「…はい?」
ボルトは理解できなかった様子である。実際できなかった。
「腹が減るとね、修行どころではないんだよ」
一方のセンリは分かってもらえないことなど見越したかのようにもう一度繰り返した。
「いや…!わかるけどさ!それってば飯食えばいいだけじゃんさ!」
言った後すぐにボルトはハッとして尋ねた。
「ひょっとして…メシ食えないほど貧乏だったりしたのか…?」
ボルトでも、なんとなく貧乏かどうかを聞くのは悪いことなのだと感じていた。だがセンリは首を振る、
「いいや、食うのに困るほど貧乏ではなかったよ。…ま、お世辞にも豊かとは言えなかったけどね。」
「じゃあなんでそんなこと…」
ちょうどドリンクが運ばれてくる。2人分だ。
果物のジュースだろうか。鮮やかな紫色で、泡がさらさらと浮かんでいる。
「苦手だったかい?」
センリか頼んでいたようだ。
「いや、そんなことねーけど…いただきます」
納得いかない表情を作りながらも、いただくものはしっかり貰うボルトにセンリは微笑みを浮かべ、さらに質問をした。
「ボルトくん、ご家族は健在なのかい?」
「ん…まぁね」
「お父さんとお母さんは優しいの?」
「…」
ボルトはジュースを飲むのをやめると少し不機嫌そうに答えた。
「かーちゃんは優しいよ!けどオヤジは知らねーってばさ。」
「知らないって言うのは?」
「オヤジは仕事ばっかりなんだ!かーちゃんが毎日どれだけ苦労してんのか知らねー癖して親父面してきやがんだ!」
一息に言い切るとまたジュースを飲むボルト。
「そっか…。兄弟はいるのかい?」
「ん…妹が」
少しだけ機嫌を直したボルトが答える。
「妹がいるんだね…。私には弟がいたよ。」
「ふーん。そういうセンリはどうなんだってばさ」
「その話は…」
言葉を切ると、料理が運ばれてくる。
「腹を満たしてからにしようか!」
うちはの墓地に一人の女性が入ってきた。うちはサクラである。
娘が怪しい人がいたと言っていたので、一応確認にと家の周りを見回っていた。特に問題もなかったので、最後に墓が荒らされていないか確認に来たのだ。
「別に問題ないわね」
墓が荒らされた様子もない。そもそもここには埋葬されていないので、よほどうちはに恨みがなければ墓荒らしなどしないだろう。
問題ないと帰ろうとした時に、視界の端に花が見えた気がした。気になり確認すると、やはり花が供えられていた。
だいたい花が供えられるのは墓地の奥にある慰霊碑なのだが、これは個人のものに供えられていた。
「誰かしら…」
墓の名前を確認するも、夫の口からは出てきたことのない者だ。
ただ、悪意があって供えられたものではないと判断し、その場を離れた。
(一応確認しておこうかしら)
誰だかわからないままだと娘も不安だろう。時間があれば調べようと考え、サクラは家路を急いだ。
まだいける