ロクでなし魔術講師と禁忌教典 フィーベル家の執事   作:黒月 士

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 やばい、短くしようにも出来ねえ……(今回七千字です☆)前編とかに分けるか?


EpisodeⅠ-Ⅲ二年二組

 あのルシファーとの戦い以降、グレンの教育方針は百八十度変わった。【ショック・ボルト】を極めたと言う生徒たちの自信を真正面から叩き折り、呪文は覚えるものではなく理解するものという方針であったためとロクでなしだったグレンの覚醒もあいまって授業を見学に来る生徒たちが途絶えることは無かった。だが実技の授業の時はさすがに生徒たちが来ることは無かった、そんなありふれたグレンが行った授業の一つを覗いてみよう。

 

 

 

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「そういえばシスティーナ。いまさらですが、ルグナはフィーベル家の執事と聞きましたわ、それは本当ですの?」

 

 

 地方の有力名門貴族の出身であるお嬢様風で高飛車な少女、ウェンディ=ナーブレスは制服を脱ぎながらシスティーナに問いかける。

 

 

 なぜ彼女らが制服を脱いでいるか、それは次の授業が錬金術の授業であるからだ。錬金術の授業では実際に生徒たちの手で魔法素材を加工し、器具を操作して触媒や試薬を扱う授業だ。その実験内容によっては衣服がひどく汚れたり、衣服に薬品の臭いがついたりなどすることがあるため、女子生徒一同はこの女子更衣室に集い、実験用のフード付きのローブに着替えている。

 

 たかが錬金術の授業と思ってはいけない、錬金術は前にルグナが鎖を作ったように剣を高速で錬成することもできるが、今回の授業で行うのは錬金釜を使用した赤魔晶石を錬成するものだ。

 

 

「ええ、ルグナはお父様が直々に雇った人間よ」

 

 

「ですが、彼はスラム街の出身ですわよね?」

 

 

「……ッ!?ど、どこでその情報を!?」

 

 

 ウェンディの思いがけない発言にシスティーナとルミア、そして更衣室に集う女子生徒全員が凍りつく。

 

 

「なに、ナーブレス家の情報網をなめないでいただきたいですわ。さて、大貴族のフィーベル家がスラム街の常識も節操もない男を雇っているなんて、こんなことが―――」

 

 

「違うよ!」

 

 

 ウェンディの言葉が途中で切れたのは普段は静かに見守っているルミアが声を荒げたためだ、これには発言の邪魔をされたウェンディも押し黙るしかなかった。

 

 

「ルグナ君は、常識も節操もあって、努力家で、優しいよ!」

 

 

「そ、そうよ!なんならウェンディ、次の時間、彼の行動を見ていたらどう?それであなたの考えが変わると思うわ」

 

 

 ローブに着替えた二人が更衣室を出て行くのをウェンディはただ呆然と眺めていた。

 

 

 

 

「ふぁ……ねみぃ……」

 

 

 そんなやり取りが行われているとはつゆ知らずルグナは授業が行われる錬金術実験室で大きい欠伸をしていた。

 

 

「おっ、あの従者が欠伸とは明日は雪でも降るか?」

 

 

 カッシュがそうちょけるがルグナからの突っ込みが飛んでこない。

 

 

「……ルグナ、本当に大丈夫かい?」

 

 

 セシルが心配そうにルグナの背中をさする。

 

 

「実のところ、今日一睡もしてないんだよ」

 

 

「はぁ!?お、おまえなにがあったよ!?ギイブルみたいな勉強厨じゃないだろ!?」

 

 

「誰が勉強厨だって?」

 

 

 カッシュが口を滑らせ、ギイブルが不満げに吐いたのをルグナは興味なさげに眺めている。

 

 

「ちょっと野暮用でな、確かに一睡もしていないは大げさだがそれぐらいなんだよ。帰ってきてから洗濯と朝食の下準備、簡単に屋敷の掃除をしてたら朝日が昇ってきた」

 

 

「おまえ、よくそんな数の仕事をこなすな……」

 

 

「俺はフィーベル家の従者だ、これくらいのことは当然の範囲内」

 

 

「ふぅーん……ん?なあルグナ、お前洗濯もしてるって言ったよな?」

 

 

「ああ、お手伝い妖精じゃ間違うかも知れないから俺がな」

 

 

「それじゃあさ!あの二人が今日着てる下着が何色とか知ってるのか!?」

 

 

「もちろん、二人の下着を用意したのは俺だしな」

 

 

 その一言に男子陣の目の色が一変する。

 

 

「おい!答えろ!」

 

 

 カッシュがルグナの肩をつかむと、ルグナはカッシュに視線を移し、そしてふっと笑ったかと思うと次の瞬間机にぶっ倒れた。

 

 

「ッ!?はぁぁあああああ!?おい!寝て黙秘を貫こうとしたって無駄だからな!!おい!手伝え!お前ら!」

 

 

 寝息をたてて寝るルグナをあの手この手で起こそうとするが一向に起きる気配がない。

 

 

「ふん、まったく彼が自分に【スリープ・サウンド】をかけていたことに気づかないとは……やれやれ」

 

