいに
いや、俺が全く悪いわけではないのかもしれない。地底に来ることをしたのはなにも今日昨日の話ではなく、それなりに前から決めていたのだ。出発が今日のあの時間だっただけであり、準備する期間はそれなりに存在していたはずなのに俺はそれを蔑ろにしてしまっていたようだ。そう考えるとやはり罪悪感を抱いてしまう。本で調べるなど方法はいくらでもあったはずなのに…な
「そう自分を卑下しないでください。別に怒ったり呆れたりしているわけではないんですから」
「そうかもしれないけどさぁ…やっぱり俺にも非があったなと思うと…」
「では少し地底について話しておきますね。地底というのはその名の通り幻想郷の地下にある大空間のことです。元々は弱い妖怪や動物の一部が住み着いていただけなのですが、途中で地上の一部の妖怪が地底にやってきて上下関係をはっきりさせました」
妖怪が幻想郷の地下を開拓して作ったわけではなかったのか。幻想郷の少女たちは特別な力を持っていることが多いから地下に空洞を作ることなんて容易なのだろう
俺が気になるのはもう一つの方だ。地上から妖怪が流れてきた?地上の方が生活しやすそうなものだが…
「地上の妖怪の一部…ほとんどは鬼ですが。彼らは元々地上の人間を好いていたのですが、最初は正面から戦っていた人間が罠や集団戦など姑息な手を使い始めたあたりで鬼たちは人間たちに見切りをつけて地下へとやってきたんですよ。私たちは単純に心を読めるから気持ち悪いと人間だけでなく妖怪などにも言われ傷ついたからだったりします。こいしが心を閉じているのもそれが原因なんです」
なるほど…人間は元々好きだったが、地上の人間たちが段々と姑息な手を使い始めたから地下に入ったと…
妖怪でもやはり鬼は別格の存在らしいな。面白いことを聞いた
「それでですね、今地底で起こっていることはそれも関係してくるんですよ。一部の妖怪が地上の人々を襲撃しようと企てているらしいんですよ。それも相当な量が。鬼は既に地上の人々の事を無視する事にしているらしく、主犯格は鬼ではないようですがその尻尾すらも掴めていません」
「簡単に言うならばそれを止めろと?」
「そんなところです。その間は地霊殿に滞在してくれて結構ですので…また地上から色々来られても大変ですからね」
そういえば地底は一度異変を起こしたことがあるらしいな。それを霊夢と魔理沙が解決したとか。二人とも、この異変は服を一つ捨てる必要があった、と言っていたが…そこまで地底の妖怪が強かったのだろうか
「それでですね…地上の、しかも人間である貴方が行くと騒ぎになるかとは思いますが人間がまた地底の妖怪を抑えた場合それが抑止力になると思いまして…」
抑止力云々は置いておくとしても、地上としても侵略を謀る妖怪が攻めてくるのは避けたいのでこちらとしても協力したい
にしても前回も人間が止めたはずなのに何故また…
「前回の異変、実はそこまで地底で浸透してないんですよ。そこまで地底に影響がないことが一番の要因ですね。いつもより熱くなった程度でしょう」
「というか前回の異変って何なんだ?詳しいことは聞いてないんだよ」
「でしたらこちらへ」
さとりに案内されて部屋から出る。こいしを俺の後をついてくる
前回の異変について教えてくれるのだとしたら…図書館とかだろうか
しばらく歩くと他の場所より断然熱い場所に来た。部屋というわけではない、中庭だろうか。中心の床には鉄製の床扉がある
さとりは扉に近付き俺を手招きする
「ここ、結構熱いですから気を付けてくださいね」
「なんか対策しないと大変な事になるかもね〜」
「二人揃って…そんなにか?」
生憎だが俺は耐熱服なんて持ってないぞ
日本全国で仕事をしてきたが、北海道用に買った耐寒服はあっても耐熱服は買ってない。そもそも耐熱服が必要になる程熱い場所なんて日本では稀有だろう。それこそ火山の中とか…
