東方十能力   作:nite

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八十四話 居酒屋【酒豪】

「いらっしゃいませえええええ!」

 

怒号ともとれるほど声量が凄い挨拶と共に入店。

店内は外の世界の居酒屋とそれほど違いはなく、焼き鳥屋と名売ってはいるが、実質居酒屋みたいなものだ。焼き鳥屋を名乗っているので焼き鳥は美味しいことを期待しよう。

店員に案内され空いている席に座る。さすがに店内で気付かれないのは困るのでこいしには意識的に能力を切ってもらっている。偶発することもあるらしいが、その時は浄化の能力で俺だけでも認識阻害されないようにすればいい。

 

「焼き鳥♪焼き鳥♪」

「随分と嬉しそうだな。好物なのか?」

「ううん、違うよ。ただ家だとお空達鳥類のペットがいるから鶏肉は食べないんだ」

 

確かにそれもそうか。目の前で同族を食べるのを見たいなんて酔狂なやつはそうそういない。同族嫌悪の影響で気にしないやつもいるらしいが。少なくとも俺は目の前で人間が食べられるところを見たくはない。

 

「焼き鳥三本!」

「そんじゃ、店員ー」

 

店員を呼び注文をする。

こいしには焼き鳥を三本、俺は焼き鳥一本と豚バラ一本、つくねを一本だ。飲み物で酒を勧められたが、返事はNO。代わりに烏龍茶を頼んだ。

 

「お腹空いたー」

 

隣でこいしが足をバタバタさせている。お昼時だからか客はいっぱいで、店先には並んでいる人も見える。どうやら俺達が絶妙なタイミングで入ったらしい。

 

「つくねと豚バラお待ちどう!」

 

大きな声とは裏腹に結構丁寧に置かれた料理。焼き上がったばかり特有の熱気とタレがかかった肉がとても食欲をそそる。

こいしは隣で涎を垂らしそうな雰囲気を見せているが、さすがは飲食店。タイミングというものを分かっているのだろう、食欲が増した時に丁度よく焼き鳥を出してくる。俺が頼んだつくねと豚バラによって促進された食欲がこいしを襲う。

 

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

こいしが焼き鳥にかぶりつく。すぐさま三本とも食べてしまい、追加注文。焼き鳥ばかり食べられても腹は満たしにくいため、俺はサイドメニューのご飯物をオススメしておく。

さて、俺も食べてみよう。まずは焼き鳥から…

 

「こ、これは」

 

なんだこれ。外の世界の焼き鳥の数倍旨い。

まず程よくかかったタレが美味しい。

幻想郷が内陸部で海が存在しないためか塩という調味料は基本的に流通していない。紫が持ってきたり、外の世界から迷い込んで来た人々が再現した塩っぽいやつが流通したりすることはあるが。

とにかく幻想郷の料理に塩という選択肢がないのだ。すると自然に品質改良は塩以外のものへと向けられる。焼き鳥の場合は基本的にタレが挙げられる。

タレは店によって作り方が全く異なり、材料や時間など可能性は無限大である。そんなタレの品質改良に力を注げば、それは塩とは別の明らかな違いが出る。

それを今俺は食しているのだ。外の世界では食べたことのない味。多分焼き鳥用の改良だ。とても合う。

 

「ハムハムハムハム」

「そんなに急いで食べると喉に詰まるぞ」

 

こいしが高速で焼き鳥を消費していく。するとここで登場ご飯物。ご飯の上に肉が乗っていて、牛丼というよりかはビビンバに近い見た目である。

それをこいしが食していく。そんなに腹が減っていたのか、はたまたそんなに食べたくなるほどこの店の料理が美味いのか。俺としては後者も含まれているのではないかと睨んでいる。

 

「ごちそうさまー!」

 

こいしがそう言ったのは食べ始めて数十分後のことだった。高速で食べてはいたが、幽々子のように大食漢なわけではないようで、すぐに限界がきていた。

対する俺も何本も食べていると少しずつ腹に溜まっていき、今では満腹の状態だ。

 

「いらっしゃいませー!!!!!」

 

またもや店内に大きな声が響く。その後、聞いたことのある声が。

 

「はいはいお邪魔するよー、と」

 

勇儀である。萃香は一緒でなく、数人の友人と思われる人々と共に入店したようだ。

勇儀が来るくらいだし、ここは相当人気のお店なのではないか。並んでいるくらいだし。俺達は本当に運が良かったようだ。

 

「お?定晴じゃないかい!」

 

見つかった。こいしは咄嗟に無意識状態になる。これでこいしをしっかり認知しているのは俺だけとなる。

 

「先日はごめんねー、久々に血が滾っちゃって力み過ぎちゃったよ」

「いや、いいんだ。構えていなかった俺が悪い」

 

この場合俺も勇儀も悪くないのだが、勇儀が謝ったのならばこちらも謝るというのは日本人として自然な流れである。

 

「何してんだい」

「地底の探索をな。なんかいいとこあるか?」

「いいとこねぇ…特に思いつかないねぇ」

 

勇儀に感謝の気持ちを伝え、お金を払って店を出る。

 

「じゃあ次は地底の端っこに行ってみよー!」

 

食事を摂り、腹が満たされたこいしは元気溌剌である。

こいしの誘導のもと地底の端っこへ向かってみた。

 

 

 

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