「ここが旧都でーす」
こいしがそう言って立ち止まる。
前回は飛んでいたから気付かなかったが、旧都の入口には立派な門があった。と言っても扉はなく門というよりゲートという方が正しい。
こいしはずんずん入っていく。俺もそれに付いていく形で追っていく。
ゲートの外から見たときから分かっていたし、前回旧都に来たときもそうだったのだが、とても栄えている。主体は鬼だが、それ以外の妖怪もちらほらいて大体が酒を飲んでいる。その他喧嘩してる妖怪や呼び込みをしている妖怪。何か怪しそうな露店で何やらよく分からないものを売っている妖怪など各々の目的は多岐にわたる。
こいしはその中を平然の如く歩いている。俺も隣に並んで歩くが、周囲の身長が高いため気付いていないのか誰一人として俺達に注目しない。
こいしと見知らぬ人間となれば自ずと視線を集めそうなものだが、何がどうして全くもって視線を感じない。なのに歩行者は俺達を避けていく。これは一体どういうことなのかこいしに訊いてみたのだが、
「んー?それはねー私が能力を使っているからだよ。基本的に自分にしか掛けれないんだけど、定晴が凄い近くにいるから私と一緒に無意識下にあるんじゃないかな?」
「じゃあこの能力が効いているうちは素早く移動できるってことか?」
「うん」
なんてことないように返すこいし。実際こいしにとってはどうでもいいことで当たり前のことなのだろう。俺からしたら周囲が無視をしていないのに無視をしているような感覚になる。
言葉で表すのは難しいのだが、本当に無意識下というのは面白い能力である。
他にもこいしは能力について教えてくれる。
「私ならそこら辺の人にぶつかってもなんか当たったみたいな感覚にしかならないけど、定晴がいると多分一瞬でばれるから気を付けてね」
「それは俺がこいしの能力に便乗する形を取っているからか?」
「まあそうなるね〜」
こいしはフラフラと右に左にと動き回りながら歩く。たまに人に当たりそうになるのだが、流石は無意識。通行人は無意識の内にこいしに当たらないように避けている。本人には避けている感覚どころか避けようとすら思っていないのだろうが。
基本的にこいしにしか掛からないこの能力は今でこそ俺も便乗するように掛かっているが、やはり俺とこいしでは勝手が違うようだ。
とは言ってもこいしも強くぶつかったり、強く意識されたらバレるのだからそこまで大差があるような制約ではないのだが。
分かりやすく言うならば、風呂場で俺の足に乗っかってきたこいしに対して重いという感覚を覚えその部分に意識を集中させて探知したような感覚だろうか。
俺の能力の一つである浄化が干渉系能力を無効化してくれるのだが、こいしの能力は無効化というよりかは分かりやすくしてくれているような感じでしかない。幻惑や毒物などは完全にシャットアウトしてくれるのだが、無意識に関しては俺の直接的な意識が関係してくるからそうもいかないのかもしれない。以前の宴会にてこいしのことを気付けたのは気配と妖力を感じたため少し警戒を強めていたからだ。それのおかげでこいしと仲良くなれたのだから結果オーライといったところだろう。
「定晴ーお腹空いたー」
「あー、じゃあ飯にするか。良いお店とか知っているか?」
「どこにどんなのがあるかは分かるけどどこが美味しいとかは知らないなぁ」
やはり外食をしないからだろうか。さとりの言動からしてそこまでこいし達は外食をしないのだろう。それでも外出をしないわけではないからこんな不思議な現象が起きるのだろう。俺が思考した時にさとりが否定しなかったため多分間違っていない。地霊殿、というよりかは地底での生活の疑問はさとりの前で思考するだけでさとりが教えてくれることが多い。いわゆる答え合わせってやつになるのかな。
「じゃあ適当なところに入ろう。お金ならそれなりにあるから何か食べよう。露店がいいならそこでもいいぞ?」
「露店は食べることもあるから店に入ろー」
人混みが少なく、かといって閑散としていない丁度いいお店を探す。昼飯だしそこまでがっつりとは食べないだろう。こいしが物足りなければ追加や俺の分を少し分けることも吝かではない。
「じゃあここにしよう」
そういってこいしと俺は焼き鳥屋に入ることにした。
こいしもワクワクしているようだし俺も腹を満たす目的を果たすべく、俺達は入店した。