一応幻空の中に水の入った水筒なら入れているが…熱いと暑いは微妙に違うし、意味があるものかどうかは分からない
「開けますよ?」
「いいぞ」
さとりが扉を開ける。その瞬間扉の奥から途轍もないほどの熱気が溢れてくる
ぐわっ、本当に熱い。温度計があったら一瞬で上限までいくかもしれない
「流石に中に入るのは危険なので、ここで待ってください。おーい!お空!」
「誰かこの中にいるのか」
「うん。お空はここの管理をしてるんだよー」
誰だか知らないが、お空、恐るべし
この熱気の中で活動するなど、俺からしてみれば正気の沙汰ではない。すぐに倒れてしまうだろう
さとりが呼びかけてからおよそ一分弱。扉の奥からひょっこりと顔を出す影が一つ
「なんですか、さとり様」
「しばらくの間地霊殿に泊まることになった人を伝えておこうと思って」
さとりがそう言うと、お空と思われる人物は俺をまじまじと観察する。信頼できる人なのか確かめているのだろう
「ふ〜ん。私は霊烏路空、お空って呼んでね」
「地霊殿は灼熱地獄跡の上に建てられているわけですが、その灼熱地獄跡を管理しているのが熱を操れる地獄鴉のお空なんです。前回の地底の異変はお空が八坂神奈子に貰った核融合の力で暴走したのが原因なんです」
「地上では間欠泉が湧いたり、その間欠泉にお燐が乗せて地上に行った怨霊が現れたり大変だったらしいよ〜」
さとりとこいしが説明してくれる
なるほど。霊夢が間欠泉異変って言っていた意味がこれか。今は幻想郷を飛んでいても間欠泉を見ることはないし、全部鎮静したのかな
つか神奈子…何やってんだ
「人間?」
「おう。人間だ」
「む〜」
なんかお空が睨んできた…いや、当然か。ここが地底であることもそうだが、一度人間相手に負けているとなると自ずと嫌悪感というのは増すというもの
「まあいいや、さとり様達に手を出さないのなら」
いいのかよ
嫌悪感は気のせいだったのか…?いや、多分単純に興味がなくなったのだろう。外の世界では仕事柄誰かに恨まれたりすることもあった。その時感じた嫌悪感と似ていたのだ
「さとり様に手を出したら核融合で吹き飛ばすからね!」
「核融合?」
俺の呟きは聞こえなかったのか、俺に釘を刺して扉の中に戻っていった。そう何度も言わなくたって手は出さないから安心しろ
にしても核融合か…聞き慣れない言葉ではあるが、核と言っているからには相当強力なのだろう。核は基本大量の熱を放出するのだし、そんな能力を持ったやつが暴走したらそりゃ水分が一気に沸騰して間欠泉が湧くわ
「お空は初対面の人に対してちょっと高圧的なんですよ。気にしないでくださいね」
「大丈夫だ。俺だってそんな短気じゃない」
「すみません…」
さとりが謝る。こいしは横で周囲を見渡している。どうやらこいしは全く気にしていないらしい
姉妹だけどこの二人は結構性格が違うんだな。スカーレット姉妹はなんとなく似たような部分はあったが、古明地姉妹は一切そういったものが感じられない。目を閉じたか否かが変えているのだろうか
「さて、今回の問題。貴方風に言えば依頼、受けてくれますか?お空はもう地上侵略をするつもりも無いようですし、邪魔はしませんので…」
「任せろ。依頼は断らない主義なんだ」
「そう言ってくれると思ってました」
簡単に言えば暴動起こしている、若しくは起こそうとしている妖怪を成敗してやればいいのだろう?
前置きが色々と長くなったが依頼受理完了だ。早速行動を起こしたいが…
「まあその前に部屋に向かいましょう?多分お燐が準備してくれているはずだから」
「分かった」
さとりに案内されて部屋に向かう。こいしも一緒だ
地底のことを知らないとな。部屋で準備をしようじゃないか
俺はしばらくお世話になる部屋に向かった
長くなりました…途中で切るべきだったでしょうか…