火影一行が去ってから数時間経ち、だいぶ落ち着いている様子のセンリに当直の警備員から声がかかった。
「大丈夫ですか?」
ややぐったりとし、目の焦点も合わないものの、酔いが覚めてきたセンリは何とか受け答えできる状態に回復してきた。
「やっちまったっす。」
「ええ、やっちゃいましたねぇ。」
警備員は苦笑いとも取れる笑顔を浮かべた。
「旅人さんということで、一応所持品確認させて貰いました。未申請の武器等もなく特に問題なかったのですが、一応決まりになってますので話せるようになったら事情を伺いますから。よろしくお願いします。」
かなり丁寧な対応にセンリは罪の意識を強める
「すんません…。ご迷惑おかけしました…。」
更に数時間後、ようやくまともに話ができる状態に戻ったセンリは取り調べ室に連れ込まれた。
「本当に申し訳ありませんでした…。」
警備員もこの手の泥酔者はよく見る。
虎が猫に変わる瞬間という奴である。縮こまっているセンリに質問を始める。
「どうして飲み過ぎちゃったのかな?」
センリは苦い表情をしてしまった。
(ああ、まずい。非常にまずい。)
悪さはできないと入国した時に思った筈だったが、何と自分の浅はかなことか。
嘘をついてもこの警備員には見抜かれるだろう。かと言って今聞かれたことも正直に話してしまうと面倒になるのは目に見えている。
質問された時に表情を変えなければまだ何とかなったかもしれないが、今のはバッチリ確認されているだろう。警備員の目付きが少し変わったのをセンリは見逃さなかった。
(どう誤魔化すか…)
あれこれ考えているうちに時間は経つ。沈黙は相手の疑念を深めてしまう。
「…その、大嫌いだった人が随分前にいなくなってたと聞いて、はしゃいでしまいました。」
「大嫌いな人?それは誰ですか?」
(いきなりキツイ…!)
酔っている間に自分が余計なことを喋っていないことを祈る。
「だいぶ前に知り合っていた人です。」
「どういう関係だったのですか?」
「赤の他人ですよ」
これだけは自信を持って言える。何せ当人らの御墨付きだ。間違いない。
「じゃあ、今日お墓参りしてたみたいだけど、それは誰のお墓だったのかな?」
(マジか…!)
喋った記憶はないが、やってしまったのだろう。
誰の墓に参ったかも割れていると見ていいだろう。
「その、えーっと、嫌いだった人の子供です。」
「そのお子さんとはどういったご関係で?」
「あー…っと、特に、これといった接点は、うん。無いです。」
「そう…。」
(ヤバイ!怪しまれてる!)
そう焦っていたが、次の質問で逆転の目が見えてきた。
「あなた、うちはを名乗ってたみたいだけど本当にそうなんですか?」
(そんな事言ったのか!?…けど、これはチャンスだ!)
「いやぁ、あははは!その、すいません。多分酔って気が大きくなって、ホラを吹いてしまったというか…。」
「あぁ、そういうことね。」
手元のメモにペンを走らせる警備員は、さっさと手続きを済ませてしまおうかと思っていた。特に問題もない、ただの酔っ払いだ。火影に絡んだのは不味かったが。
「いくら酔ってても、火影様に絡むのはまずいですよ、お姉さん。」
「で、ですよねー…。」
「それで、最後になんですけれども。」
(まだあるのか…)
「昨日ボルトくんと何かあったみたいですけど、何をしてたんですか?」
「ああ、ご飯奢ってあげたんですよ。私が前方不注意でぶつかっちゃって。ちょっと気が立ってたみたいだったので、つい。」
真っ赤な嘘である。しっかり前は見ていたし、申し訳なさから奢ったのではなく、もっと酷い理由だ。
それこそ犯罪レベルである。
(ボルトくんと食べたんじゃなくて、ボルトくんを食べようとしたとか抜かしたら、今度は保護室じゃなくて牢獄行きだからな…)
「はは、あの子も気が強いですからね。」
そんなセンリの汚い欲望は見抜けなかったのか、メモを取る手を休め、席を立った。
「まあ、今回は大ごとにならなくて済みましたけど。貴女は一応観光客ですから。何かあると大変なのでもう少し気をつけて下さい。」
(いや〜…あの時手出さなくて良かったわ…)
スレた子供なら簡単に持ち帰りできると思っていたが、思ったよりも芯が通った真面目な様子だったので諦めたのだが…まさか火影の息子とは。
火影子息誘拐犯で危うく指名手配されるところであった。
警備署を出て、体を伸ばし一息ついた。
(温泉にでも行くか…)
そう思い歩き出そうとした瞬間、視線を感じた。
見られている。この感覚は…
(ヤバイ!)
慌てて体内のチャクラを霧散させ、弱々しい状態にした。
(間に合ったか…?)
そのまましばらく歩いていたが、特に問題は無かった。
(あの感覚はアレだ。何つったか忘れたけど、あの白目一族のアレだ。)
あの"眼"がうちはかどうかまで見切れるかどうかは謎だが、用心するしかない。バレてないことを祈るばかりである。
(さっさと出たいけど、観光しないまま出るのは勿体ないしなぁ。)
仕方がないので湯に浸かりながら考えることとし、温泉宿へと足を運ぶのであった。