――映し出せ。
低い声が聞こえる。声の主は、黒髪を長く伸ばし、腰元で結わえた男だ。纏うのは長き黒装束。男の黒髪はわずかに前にかかり、目元を覆っている。
声に反応し、魔鏡とも言える鏡が姿を捉えた。一人、二人、三人の少女達。
「最後の力で、伝説の魔法騎士を異世界から呼んだか……」
ふっ、と笑う。
「猊下」
そこに、かしづくもう一人の姿。
白髪に、尖った耳が印象的な怜悧な男。灰色の布を前にかけており、額には紫の宝石がある。
「イノーバか……」
呼ばれて彼は言う。
「まさか、伝説が現実になるとは考えてもみませんでした」
だが、黒服の男は笑みを浮かべたままこう続けた。
「……何を案じておる。伝説は伝説だ。事実ではない」
確かに、とイノーバは思う。
「あのような子供では、エメロード姫を助けるどころか、魔法騎士(マジックナイト)にもなるまい」
「御意」
お言葉に、絶対的な自信があっての言い様だろう。
「無論。伝説と侮って用心を怠るのも愚かだがな……」
「――仰せのとおりでございます」
「……猊下」
すると、黒き影がこちらを振り向く。
「イノーバ。私が何故、お前を副官に据えたかは知っていよう?」
「はっ……」
「私が最も信を寄せるのはお前だ。だから、私はお前を――」
だが、これにイノーバは言葉を待たずに放った。
「猊下。私は神官である貴方のお力で今、この場にいるのです。だから、私は何があろうとも貴方のお傍を離れるつもりはありません」
「イノーバ……」
近づく影。
「猊下……?」
すると、顎を持ち上げられる。
目線を合わせるかの如く黒い影が、イノーバのすぐ前にあった。イノーバの金色の目。神官である彼の紫の目。彼の目は海の様に深い――
「私の真の『願い』を知るのはお前だけだ。この世界をも変える願い。私は、この世界を……」
「――猊下」
「……話が過ぎたな」
立ち上がり、猊下は背を向けた。
「猊下!」
「イノーバ。お前はこの世界を美しいと思うか――?」
その声はどこか寂しげにも聞こえる。
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文字数が足りないため、捕捉いたします。この話は本編とは別の視点の話になります。なので、読まなくても一応は本編に影響はたぶんないかと思います。しかしながら、作者が欲張りなため、他の視点も書きたくなったので、閑話を入れます。まだ使い方がよくわからないので、その辺りを承知したうえでお願いします。
話が長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。