たまにはこういう話にも取り組んでみようと思いました。
「肝試しイベント 2018」を題材にしています。
大して怖くないかもしれませんが、ご覧いただければ幸いです。
(季節も秋ですし、あまり涼しくならなくてもいいですよね?…と言い訳)
《おことわり》
説明不足や矛盾点が気になりやすい方にはお勧めしません。あらかじめご了承ください。
今日も仕事が無事に終わった。
ちょうどその頃、売り場の締めと記帳も終わり、その場にいた全員の手が
珍しいな…と彼は思った。
いつもより早く暇ができるのは、ありそうで意外となかった。さらに、
"せっかくの時間、たまにはゆっくりしたい"
そう思うのもまた、勤勉な彼にしては貴重なことだった。
「少し、みんなで散歩でもするかい?」
伸びをしながら、販売員たちへ声をかける。
今、彼のお店を切り盛りしているのは4人。
これまでは、住み込みの男の子と女の子、
「はい。この辺りはあまり出歩いたことがないので、ぜひ」
新入りの彼女が、穏やかな口調と表情で答えた。他の販売員たちも目を細めてうなずいた。
実は、彼としては気をもんでいた。パンデモスは、太古に争った記憶からエルモニーを恐れているらしい。体格の差からはとても信じられない話だが、彼はそう聞いたことがある。だから、来てくれたのはいいが険悪な雰囲気にならないか…と心配だったのだ。
しかしいざふたを開けてみると、それは杞憂に終わった。
この人で本当に良かった…と、彼は安堵している。
家に誰もいなくなるので鍵をかけてから、足元の茂みを踏みしめ、めいめいに歩き出す。
空の彩りを写し取ったように、すべての風景が入り日色に浸されていく。空はというと、一足お先にと言わんばかりに紫色や
「わぁー、きれい!」
ぐるりと見回した少女が、目を輝かせながら天を振り仰いだ。
「星が出てるね。光の粉が散らばったみたい」
少年もその横で、感じ入ったように瞳を上へと向けた。
「涼しくて優しい空気だなぁ…こりゃ気持ちいい~」
魔法使いの格好のまま、まとめ役が胸を膨らませて両手を突き上げる。
「幻想的ですね…昼間に見てる景色と同じはずなのに」
こちらも同じくローブに身を包んだまま、新入りの彼女が目を細めて辺りを眺める。
そのような他愛もないおしゃべりを楽しみながら歩いていく。ふと見つけたものや感じたこと、自分の好きなことや気になること、どこかで聞きかじった
その中で、もっとも背の高い彼女の、新しい一面が明らかになった。なんと、ニューターに
「色白で顔立ちが可愛らしく、背も高すぎないから…」
夕焼けよりも赤く顔を染めての告白に、お手伝いの女の子が目を丸くしていた。
高い身長、それと釣り合う
そうこうするうちに、天も地も、海を思わせる
家々の灯りが遠く見えるだけで、辺りには何もない。
「そういえば…こんな話を聞いたことがあります」
いつもの静かな声音のまま、パンデモスの販売員が語り始めた。
「
"なぜ、私はこうも冷たくあしらわれるのか。もっと
と…」
…それだけならよく聞く話なのだろうが、続きが違った。
ある時、女性は"不思議な力を宿した硬貨"の噂を耳にする。なんでも、とある場所に眠る者たちが持っているらしい。
思いこみの強い本人は、こう考えた。
「死んだのにお金を持ち続けるなんて馬鹿げてる。それに、不思議な力があるなら有効に使わないとね」
女性は各地を
そこは
それにもかかわらず、女性に
女性は
1枚、また1枚と
"これ"が、ありさえすればいい。
見つけた私のものだ。全部、私のものだ。誰にも渡さない。
いつしか全員の足が止まり、聞き入っていた。
「なんと
いつもは陽気なエルモニーも
「こわい……かわいそう…」
「え? かわいそう?」
少年が聞き返す。平静を
「だ、だって…お墓、荒らしちゃったんでしょ…? ひどいよぉ…」
話し手は大きくうなずき、
たくさん集まった。
両手にあふれんばかりの、
何枚ぐらいあるのだろう…ふと、気になった。薪の上で揺らめく炎の明かりを頼りに、数え始める。
「1枚、2枚、3枚…」
夢中になるあまり、指の間から数枚こぼしてしまう。硬貨は薄暗いもやと深い草むらの中へ消えた。
息を切らせながら左右を振り返ると、いつの間にか人影が現れていた。
生前の姿で焚き火のそばにたむろする数人の少女。"見た?""見てない""聞いた?""聞いてない"そんな
他にも、そこかしこに
「横取りされてたまるか。私のものだ。取り返さなきゃ」
幸い、彼らは
「まったく…汚れるじゃない」
忌々しげに舌打ちしながら起き上がる。ふと、水たまりへ映ったものが目に飛び込んできた…。
語り手は言葉を切り、にわかに沈黙の
突然、一陣の風が吹き抜け、
「そ…その女の人は、な、なにを見たの…?」
かすれた声で、男の子が小さく尋ねる。
それを受けて、彼女はその先を続けた。
水鏡を覗き込んでいたのは娘の顔だった。黒髪を片側へ流し、黒を基調とした半袖の衣服に身を包んだ姿。まずまず整った顔立ちと言えるだろう。
