ひこうじょう PPP編   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 写真のノウハウみたいなものは、適当に読み飛ばしてしまって構いません。



第5話「協力」

 飛行場のそばの砂浜。

 

フルル   「前から見たほうがかっこいいんだけど、ちいさいねー」

 編隊が向かってくるような角度の写真は、距離が遠くて、ふたりの姿が小さくなっていた。大きく写せたのは、横向きの写真だけだった。

オオカミ  「これを使ってみるかい?」

 オオカミがカメラケースから白い円筒形のものを取り出した。

マーゲイ  「なんですか、それ?」

オオカミ  「テレコンだよ。これをボディとレンズの間にはさむと、今よりも大きく写せるよ」

ジェーン  「シャッターチャンスも増えるってことですね」

オオカミ  「ただ、これは扱いがむずかしいんだ」

フルル   「使ってみたい」

 

 テレコンバーター(エクステンダー)を使用しての撮影が行われた。

フルル   「またぼんやりしてるね」

 テレコンバーターを使用しての撮影では、このボディとレンズの組み合わせではマニュアルフォーカスになるため、ピンボケが多発してしまった。

イワビー  「これ、むずかしすぎるぜ」

ジェーン  「ズームを動かすたびにボケてしまいますね」 ※1-1

コウテイ  「ずっと望遠めいっぱいで撮るか?」

プリンセス 「それじゃ近くに来た時にはみ出すわよ」

オオカミ  「絞って置きピンでもうまくいかないか……」

マーゲイ  「これ以上感度を上げたくないですね……」

 難しいマニュアルフォーカスに加えて、レンズが暗くなるためテレコンバーターは非常に扱いが難しく、これを本番に使うのはあきらめざるを得なかった。 ※1-2

 

 

 砂浜のそばの海上。

 

 PPPのメンバーが海で立ち泳ぎしていた。

コウテイ  「フルル、このくらいの波ならいけるか?」

フルル   「やってみるよー」

 コウテイが、持っていた防水袋からデジタル一眼レフカメラを取り出した。取り出したカメラには、簡易の防水カバーがかぶせてあった。フルルがコウテイからデジタル一眼レフカメラを受け取りった。

ジェーン  「ビデオはわたしがやります」

 ジェーンが、コウテイからビデオカメラを受け取った。こちらも簡易の防水カバーがかぶせてあった。

 イワビーが上空を見た。

イワビー  「おーい、さっきと同じ動きをやってくれー」

 上空には待機していたトキとショウジョウトキがいた。

ト キ   「了解」

ショウジョウトキ「了解です!」

 トキとショウジョウトキがPPPのメンバーが離れていき、その姿は点のように小さくなった。

ショウジョウトキ「ちょっと疲れてきましたね……」

ト キ   「でもこれ、ならんで飛ぶ練習になるわね。ちょっとうまくなったんじゃない?」

ショウジョウトキ「わたしたち、すてきなコンビかもですね」

 トキとショウジョウトキが編隊を組んで、PPPのメンバーのもとへ戻ってきた。フルルがカメラを構え、編隊へカメラを向けた。フルルが少し波に揺られながらカメラを振り、シャッターの連写音がした。

 

 海上でPPPのメンバーがフルルを囲み、彼女が持つカメラの液晶画面に見入った。

フルル   「しっぱいしちゃった」

 フルルの撮った写真は16枚あり、そのほとんどは編隊が見切れていたり、空しか写っていなかった。編隊が見切れておらず、ほど良い大きさで写っていた写真は3枚だけで、そのすべてがひどくぶれていた。

ジェーン  「わたしもうまく撮れなかったです……」

プリンセス 「陸で撮るときとは全然ちがうのね」

コウテイ  「飛行機の動きが読めたとしても、これではまともに撮れないな」

 

 その後、数回海上での撮影練習が行われた。最初よりは安定して撮れるようになったが、成功率は低かった。

 

 

 砂浜。

 

 海から上がってきたPPPのメンバーと、マーゲイとオオカミが会話していた。

ジェーン  「立ち泳ぎはだいぶ上達したんですけど、画面が安定しないんです」

イワビー  「波で浮き沈みが出るんだよな」

オオカミ  「想像以上にむずかしいんだな。不安定な場所で撮影する方法、か………… ん? 誰か来るね……」

 

