東方十能力   作:nite

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今回は少し長めです。


七話 訪問者

幻想郷に来てはや三日、俺もだんだん生活に慣れてきていつも通りソファに座って本を読んでいたときの事。突然家の中に自宅でしか聞かないであろう来客を示すチャイムが鳴り響いた。

 

ピンポーン

 

「ん?客か?珍しいこともあるもんだ」

 

俺がそう思う理由は三日前から紫以外誰もここに来ていないからだ。藍は仕事で忙しいだろうし、紫の場合は直接スキマを通って家の中に入ってくる。俺は野良妖怪対策に色々としているのだが、それを無視して入ってくる紫に少しばかり苛立ちを…まああいつらしいからいいのだけど。

閑話休題

誰であろうと待たせるのは相手に失礼なので本を置いて立つ。

誰だろうかと扉を開けてみると、魔理沙が箒を持って待ちくたびれたように立っていた。

 

「定晴、久し振りだな!今日こそ、弾幕ごっこで勝ってみせるぜ!」

 

開口一番それかよ。というか魔理沙は決定的な勘違いをしている。俺は弾幕ごっこがなんたるかを知らない。それを魔理沙に伝える。

少し興奮しているようなので落ち着かせるためにもちょっとだけ声を張り上げる。

 

「ちょっと待てくれ魔理沙!先ず俺は弾幕の放ちかたを知らない。取り敢えずそこを教えてくれないか?」

「むむむ。なら、霊夢のとこにいくぜ!早く準備してくるんだ!」

「え…はぁ、分かったよ」

 

半ば強引に魔理沙が提案してきた。魔理沙の口振りから察するに、霊夢が教えてくれるようだ。しかし、紫が前に言っていたが霊夢は相当めんどくさがりらしいからすんなりいくかは分からない。

ささっと準備をして家を出る。戸締りをすることを忘れてはいけない。俺の家には金目の物も魔術的な価値のあるものもないので盗られて困るわけではないが。

 

「よし魔理沙、準備できたぞ」

「なら今すぐ行くぜ!」

 

魔理沙は箒に、俺は風を使って飛ぶ。

その後しばらくの間ずっと一緒に並走していたのだが、どうやら問題があったらしく魔理沙が不満を口にした。

 

「なあ定晴、もう少し風を抑えてくれないか?煽られて飛びにくいんだ」

「そうか…うーん…」

 

どうやら俺の風のコントロールが悪いらしく周囲にも風が漏れているらしい。一先ず俺は力を抑えてみる。だが今度は力が足りないようで俺が落ちそうになってしまう。落ちる前に出力を上げて立て直したが今度は魔理沙がふらついた。これでは鼬ごっこだ。

元々外の世界では使うことのほとんど無かった能力なので、あまりコントロールの練習とかをしてこなかったのだが、まさかこんなところで仇になるとは思わなかった。

 

「すまない魔理沙、もうちょっとだけ我慢してくれ。次は飛ぶときは練習しとくからさ」

「んー、しょうがないな。分かったぜ」

 

幻想郷には飛べる人や妖怪が多いらしいし、今みたいに一緒に飛ぶこともあるかもしれない。それに一人で飛ぶにしてもコントロール出来なければ余計霊力とか使って疲れるだろうしな。

 


 

その後五分程度で神社に到着する。神社の裏の方にまわってみると、霊夢の他に二つの影があった。一人は二つの角がついている妖怪で、もう一人は周囲に比べて断然小さい女の子だった。背ではない。体全体の話である。

 

「おーい!霊夢!お前の愛しの定晴を連れてきたぜー!」

「違うって言ってるでしょ!」

「おー。私が知らない所でそんなことが…」

「こら!萃香!信じない!」

「ふへへー。私も元の大きさに戻ったら…」

「針妙丸は変な妄想しない!」

 

霊夢が角の付いた妖怪と小人に叫ぶ。どちらも顔を赤くして変な事を考えているみたいだ。なんとなく角のついた方は酒に酔ったような赤だけど

 

「よお霊夢」

「ええ久し振りね」

 