しかし…表情も目の色も分からなかった。
なぜなら…
その瞳には
その口元は
「お前は誰だ?」
女性は問いかけるが、返事はない。
「なぜ答えない!?」
いきり立つと、その娘も同じように肩を
「
乱暴に腕を叩きつける。水しぶきが上がり、相手の姿が消える。
「おのれ…どこへ行った。逃げるな、出て来い!!」
水面を両腕でしゃにむに
「何が何でも見つけ出してやる。
そう、隠れても無駄なのだ。
この場所へさえ、
あいつが
"必ず、
固い決意を胸に、女性は駆け出した。墓場をひたすら…ただひたすら。
全身でわななく子どもたちの背中をさすりながら、
「お、おいおい、この子らにゃあ、これ以上はキツいって…」
もっとも、その当人の顔色も心なしか青ざめて見える。月光のせいではないだろう、たぶん。
「う、うん、いや、だ、だいじょうぶ。へ、へーき、へいき」
歯を鳴らしつつ、そんな
「あらぁ…ごめんなさい…ごめんなさい。怖がらせてしまって…」
語り手を
「怖くならないよう、静かに話しましたが…逆効果になったようですね…」
「むしろ、怖さ倍増だって」
「こわかったけど、お話、じょうずで楽しかったです」
少女も腕を伸ばし、彼女の手を取った。
その手を包み込むように
「そういうこと。まぁ、もうそんなに気にするなよ」
「とりあえず帰ろうぜ。だいぶ
家主がついて来ない。
立ったまま、まったく動かないのだ。そういえば、ずっと
「おーい、生きてるかー?」
身長差を補うために軽く飛び跳ねつつ、両手を目の前で振ってみせるが、やはり反応がない。
「まさか…」
「ひょっとして…」
誰かのつぶやきに別の誰かが重ねる。しばし見つめあった後、結論が
「気を失ってる…!」
なんと、彼は目を開けまま、立ち尽くしたまま失神していたのだ。しかも、今まで誰も気づかなかったほど自然に。ここまで見事だと、特技と呼べるかもしれない。
「ぶわははははは…」
「あひゃははははは…」
子ども2人がこらえきれずに吹き出し、大口を開けて笑い転げた。つられて大人2人も笑い出す。家主が一番の怖がりだったという事実も意外なら、ひっそり気絶することも想定外。そして周りに悟らせないほどの
そうするうちに、当人が激しい
「ん?なんでみんな笑ってるんだ?」
結局、彼は後でもう1度、
「怖いけど気になるから」
と、話の続きを聞いたのだった。
さすがに気絶はしなかったものの、気が遠くなった拍子にちゃぶ台へ頭を軽くぶつけ、こぶを作るはめになった。
「あ、ありがとう」
青ざめてこぶを押さえながらも、どうにかお礼を述べる。彼女はいつもの
「ところで、1つ気になることがあるんだけど…なぜその人は、水に映った自分の姿だって分からなかったのかなぁ」
それに答えて彼女が語った内容はこうだった。
身勝手な欲望に突き動かされて死者を
だが彼は、それだけではないような気がしていた。誰しも、"自分を大切にされたい、自分のものを大切にしたい、これこそが本当の自分"という願いはあるだろう。この女性はそれらが極端に強く、そして利己的な方へ暴走しただけのように思えたのだ。私の中にも、ひいては誰にでも同じ危険性は潜んでいないか。そう考えると、つい恐ろしくなる。
「いやぁ、よくそこまでいろいろ覚えてるねぇ。それに、すごい想像力だよ」
すると、目の前の彼女はこんなことを言った。
「実話という噂もありますよ。体験できるかもしれませんね」
「え…」
彼の記憶は再び
前回からだいぶ間が空きました。
すっかり時期を
文字数もいつもよりは少なめで、内容もいろいろ中途半端な感じもしますが、この手の話を書くのは初めてなので、大目に見てくだされば幸いです。
実は、元ネタのイベントでも細かな背景やいきさつは明かされていません。
筆者なりに「こんな感じの流れがあって、肝試しイベントの舞台へつながるのかな」と想像して書いてみました。
説明しきれてはいませんし、つじつまの合わない部分も多々あります。ですが、推理小説や解説、論文みたいに整合性を取ることを重視するよりも、雰囲気や場面の流れをがんばりたいと思いました。
ちなみに、筆者はいわゆるグロい表現は苦手です。読むのも書くのも…。
また、個人的には「それは怖いというより、気色悪いになるかな…」とも感じているので、残酷な描写はなるべく避けたつもりです。
今回つくづく思ったのは、怖い雰囲気を作り、描写できる人は本当にすごいなぁ…と。
筆者はとても怖がりで、読むのにも相当のエネルギーが要ります…えぇ、すっごくビビります。ホラーのフリーゲームのプレイ動画を見て、思わず悲鳴を上げるぐらい(笑い)。
なお、今回は生産に関わらない内容なので、「番外編」にしました。こういう話材も筆者にとっては新鮮だったので、時たま入れてみようと思います。
賛否両論とか、ツッコミどころ満載だとは思いますが、今後とも、暖かく見守ってくださると嬉しいです。
お読みくださいまして、ありがとうございました。(筆者 拝)