まえがき
写真のノウハウみたいなものは、適当に読み飛ばしてしまって構いません。
飛行場のそばの砂浜。
フルル 「前から見たほうがかっこいいんだけど、ちいさいねー」
編隊が向かってくるような角度の写真は、距離が遠くて、ふたりの姿が小さくなっていた。大きく写せたのは、横向きの写真だけだった。
オオカミ 「これを使ってみるかい?」
オオカミがカメラケースから白い円筒形のものを取り出した。
マーゲイ 「なんですか、それ?」
オオカミ 「テレコンだよ。これをボディとレンズの間にはさむと、今よりも大きく写せるよ」
ジェーン 「シャッターチャンスも増えるってことですね」
オオカミ 「ただ、これは扱いがむずかしいんだ」
フルル 「使ってみたい」
テレコンバーター(エクステンダー)を使用しての撮影が行われた。
フルル 「またぼんやりしてるね」
テレコンバーターを使用しての撮影では、このボディとレンズの組み合わせではマニュアルフォーカスになるため、ピンボケが多発してしまった。
イワビー 「これ、むずかしすぎるぜ」
ジェーン 「ズームを動かすたびにボケてしまいますね」 ※1-1
コウテイ 「ずっと望遠めいっぱいで撮るか?」
プリンセス 「それじゃ近くに来た時にはみ出すわよ」
オオカミ 「絞って置きピンでもうまくいかないか……」
マーゲイ 「これ以上感度を上げたくないですね……」
難しいマニュアルフォーカスに加えて、レンズが暗くなるためテレコンバーターは非常に扱いが難しく、これを本番に使うのはあきらめざるを得なかった。 ※1-2
砂浜のそばの海上。
PPPのメンバーが海で立ち泳ぎしていた。
コウテイ 「フルル、このくらいの波ならいけるか?」
フルル 「やってみるよー」
コウテイが、持っていた防水袋からデジタル一眼レフカメラを取り出した。取り出したカメラには、簡易の防水カバーがかぶせてあった。フルルがコウテイからデジタル一眼レフカメラを受け取りった。
ジェーン 「ビデオはわたしがやります」
ジェーンが、コウテイからビデオカメラを受け取った。こちらも簡易の防水カバーがかぶせてあった。
イワビーが上空を見た。
イワビー 「おーい、さっきと同じ動きをやってくれー」
上空には待機していたトキとショウジョウトキがいた。
ト キ 「了解」
ショウジョウトキ「了解です!」
トキとショウジョウトキがPPPのメンバーが離れていき、その姿は点のように小さくなった。
ショウジョウトキ「ちょっと疲れてきましたね……」
ト キ 「でもこれ、ならんで飛ぶ練習になるわね。ちょっとうまくなったんじゃない?」
ショウジョウトキ「わたしたち、すてきなコンビかもですね」
トキとショウジョウトキが編隊を組んで、PPPのメンバーのもとへ戻ってきた。フルルがカメラを構え、編隊へカメラを向けた。フルルが少し波に揺られながらカメラを振り、シャッターの連写音がした。
海上でPPPのメンバーがフルルを囲み、彼女が持つカメラの液晶画面に見入った。
フルル 「しっぱいしちゃった」
フルルの撮った写真は16枚あり、そのほとんどは編隊が見切れていたり、空しか写っていなかった。編隊が見切れておらず、ほど良い大きさで写っていた写真は3枚だけで、そのすべてがひどくぶれていた。
ジェーン 「わたしもうまく撮れなかったです……」
プリンセス 「陸で撮るときとは全然ちがうのね」
コウテイ 「飛行機の動きが読めたとしても、これではまともに撮れないな」
その後、数回海上での撮影練習が行われた。最初よりは安定して撮れるようになったが、成功率は低かった。
砂浜。
海から上がってきたPPPのメンバーと、マーゲイとオオカミが会話していた。
ジェーン 「立ち泳ぎはだいぶ上達したんですけど、画面が安定しないんです」
イワビー 「波で浮き沈みが出るんだよな」
オオカミ 「想像以上にむずかしいんだな。不安定な場所で撮影する方法、か………… ん? 誰か来るね……」
ジャイアントペンギン「よっ! ひさしぶりだな!」
一同 「うわあっ!」
岩の陰から突然、ジャイアントペンギン(以下ジャイアント)が現れた。
イワビー 「ジャイアント先輩!」
ジャイアントが、コウテイが持っていた防水袋に入ったカメラを見た。
ジャイアント「ぼろっちいカメラ使ってるなー。でも今のカメラは良くなったよな。デジカメ使っちゃうとフィルムには戻れないよねー」