とりあえず霊夢と軽く挨拶を交わす。その横から俺は凄い強い視線を感じた。さっきから酒を飲んでいたと思われる角の生えている妖怪だ。

 

「んー」ジー

 

きっと鬼なのだろう。その鬼がずっと俺の事を見ている。頬は赤いが表情は真剣そのものだ。だが妙に酒臭い。やはり呑んでいたのだろう。

 

「えーと、何か?」

「おっと、まず名を名乗ろう。私は伊吹萃香。見ての通り鬼さ」

「あっ、私は少名針妙丸。今は訳あって、この大きさですが、元はもっと大きいですよ!因みに種族は小人です」

「堀内定晴だ。宜しく」

 

というか、元は大きいのに種族は小人って矛盾してるように思えるのだが気のせいだろうか。俺の問いに萃香は答えず、手に持っていた瓢箪に口を付けた。その瞬間周囲に酒の匂いが充満する。あれか、酒が入っているのは。いかにもな見た目をしている。

 

「何しに来たの?」

「ああ実は…「定晴は弾幕を撃ち方を知らないから霊夢に教わりに来たぜ!」…ということだ」

 

魔理沙に割り込まれたが、一応用件はそれだけなので言葉に同調しておく。

 

「ふーん、そう。本当は面倒だけど、覚えておかないとここじゃ生きていけないし、しょうがないから教えてあげるわ」

「すまない、助かる」

 

先程俺が立てた予想とは裏腹に意外にもすんなり教えてくれることとなった。まあ確かに霊夢が言うことは最もだと思う。実際弾幕ごっこが出来なければここでは生きていけないだろうしな。ここの生活原理の一つが弾幕ごっこなのだと紫も言っていた。

 

「その代わりだけど、今日の昼食は定晴さんが作りなさいよ?」

「そんなの御安い御用だ」

 

交換条件はどんなものかと思えば、昼食を作るだけなら容易い。あいつなら、俺の持っている剣とか欲しがりそうだな。それより教えてくれることとなったのなら、早速始めようと思う。俺は境内に出て霊夢の目の前に立つ。

 

「とりあえず弾の作り方よ。これが出来なきゃ何も出来ないわ。目の前に自分の中にある力を集めるように集中するの」

 

言われた通りやってみる。すると、目の前に中くらいの弾が出現した。やり方は輝剣を出現させる時と似ているから思ったより簡単だった。やはり似た感覚を前もって知っていると上達も早いのだろうか。

 

「あら、筋がいいじゃない。あとはそれを押すようにすれば勝手に飛んでいくわ」

「おー凄いな」

 

確かに目の前にあった弾が遠ざかっていく。これを沢山出せば弾幕が形成されるわけだな。威力こそ弱いのだが、加える力の量や種類によって色が変わるようだ。成程…これは綺麗になりそうである。

 

「速さは自分で調節してね。それをいっぱいだせば基本的に弾幕ごっこは大丈夫よ。威力を高めすぎないように気をつけなさい」

 

これが通常弾となるのか。なるほど…

 

「なら次は魔理沙が叫んでいたやつを…」

「その前に、弾幕ごっこのルール…というか原則を教えるわよ。この紙を見てちょうだい」

 

そう言うと霊夢はどこからか一枚の大きめの紙を取り出した。

 


 

命名決闘法案

妖怪同士の決闘は小さな幻想郷の崩壊の恐れがある。

だが、決闘の無い生活は妖怪の力を失ってしまう。

そこで次の契約で決闘を許可したい。

理念

一つ、妖怪が異変を起こし易くする。

一つ、人間が異変を解決し易くする。

一つ、完全な実力主義を否定する。

一つ、美しさと思念に勝る物は無し。

法案

・決闘の美しさに名前と意味を持たせる。

・開始前に命名決闘の回数を提示する。

体力に任せて攻撃を繰り返してはいけない。

・意味の無い攻撃はしてはいけない。

意味がそのまま力となる。

・命名決闘で敗れた場合は、余力があっても負けを認める。

勝っても人間を殺さない。

・決闘の命名を契約書と同じ形式で紙に記す。

それにより上記規則は絶対となる。

この紙をスペルカードと呼ぶ。

具体的な決闘方法は後日、巫女と話し合う。

 