ジャイアントペンギン「よっ! ひさしぶりだな!」

一同    「うわあっ!」

 岩の陰から突然、ジャイアントペンギン(以下ジャイアント)が現れた。

イワビー  「ジャイアント先輩!」

 ジャイアントが、コウテイが持っていた防水袋に入ったカメラを見た。

ジャイアント「ぼろっちいカメラ使ってるなー。でも今のカメラは良くなったよな。デジカメ使っちゃうとフィルムには戻れないよねー」

フルル   「そうだねー」

ジャイアント「ビデオカメラも、ほんのちょっと前までは、でかくてぇ、おもくてぇ、たかくてぇ、おまけに画質も悪かったもんなあ。もうちょっと前だと、8mmフィルムで、モノクロで、音もついてないのが当たり前だったしなあ」

オオカミ  「……それは、“ちょっと前”の話なのか?」

コウテイ  「なんの話をしているんだ?」

ジェーン  「さっぱりわかりません……」

ジャイアント「しっしっしっ」

フルル   「現像もたいへんだったよね」

イワビー  「なんでお前はそんなこと知ってるんだ? というか、げんぞうってなんだよ?」

オオカミ  「詳しそうだね。不安定な場所で撮影する方法が知りたいんだが、なにかいい案はないかな?」

ジャイアント「海の上から撮るなら、撮るやつをまわりから支えてみろ」

プリンセス 「どういうことですか?」

ジャイアント「まわりのやつが協力して、浮き沈みをおさえるんだ。そうすれば撮るやつは撮影に集中できる」

マーゲイ  「ゆれやすい木の枝の上で眠るときと似てるかもしれませんね。手足をうまく使って、からだをたくさんの点でささえるのがコツなんです。海の上でもひとりで撮るより、何人かで協力すれば、安定して撮れるかもしれません」

プリンセス 「チームワーク、ってことね。わたしたちにぴったりの案だわ」

ジャイアント「それに、海の上からだと、シャッタースピード250分の1はきびしいな。あの写真のような大型機よりも、おまえらが撮ろうとしてる飛行機のプロペラは回転が速いから、320分の1か400分の1で妥協するのもいいかもしれないよ。 ※2 ……この天気なら、感度は160か200だな」

オオカミ  「感度は自動じゃだめなのか?」

ジャイアント「だめじゃないよ。でも感度が自動だとバッファがいっぱいになるのが早いから、連写できる枚数が減るよ。JPEGならたくさん撮れるから、あんまり気にならないけどな」※3

オオカミ  「ほかの注意点としてはなにがあるんだ?」

ジャイアント「そうだなー、あの飛行機は白くてテカテカだから、ピーカンでは露出補正をマイナスにしないと白飛び起こすよ。とくに地上にいるときは背景が暗いから、3分の2段か1段くらい落とすのがおすすめだ」

オオカミ  「海側から撮ると背景が山や林になるから、露出が持って行かれる、ってことだね」

ジャイアント「そうだよ。でも上がったあとは空が背景になるから、露出補正を戻したほうがいいよ。ゼロじゃなくて、マイナス3分の1段くらいにするといいかな。そのへんは好みだね」

オオカミ  「なるほど、勉強になるな。でもそこで露出補正を変える余裕があるか? まんなかで測光すれば機体に露出が合うんじゃないか?」

ジャイアント「測光モードいじってもあんまり変わらなかったりするね。逆に失敗するかもよ」

オオカミ  「マニュアルで露出を固定するのはどうだろう?」

ジャイアント「わるくないけど、初心者にはおすすめできないね。まあ、露出は大外れじゃなければあとで救えるから、細かい事は気にせず撮れよ。ただ、さっき言った白飛びは、要注意だ。あと絞り込みすぎると、センサーのゴミが目立ってくるから気をつけろ」

プリンセス 「このふたりはなんの話をしているの……」

イワビー  「異次元の会話だぜ……」

ジャイアント「じゃーな。まあ、ちょっと練習すればうまくなるよー」

 ジャイアントは岩の陰へ去っていった。

マーゲイが岩の陰を覗き込んだ。

マーゲイ  「消えた!?」

 ほかの面々も岩の陰を見た。岩の陰に、ジャイアントの姿は無かった。岩の隣は林だった。

フルル   「いりゅーじょんだね」

オオカミ  「音もにおいも林の中に消えたな。あのひとは何者なんだ?」

コウテイ  「ジャイアント先輩、としか言いようがないな」

 

 

 海上。

 

 撮影者をまわりから支えて安定させるやり方は、いくつかのパターンを試した結果、以下のような組み合わせに決まった。

 

 写真はフルルが撮影し、フルルの両脇からプリンセスとイワビーが支えて揺れを抑える。

 ビデオはジェーンが撮影し、ジェーンの後ろからコウテイが抱く形で支えて揺れを抑える。

 

