東方十能力   作:nite

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九十一話 絶望への転落

こいしが地霊殿に戻っていることを信じて急いで地霊殿に戻る。もし何かあったとしても素早く行動に移ることができるように武装解除はしないままだ。

 

「こいしは帰っているか!」

 

地霊殿に入り開口一番で叫ぶ。俺の声に反応し、数匹のペットを連れたままさとりが出てきた。しかしさとりは俺が考えていた最悪の事態を悟っているような顔をしている。

 

「いいえ、こいしは帰ってきていません。少し心を覗かせていただきます」

 

さとりが心を読むときに許可を取ってくるなんて珍しい。もっともさとりは能力を切ることは出来ないから俺を見た瞬間に心を読み状況を把握するのだろうけど。

 

「そうですか…ペットたちを総動員して捜索します。お燐!」

「はいはいさとり様。どうされました?」

「こいしが消息不明よ。旧都にいるペットたちにも声をかけて一緒に探して」

「っ!…了解しました」

 

さとりはいつになく凛とした声でお燐に命令する。最初こそ気軽な感じで話していたお燐もさとりから事情を聴いた瞬間真面目な声色で返事をする。

こいしがいなくなることは前の地霊殿ならよくあることで済んでいた。そのころはこいしも能力の制御が難しかったうえ、お空が地上侵略を考えていたにせよ旧都自体は比較的平和だったからだ。

しかし今回は違う。こいしが今になって能力の暴発で無意識状態になりフラフラ彷徨う事は考えずらい。そもそも今の旧都は騒乱だらけである。無意識状態でなかったとしても街を一人で出歩くことが危険な状態であることには変わらない。

 

「定晴さんのせいではないわ。あなたも戦っていたのだもの。それにしても…」

 

さとりが疑問に思っている事は多分こいしが見つけられていた場合。

正直どうしてこいしを狙うのか、という疑問も残るがそれ以上にこいしのことを認知出来たことへの疑問が強い。

別にこいしの能力は姿を消すわけではないためぶつかれば分かるだろう。しかし今回こいしがいたのは乱戦から少し離れた傍観者側の陰だ。もし戦闘で吹き飛ばされてもこいしにぶつかることなどあるまい。

ではこいしのことをずっと認知していたとしたらどうか。俺とこいしは高速で飛行し旧都に戻った。その途中を見られていて、ずっとつけられていたとしたら。だが集中していたとしても見逃すような能力だ。俺だって浄化による幻惑系能力の無効化が無ければ認知は難しい。それをあそこにいた妖怪が成功するのか…?確かに地底の全妖怪を把握しているわけではないが、地底でそんな芸当ができる妖怪なんているのだろうか…

 

「定晴さん。取り敢えず旧都に戻ってこいしの捜索を。定晴さんの推測が正しければこいしは危険な状態である可能性が極めて高い」

「すまない。俺が付いていながら…」

「戦闘中だったのです。それに乱戦時はさすがの定晴さんもこいしにばかり気を付けておくことは不可能でしょう」

 

さとりに励まされるが、明らかに今回は俺が悪い。

そもそもあの場にいてもいいと許可を出したのは俺だ。地霊殿に帰すということもできた。それなのに俺はその選択をしなかった。俺に落ち度があるのは明白だろう。

ここで突然お燐が走って戻ってきた。

 

「分かったわ。定晴さん。地底の端、大きめの建物が並ぶ通りの緑の屋根をした建物に向かってください。どうやらそこに人が集まっているようです。だというのにコソコソと行動しているようで、そこにこいしがいる可能性が高いです。いなかったとしてもまた何か騒乱が起きる可能性があります」

「分かった。向かってみよう」

 

こうして俺はできる限り早く飛び、緑の屋根の建物を探すのであった。

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