フルル 「そうだねー」
ジャイアント「ビデオカメラも、ほんのちょっと前までは、でかくてぇ、おもくてぇ、たかくてぇ、おまけに画質も悪かったもんなあ。もうちょっと前だと、8mmフィルムで、モノクロで、音もついてないのが当たり前だったしなあ」
オオカミ 「……それは、“ちょっと前”の話なのか?」
コウテイ 「なんの話をしているんだ?」
ジェーン 「さっぱりわかりません……」
ジャイアント「しっしっしっ」
フルル 「現像もたいへんだったよね」
イワビー 「なんでお前はそんなこと知ってるんだ? というか、げんぞうってなんだよ?」
オオカミ 「詳しそうだね。不安定な場所で撮影する方法が知りたいんだが、なにかいい案はないかな?」
ジャイアント「海の上から撮るなら、撮るやつをまわりから支えてみろ」
プリンセス 「どういうことですか?」
ジャイアント「まわりのやつが協力して、浮き沈みをおさえるんだ。そうすれば撮るやつは撮影に集中できる」
マーゲイ 「ゆれやすい木の枝の上で眠るときと似てるかもしれませんね。手足をうまく使って、からだをたくさんの点でささえるのがコツなんです。海の上でもひとりで撮るより、何人かで協力すれば、安定して撮れるかもしれません」
プリンセス 「チームワーク、ってことね。わたしたちにぴったりの案だわ」
ジャイアント「それに、海の上からだと、シャッタースピード250分の1はきびしいな。あの写真のような大型機よりも、おまえらが撮ろうとしてる飛行機のプロペラは回転が速いから、320分の1か400分の1で妥協するのもいいかもしれないよ。 ※2 ……この天気なら、感度は160か200だな」
オオカミ 「感度は自動じゃだめなのか?」
ジャイアント「だめじゃないよ。でも感度が自動だとバッファがいっぱいになるのが早いから、連写できる枚数が減るよ。JPEGならたくさん撮れるから、あんまり気にならないけどな」※3
オオカミ 「ほかの注意点としてはなにがあるんだ?」
ジャイアント「そうだなー、あの飛行機は白くてテカテカだから、ピーカンでは露出補正をマイナスにしないと白飛び起こすよ。とくに地上にいるときは背景が暗いから、3分の2段か1段くらい落とすのがおすすめだ」
オオカミ 「海側から撮ると背景が山や林になるから、露出が持って行かれる、ってことだね」
ジャイアント「そうだよ。でも上がったあとは空が背景になるから、露出補正を戻したほうがいいよ。ゼロじゃなくて、マイナス3分の1段くらいにするといいかな。そのへんは好みだね」
オオカミ 「なるほど、勉強になるな。でもそこで露出補正を変える余裕があるか? まんなかで測光すれば機体に露出が合うんじゃないか?」
ジャイアント「測光モードいじってもあんまり変わらなかったりするね。逆に失敗するかもよ」
オオカミ 「マニュアルで露出を固定するのはどうだろう?」
ジャイアント「わるくないけど、初心者にはおすすめできないね。まあ、露出は大外れじゃなければあとで救えるから、細かい事は気にせず撮れよ。ただ、さっき言った白飛びは、要注意だ。あと絞り込みすぎると、センサーのゴミが目立ってくるから気をつけろ」
プリンセス 「このふたりはなんの話をしているの……」
イワビー 「異次元の会話だぜ……」
ジャイアント「じゃーな。まあ、ちょっと練習すればうまくなるよー」
ジャイアントは岩の陰へ去っていった。
マーゲイが岩の陰を覗き込んだ。
マーゲイ 「消えた!?」
ほかの面々も岩の陰を見た。岩の陰に、ジャイアントの姿は無かった。岩の隣は林だった。
フルル 「いりゅーじょんだね」
オオカミ 「音もにおいも林の中に消えたな。あのひとは何者なんだ?」
コウテイ 「ジャイアント先輩、としか言いようがないな」
海上。
撮影者をまわりから支えて安定させるやり方は、いくつかのパターンを試した結果、以下のような組み合わせに決まった。
写真はフルルが撮影し、フルルの両脇からプリンセスとイワビーが支えて揺れを抑える。
ビデオはジェーンが撮影し、ジェーンの後ろからコウテイが抱く形で支えて揺れを抑える。
再度撮影練習が行われた。
プリンセス 「すごいわフルル! これもぶれてない! 10枚成功よ!」
イワビー 「もうエサで釣る必要ねーな!」
コウテイ 「ジェーン、どうした?」
ジェーン 「電池切れです……」 ※4
疲れ果てた、トキとショウジョウトキがふらふらと飛んでいた。