 再度撮影練習が行われた。

プリンセス 「すごいわフルル! これもぶれてない! 10枚成功よ!」

イワビー  「もうエサで釣る必要ねーな!」

コウテイ  「ジェーン、どうした?」

ジェーン  「電池切れです……」 ※4

 

 疲れ果てた、トキとショウジョウトキがふらふらと飛んでいた。

ショウジョウトキ「もう……限界……」

ト キ   「これで……さいご……かしら……」

 

 写真の成功率は大幅に上がり、ビデオもしっかりと被写体をフレームに収めることができるようになった。

フルル   「もっと、うまくなりたいな」

 

 

 その後何日にもわたって繰り返された、飛行機のハイスピードタキシーの訓練を、PPPのメンバーが海上から撮影した。

 

 

 ロッジ。

 

 PPPのメンバーと、マーゲイとオオカミが、ロッジの管理用端末のディスプレイを見つめていた。

オオカミ  「やはり飛行場から少し離れた位置がいいんだね」

 オオカミは、管理用端末のディスプレイに、フルルが撮った写真を大きく表示させて、一枚ずつ送りながら見ていった。

ジェーン  「さすがですフルルさん」

イワビー  「かっこいいぜ!」

コウテイ  「またうまくなっているな」

プリンセス 「いいかんじね」

マーゲイ  「すばらしいです!」

オオカミ  「これは、きょうのベストショットだね」 ※5

 ディスプレイに表示された、フルルの撮った写真には、タキシング(地上移動)で向きを変える途中の、カメラに正面を向けた飛行機が写っていた。機体はほとんどぶれておらず、プロペラが回転によりぶれていて、迫力ある写真になっていた。

 

フルル   「みんなのおかげだよ」

 

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

※1-1 ※1-2 「旧」の EF100-400mmは直進式ズームで、ズームとフォーカスを独立して操作するのが難しいです。ズームを操作してからマニュアルでピントを合わせていると、シャッターチャンスを逃してしまうことが多いです。筆者がエクステンダーを使う時は、ほとんどズームを望遠側に固定してフォーカス操作に集中し、感度を高めにして少し絞って撮っています。しかしそれでもピンボケ写真が多いです。しかも暗くなるため早いシャッタースピードが使えず、ぶれやすいです。無理にエクステンダーを使わずに、トリミングした方がいいかもしれません。

 

※2 筆者はプロペラ機やヘリコプターを撮る時は250分の1を目安にしていますが、チヌークのローターや、オスプレイのプロップローターような極端に回転が遅いものは、200分の1以下のシャッタースピードで撮らないと迫力のあるぶれかたになりません。でも私は下手なので、そこまで遅いシャッタースピードだとブレブレの写真になってしまいます。逆に、単発の小型プロペラ機のプロペラは回転が速い(?)ので、エクストラ300のアクロなどでは500分の1くらいを使います。

 

※3 筆者はRAWで撮るので、連写可能枚数がとても気になります。バッファの大きいカメラがほしいです。

 

※4 カメラケースの中にはバッテリーが2本ありましたが、海上へは1本しか持って行かなかったため、バッテリー切れになってしまいました。

 

※5 筆者は、丸一日かけて、何百枚も撮影して、その中に一枚だけベストショットがあればいい、と思っています。

 




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 第4話と第5話は無駄な部分が多く、要点だけほかの話に持って行って、丸々カットしても良かったかもしれませんが、書きたかったんです。






 写真の撮り方について、私なりの考えを書いておきます。

 第4話で、「本の解説なんか参考程度でいいんだよ」というセリフがありますが、別に我流で撮れと言っているわけではありません。本の中にも、いい写真を撮るためのヒントはたくさんあります。本やネットなどで知識を蓄えてから、本格的に撮る、というやり方でもいいと思います。
 どんな写真を撮りたいか、どんな写真をいいと感じるかは人それぞれです。撮りやすい撮り方も人それぞれです。それなので、いい写真の撮り方に正解はないです。こうしたらいいかも、というものはありますが。
 趣味の写真なら、マナーを守って、好きなものを好きなように撮ればいい、と思います。

 いい写真を撮るための条件・要素はあまりにも多く、幸運も必要です。第4話・第5話に書いたことは、そのごく一部です。

 私は下手くそな素人です。撮り方は半分我流です。撮りまくって、撮った写真とにらめっこして、こうしたらいいかも、と考えて、それを次の撮影に活かす、というのを繰り返していますが、納得のいく写真はめったに撮れません。自分で「完璧だ」と思える写真、あるいは、たくさんの人が感動するような写真は、一生に一枚撮れるか撮れないかでしょう。

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