 

「なんでこんな紙持ってるんだぜ?」

「紫に渡されたのよ。一応持っときなさいって」

 

霊夢達がなにやら喋っているが、俺は紙を読むのに集中する。

要は、妖怪と人間を対等にするための決闘方法ということか。確かに素手で闘わないなら、種族による強さの違いも無いはずだ。そこでふと疑問に思った事を口にする。

 

「これって能力も使用していいんだよな?」

「当たり前でしょ。自分が持っている強さは存分に使っていいの。能力もその一つなんだから」

 

つまり、種族よりは能力で勝敗が分かれそうだ。勿論相手のことを考えた上で、というのが能力の使用前提にはなっていそうだけど。

幻想郷の強者は何かしら能力を持っているらしいし、面白そうなゲームである。

 

「で、さっき言ったスペルカードっていうのが、魔理沙が持っているこの紙ね。ただの紙だけどこれを宣言することではっきりとした勝敗がつくようになるわ。その法案の一番下に書いてあるやつが、宣言することで決闘とするってやつよ」

 

その紙には、恋符【マスタースパーク】と書かれている。成る程、これを魔理沙は戦闘中叫んでいたのか。

 

「霊夢や萃香も持っているんだよな?」

「勿論、私も結構沢山持っているのよ」

 

そう言って、霊夢は懐から何枚かスペルカードを取り出した。そこには、霊符【夢想封印】とか霊符【封魔陣】等が書かれていた。

 

「その紙ってどこでもらえるんだ?」

「紫に貰ってないの?勿論私も何枚か持ってるけど…」

 

そう霊夢が言った瞬間、霊夢の後ろにスキマが開いた。そしてその中から紫が現れた。明らかに渡し忘れただろ。こいつ。

 

「ごめんなさい定晴、渡し忘れていたわ。はい、どうぞ」

「はぁ、まあいいや。サンキュー」

「そこにスペルの名前を書くの。この紙に書いている通り、綺麗な字体じゃないといけないとかは無いから気にしないで。まあ貴方は資格を持つくらい字がキレイなのだけど」

 

俺は空間からペンを取り出し名前を書こうとすると、更に横から紫が注意してきた。

 

「名前は自由だけど、回避出来ないやつと当たったら確実に死ぬようなやつは駄目よ。殺し合いじゃないんだから」

 

ならば、と俺は何枚かスペルに書き込んでいく。何となく構想は練っていたので創るのは早い。ささっと文字を書いて保持しておく。

 

「とりあえず何枚か出来た。魔理沙、やろうぜ」

「待ってました!」

「ちょっと待って」

 

やっと戦う事ができると魔理沙が喜んでいると、またもや俺を見つめていた萃香が口を挟む。

 

「あんたから凄い力を感じる。人間にしては異質な力をね…その正体を私は知りたいんだ。相手してくれるかい?」

 

これは戦いたい意思表示だ。魔理沙に前々から言われていたし、先に済ませておきたい気持ちもあるのだが…

 

「そうか?魔理沙どうする?」

「なら先に萃香がやってくれ。私はそれを見ながら定晴のスペルを研究するから」

 

どうやら魔理沙は俺の対策を立てた上で戦うつもりのようだ。性格とは裏腹に慎重だ。魔法使いの気質なのだろうか。

 

「分かった。なら萃香、やるぞ」

「いいよ!久し振りに強い奴とやれるね!」

 

魔理沙の許可も出たので萃香と共に外へ出る。

こうして俺は、萃香と闘う事となった。俺も練習がてら先程書いたスペルカードを準備する。俺のスペルカードルールの初戦だ。気を引き締める。

 


 

「そういえば魔理沙、前弾幕の研究してなかった?」

「ああ、本にまとめたやつか」

「そうそう、グリモワール…魔理沙だっけ?」

「それはただの本の表紙に書いた著名だぜ」

「それはどうしたのよ」

「前に一回本として完成させたあと一応、丁礼田舞までまとめたんだが、あの隠岐奈だっけか、あいつが見つからなくて…」

「まだ続けていたのね」

 

 

 




弾幕ごっこのルールについては、pixivから引用
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