全方位から妖怪が一斉に襲い掛かってくる。
この量だと流石に全方位結界では耐えられないな。そもそも全方位結界の仕組みは結界を同時に展開しているに過ぎないうえ、いつもより多くのものを操るという点があるためその耐久性の面ではいつもの結界よりも弱いのだ。
簡単にやられるほど軟ではないが、どうしても対強敵には弱い。
タイミングを見計らって上昇。
飛びあがった先にも妖怪がいるため輝剣で叩き落す。斬れなくとも浮いてるやつを落とす程度のことは容易だ。
「数でゴリ押せー!相手は一人だけだー!博麗の巫女でもないし、さっさとやっつけろー!」
リーダー各のような妖怪が集団の後ろの方で大声をあげている。相手より自分たちの方が優れているのだと主張することは味方全体の士気に大きな影響を与える。中々優れている妖怪じゃないか?
輝剣で弾きつつ結界を張ってできる限り相対する妖怪が減るようにする。本当は結界を大きな壁のようにして一体ずつ倒せるようにしたいところだが、俺の能力の一部なのでどうしても威力減少は避けられない。結界を能力として使うより自身の力で使う方が威力があがることは当然なのである。
霊夢のように日頃から結界を使い慣れている人と競っても俺の結界は明確な差が出る。相手は手作業でして、俺は機械を使っているようなものだ。機械ではそのものをバージョンアップしなければ限界にたどり着く。俺の能力は多く使う事ができる代わりに質が落ちるのである。
「傷ついたやつは下がって体力を回復しろ!相手に休憩の隙を与えるな!」
ほんと、あの妖怪は指揮官として優秀だ。これだけの人数が統制をとり、フレンドリーファイアがないのはあの妖怪のおかげなのかもしれないな。
そもそも妖怪は集団で動くものの方が少ない。この地底にいる妖怪の割合は分からないが、集団戦に慣れている妖怪は少ない筈だ。ならば統制を執ることを得意とする妖怪が現れるのは当然だったと言える。
剣術【五月雨切り】
数が多いと複数を同時に相手することになるため範囲攻撃を多用してしまう。
ゲームをしたことがある人なら分かるかもしれないが、対複数のときに一体に集中して攻撃する方がいいのか複数を同時に攻撃する方がいいのか迷うことがある。攻撃するまでヘイト…集中が向かないならば一体ずつ倒す方が効率的だが、今回のように攻撃対象が一人に向いていて複数いる場合は同時に相手にしなければ不意打ちが多発する。俺は目がいくつもあるわけではない。
魔術【五つの属性】
そして相手は多種多様な種族である。共通の属性などない。
俺が使える魔術は少なく、一般的な魔術である火・水・地・風・空の五つだけしか使えない。その中で能力に風を操るものがあるため風属性は使いこなせるが他は放出や凝縮することしかできず、混ぜたりなんだりはできない。
パチュリーやアリスは更に多くの魔術を同時に使うことができるらしいが、俺には夢のまた夢な話である。魔理沙のように一つや二つの属性を極める方が俺に向いているのだろうが、これまた能力のせいでそれができない。紫は俺の能力が強力だと言うが、俺からすれば多くの弊害を持つ難しい能力である。
「いけー!」
「やっちまえー!」
「負けんなー!」
周囲がざわざわとうるさくなってきた。野次を飛ばし、囃し立てている。
地底では遊戯が少なく、娯楽と言えば喧嘩か酒か。そんな世界なのだとこいしが言っていた。まあずっと閉塞的な場所に住んでいるのだ。外の世界のように技術が発展しない限り弾幕ごっこなど従来の遊びしか生まれないのだろう。
そこでこの騒動だ。地底の住民からすれば楽しい娯楽だという意識なのだろう。治安を守る者からすれば困りものでしかないというのに。
聖地【極楽浄土】
一掃
種族が何であれ妖怪は聖なる力に弱いというのは昔からの伝承だ。
浄化は魔術ではなく俺の能力として使うため威力もなかなか。そもそも幻想郷には神聖力を扱うものが少なく、巫女や風祝などの聖職者に限られる。そのため妖怪も神聖力に対して弱いのだろう。あの紫に止められたほどだ。幻想郷では単純に脅威なのだ。
ならば何故ずっと使わなかったかというと、この技、効果範囲が狭いのである。
だからこそ周囲が囃し立て、妖怪達の前のめりになり俺に最も集まるこの瞬間を待っていたというわけだ。妖怪達は倒れた。死んではいない。一応威力には気を付けている。
奥の方で司令塔として活躍していた妖怪が逃げ出した。ここで追ってもいいのだが、今日はこいしがいる。俺のことを警戒しているだろうし、追跡はまたあとでいいだろう。
「こいしー」
元の場所に戻りこいしを呼ぶ。
しかし返事がない。どこかに隠れているのだろうか。
「こいしー!帰るぞー!」
少し強く言う。それでも返事がない。
しょうがないので俺の知っているこいしの妖力を探して…
「いない…?」
例え無意識を操るのだとしても妖力を感じ取れない理由にはならない。
ということは…逃げたか。帰ったか。それとも…
こいしの能力は生半可なものではない。俺に注目が集まっていた先程まででこいしのことを認知するのは不可能に近い。
俺はこいしがいないという現実にただ茫然と立ち尽くしてしまっていた。
定晴のスペルを題名にいれたのは初めてだったりします