東方十能力   作:nite

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七十五話 地底の初仕事

地霊殿を抜けて外へ出る。

ここからは飛んだ方が早いな。

 

「お燐!飛ぶぞ!」

「分かったよ!」

 

風を使って飛ぶ。地底だからか少し安定しない。

そもそも地底で発生する風など微力なものなのだろう。それを能力で増大させて操っている。いつもより疲れる作業だ。一部は狂気にさせよう。

 

「そこだよお兄さん!」

「結構ドンパチやってるんだな」

 

妖怪達が街中で乱闘している。しかも結構派手で、弾幕ごっこではなく普通に殴り合いだ。

どうやら街をただ歩いていただけの妖怪も巻き込んでいるようで、明らかに戦闘向きではないような妖怪ですら戦闘に参加している。

その戦闘の中心部には鬼と敵対する妖怪。

 

「オラァァァァ!!」

「てやっ!」

 

鬼が突っ込み、それを捌いていく妖怪。相当な手練のようだが…

そんなことより、いつまでも観戦している場合ではない。しかし、どれが地上侵攻派でどれが保守派か分かったものじゃないな。

言葉で収まるような状況ではないのは明白だが…まずは気を引いて少しでも落ち着かせる必要がありそうだ。

飛びながら全体に響くように大きな声で叫ぶ。

 

「待て!お前ら!」

 

いつもより少しだけ殺気を乗せて、俺の声が聞こえる範囲の妖怪が全員俺を認識するように仕向ける。

計画通り場にいる妖怪達の視線がこちらを向いた事を確認して大きな声で話す。

 

「俺はお前らの争いを止めに来た!」

「なんだてめぇはああああ!」

 

気が短い妖怪が俺に向かって突っ込んでくる。

結界を張り衝撃を防御。そして輝剣で叩く。依頼は制圧ではなく抑制なので傷付ける必要はない。

俺が争いを止めた、若しくは止めようとしたという事実が大事なのだ。

 

「なんだこいつ!この!」

 

結界を全力で殴る妖怪。鬼ならまだしもそうでない妖怪が衝撃を与えたところで結界にはヒビすら入らない。

殴っても無駄な事に気付いたのか周囲の妖怪に呼びかける。賛成して俺に向かってこようとしたところを鬼が捕まえ殴る。

俺に意識を向け過ぎたせいで近くにいた鬼という脅威を無視してしまった結果だな。

特に俺が戦うことはなく鬼とその仲間によって争いは鎮圧された。

 


 

「ひゃ〜流石だねお兄さん」

「俺は何もしてないぞ?というかお燐どこにいたんだ」

 

争いが終わった街にて。

道が広かったおかげで建造物には被害がほとんど無いが、その代わり怪我人が多い。

束縛された妖怪は放置し、守ろうとしてくれた鬼共々を回復してあげた。俺に感謝をしつつもその目は疑っていて、直接訊いてくることこそなかったが、少し離れた所で噂をしているらしい。

そうやって復旧作業をしていると、後ろから大きな妖力が二人。しかも片方は知っている。

 

「こりゃまた酷くやってんねぇ〜」

「勇儀がもっと早く来ればなんとかなったかもしれないけど…ありゃ?こんな所で会うとは奇遇だね定晴」

「奇遇っちゃ奇遇だな。萃香」

 

博麗神社で戦い、妖怪の山では助けてもらった俺のよく知る鬼の萃香だ。

その友好関係の広さには驚く他ないが、そもそも鬼ということは地底で生活していたはずである。地底にいてもなんらおかしくない。

 

「なんだ、知り合いかい?」

「地上で一戦交えたことがあってね、その時にさ」

「それってもしかして前に話していた力勝負で押されていたっていう?」

「そうだよ」

「よし、私と勝負だ!」

 

何故そうなる。

いや、鬼が戦いと酒が好きなことは知っている。それこそ生きている内の殆どをそれらに費やすほどには。

しかし、この復興作業が行われているここで戦おうとは、被害を大きくさせたいのだろうか。

 

「待て待て。復興が先だろ?まずはそっちを手伝ってくれないか?」

「ふむ…じゃあ先にそっち、やっちゃおうか。萃香、手伝って」

「ほいさ〜」 

 

なんとか抑えて援助を頼む。どちらも成功したようで、一安心だ。

萃香によると彼女の名前は星熊勇儀。力だけ見れば萃香よりも強く、よく二人で遊んで(闘って)いるようだ。勇義も酒に強く、地底でも一、二を争う酒好きであるとは萃香の弁。

今まで滞っていたゆっこう作業だが、勇義と萃香が参加した瞬間一気に進みだした。

萃香が小さく分裂して小さいものを大量に運び、勇儀は大きいものを運ぶ。

 

「この調子ならすぐに終わるだろうな」

「終わったら一戦してねー」

「私との再戦もお願いねー」

 

何故かお願い増えてないか?というか俺の仕事はこれで終わりなのだが…地霊殿に帰るのはもっと先になりそうだ。

その後十分程度、復興作業も終わり人も散って…とはいかず、俺と勇儀の試合を見るために未だ観衆が残っている。というか増えている。

 

「やれー!」

「吹き飛ばせー!」

「どこのどいつか知らないけど頑張れー!」

 

観衆のやつらが力を探知できるほどの実力者じゃなくてよかった。俺が人間だとは分かっていないようだ。

流石に勇儀は俺が人間だと分かっているようだが、地上で戦ったことを聞いた時に同時に説明を受けたのだろう。まあ萃香の親しい友人となれば信頼できるだろう。

 

「さあ、いくよー!」

 

取り敢えず勇儀との戦闘に集中だ。

折角地底で俺の力を知ってもらうチャンスだ。名前だけでも広まってくれればそれなりに動きやすくはなるだろう。

できるだけ努力するとしよう。

 

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