そこはかとない疲労と共に地霊殿に戻ってきた俺たちを出迎えたのは、さとりとヤマメだった。
どうやら俺たちが地底の端で戦闘している間にヤマメは目を覚ましたようだ。
ヤマメによるとキスメとパルスィも目を覚まし部屋にいるとのことなので、襲われた経緯とかなんか知っていることは無いか聞くために一度他の二人もいる部屋に訪問することにした。
「失礼するぞー」
「あ…」
随分と怯えきった顔をしているキスメと表情こそ前に出会った時と同じように見えるが、どことなく動揺を感じるパルスィがいた。
元々キスメは他人に対して警戒心が強い子ではあるが、ここまで怯えているとまるで俺が悪いような気がしてくる。
「二人とも。気分はどうだ」
「悪い…」
「最悪よ…」
そう答える二人の語気は弱い。
相当衰弱しているようだ。そもそも俺が助けた時ですら妖力が随分と減少した状態だった。たかだか数時間寝ただけでは完全に回復しなかったのだろう。それに、体力は妖力は回復しても心の傷が癒えるわけではない。
ヤマメも交えて三人に話を聞いてみたところ、三人は元から知り合いであり、今日は三人でお茶会をしていたらしい。少し珍しいお菓子が手に入ったということで、パルスィも呼んで三人で話していたところ突然来客があり、ヤマメが玄関を開けると同時に襲われたという。
現代社会ではインターホンなど扉を開けずとも誰が来たのか分かるが、幻想郷にそんな文化は伝わっておらず流れてくる力でその種族を判断するぐらいしかできない。その結果といえよう。河童に頼めば作ってくれそうな気もするが…
話を戻すと、襲われた後三人は妖力にて攻撃を行い追い払おうとしたらしい。相手は明らかに弾幕ごっこのようなお遊びレベルで済むような相手ではなかったので、最初から妖術をフルで使い応戦したらしい。
しかし三対二という数の利があったにも関わらず抑え込まれ気絶させられたという。
部屋の中が荒れていたのは戦闘の痕跡で間違いなさそうだ。
あの二人が休んでいたところを考えると物色はせずにそのままにしていたといったところか。ヤマメの言うところによるとそこまで重要なものは置いていないから物色されても大丈夫だと言うが。
「起きたらここで寝かされていたって事よ」
「私たちは家に帰れるの…?」
キスメが不安げな声で聞いてくる。
一応現状の脅威は俺が倒したにせよ、未だに危険なのは変わらない。
ここで家に帰してまた襲われでもしたら大変なことになる。これ以上行方不明者を増やすべきではないだろう。
三人だって別に弱い妖怪ではなく、そこらへんの妖怪相手なら一対一でも勝てる程度の妖力は持っている。それでも負けた様な相手だ。あと何人そういったやつらが残っているのかも未知数であるのに何もせずに帰すのはよろしくない気がする。
ここは取り敢えず三人の意見を聞いてみる。
結果として
「私は…ここにいます」
「私は帰りたい…けど…」
「私はどっちでもいいわ」
上からヤマメ、キスメ、パルスィの順番だ。
キスメも帰りたいという意思はあるが、また襲われる可能性も考えるとあまり安易に行動はできないという警戒心を感じる。
ヤマメはここに残りたいと言っているし、さとりに聞いてここで泊まれるかを聞いた方がよさそうだな。パルスィもその判断で良さそうだし、キスメだって二人が残るとなれば残るようにするだろう。
その後はさとりに話をつけ三人はしばらく地霊殿で休息することになった。
また殴られた。
本日何度目だと言うのだろうか。それでも抗うのはやめない。
私はここにいる。ここで待ってると。
一緒にいた皆は既に静かになっており、騒ごうとしている私を傍観するだけだ。
ここに連れ去られて二日程度。
きっと助けに来てくれることを信じて…