ショウジョウトキ「もう……限界……」
ト キ 「これで……さいご……かしら……」
写真の成功率は大幅に上がり、ビデオもしっかりと被写体をフレームに収めることができるようになった。
フルル 「もっと、うまくなりたいな」
その後何日にもわたって繰り返された、飛行機のハイスピードタキシーの訓練を、PPPのメンバーが海上から撮影した。
ロッジ。
PPPのメンバーと、マーゲイとオオカミが、ロッジの管理用端末のディスプレイを見つめていた。
オオカミ 「やはり飛行場から少し離れた位置がいいんだね」
オオカミは、管理用端末のディスプレイに、フルルが撮った写真を大きく表示させて、一枚ずつ送りながら見ていった。
ジェーン 「さすがですフルルさん」
イワビー 「かっこいいぜ!」
コウテイ 「またうまくなっているな」
プリンセス 「いいかんじね」
マーゲイ 「すばらしいです!」
オオカミ 「これは、きょうのベストショットだね」 ※5
ディスプレイに表示された、フルルの撮った写真には、タキシング(地上移動)で向きを変える途中の、カメラに正面を向けた飛行機が写っていた。機体はほとんどぶれておらず、プロペラが回転によりぶれていて、迫力ある写真になっていた。
フルル 「みんなのおかげだよ」
つづく
※1-1 ※1-2 「旧」の EF100-400mmは直進式ズームで、ズームとフォーカスを独立して操作するのが難しいです。ズームを操作してからマニュアルでピントを合わせていると、シャッターチャンスを逃してしまうことが多いです。筆者がエクステンダーを使う時は、ほとんどズームを望遠側に固定してフォーカス操作に集中し、感度を高めにして少し絞って撮っています。しかしそれでもピンボケ写真が多いです。しかも暗くなるため早いシャッタースピードが使えず、ぶれやすいです。無理にエクステンダーを使わずに、トリミングした方がいいかもしれません。
※2 筆者はプロペラ機やヘリコプターを撮る時は250分の1を目安にしていますが、チヌークのローターや、オスプレイのプロップローターような極端に回転が遅いものは、200分の1以下のシャッタースピードで撮らないと迫力のあるぶれかたになりません。でも私は下手なので、そこまで遅いシャッタースピードだとブレブレの写真になってしまいます。逆に、単発の小型プロペラ機のプロペラは回転が速い(?)ので、エクストラ300のアクロなどでは500分の1くらいを使います。
※3 筆者はRAWで撮るので、連写可能枚数がとても気になります。バッファの大きいカメラがほしいです。
※4 カメラケースの中にはバッテリーが2本ありましたが、海上へは1本しか持って行かなかったため、バッテリー切れになってしまいました。
※5 筆者は、丸一日かけて、何百枚も撮影して、その中に一枚だけベストショットがあればいい、と思っています。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
第4話と第5話は無駄な部分が多く、要点だけほかの話に持って行って、丸々カットしても良かったかもしれませんが、書きたかったんです。
写真の撮り方について、私なりの考えを書いておきます。
第4話で、「本の解説なんか参考程度でいいんだよ」というセリフがありますが、別に我流で撮れと言っているわけではありません。本の中にも、いい写真を撮るためのヒントはたくさんあります。本やネットなどで知識を蓄えてから、本格的に撮る、というやり方でもいいと思います。
どんな写真を撮りたいか、どんな写真をいいと感じるかは人それぞれです。撮りやすい撮り方も人それぞれです。それなので、いい写真の撮り方に正解はないです。こうしたらいいかも、というものはありますが。
趣味の写真なら、マナーを守って、好きなものを好きなように撮ればいい、と思います。
いい写真を撮るための条件・要素はあまりにも多く、幸運も必要です。第4話・第5話に書いたことは、そのごく一部です。
私は下手くそな素人です。撮り方は半分我流です。撮りまくって、撮った写真とにらめっこして、こうしたらいいかも、と考えて、それを次の撮影に活かす、というのを繰り返していますが、納得のいく写真はめったに撮れません。自分で「完璧だ」と思える写真、あるいは、たくさんの人が感動するような写真は、一生に一枚撮れるか撮れないかでしょう。