 

 授業が始まる数十秒前までルグナは深い眠りに入っていた。

 

 

 

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「さて、お前らに言いたいことがあるがまず……ルグナ、どうした?」

 

 

 グレンが若干引き気味で言うのも無理はない。現在、ルグナの顔は真っ赤に染まり、整えられた髪もぼさぼさになってしまっている。

 

 

「大丈夫?痛みはどう?」

 

 

 ルミアが治癒魔術をかけながらルグナを気遣い、

 

 

「あ、あの、私のでよければ……」

 

 

 リンが差し出した整髪剤でテレサがルグナの髪をきれいに整えている。

 

 

「テレサ、手慣れてるな」

 

 

「ふふっ、自分の髪に比べれば簡単なものですよ。あっ、そういえば最近新しく入った整髪剤があるんです、一つどうです?」

 

 

「……少し考える」

 

 

 テレサの商談に飲み込まれようになりながらその手腕に感謝するルグナ。そして、教室の隅でルグナとセシル、ギイブルを除いた男子生徒全員がシスティーナからのありがたーいお説教を受けている。

 

 

「おいおい白猫、説教するのはいいが授業させてくれ。今回はただでさえ時間がかかるんだから」

 

 

「あっ、はい!さて、後で延長ね?」

 

 

「「「「「は、はい……」」」」」

 

 

 男子生徒たちが肩を落として席に戻る。その光景を少し深いクマを作ったグレンが見届けそして話し始める。

 

 

「今日の錬金術実験は錬金釜は使わん!古典的な分解方式でやる!」

 

 

 その発言に驚きの声が上がりつつもシスティーナは冷静に指摘する。

 

 

「先生、分解再結晶法では結合促進触媒が必要で、そんなのを用意する時間は……」

 

 

「ふっ、問題ない!」

 

 

 グレンはそう言うと教卓に置かれていた銀色の箱を叩く。

 

 

「触媒なら俺の知り合いに全て用意させた!まあこれもすべて俺の人徳のなせる技ってとこだ!」

 

 

 そう高らかに発言するグレンよりも皆の視線はルグナに集まっていた。そう、あの触媒の八割を作ったのはルグナだった。なぜ、ルグナが触媒を作るはめになったか。それは昨夜にさかのぼる。

 

 

 

 

「……いったい何の用でこんな時間に呼び出したんですか?」

 

 

 午後九時ごろ、ルグナはグレンの、グレンが居候しているセリカの家の中にいた。

 

 

「まあ座れって、少し話があるだけだ」

 

 

「まったく、それくらいなら通信魔道石ですればいいのに……」

 

 

 文句を言いながらルグナは席に着く。

 

 

「さて、一つ聞きたい。ルシファーが襲撃してきたとき、お前が使ったあの呪文はなんだ?」

 

 

「あれは自分がシスティーナに魔術を教えてもらっている時にたまたま思いだしたんです、といっても劣化版のレプリカですけど」

 

 

 やれやれとルグナは肩を落とし、グレンが用意したらしい紅茶を飲む。

 

 

「レプリカ?あの破壊力が本物ではないってことか?」

 

 

「ええ、本当なら後何節もあるんですがそれを撃つことはできない。あのたった四節だけでも俺は自分の血を触媒にしてようやく撃つことができるんですから」

 

 

「……なるほどな、つまりお前の魔力容量(キャパシティ)は限りなく少ないってことだな?」

 

 

「ええ、【ショック・ボルト】十五発ぶんくらいでしょうか?」

 

 

「恐ろしいくらいに少ねえな」

 

 

「さて、いったい何の用です?ただの世間話がまさかここに呼び出した理由じゃないでしょうに」

 

 

「ああ、実はな……頼む!」

 

 

 グレンはその場でジャンピング前方回転土下座を決めていた。

 

 

「……はっ?」

 

 

 これにはさすがのルグナも唖然とするほかない。

 

 

「実はな明日行う赤魔晶石の錬成に俺は分解再結晶法を使いたいんだがそれには触媒を作る必要がある、そこで手伝ってくれないか!?頼む!この通り!」

 

 

「……別にいいですけど」

 

 

「本当か!?ありがとな!」

 

 

「触媒を作るだけですよね?だったら簡単ですよ、昔だったらある強盗が盗んだ金品をさらに盗んで十日間寝ずにフェジデ中を駆け巡ってのデス鬼ごっこをしてましたから」

 

 

「……なんだかんだいってお前、俺よりきつい生活してたんだな」

 

 

 そして二人は触媒の作成作業に取り掛かった。最初はグレンに触媒の作成手順、ついでに明日行う分解再結晶法の手順を教えてもらい、その後は黙々と作業に取り組んだ。途中でグレンが寝てしまったためグレンをベットまで運び、その後ルグナは一人で触媒を作っては材料が足りなくなり地下魔術工房に取りに行くのを繰り返していたというわけだ。

 

 そして現在に戻る。

 

 

「まあ騙されたと思ってやってみろ……」

 

 

 ウェンディの反対を押し返し、意気揚々と素材倉庫にある両開きの扉を開けて硬直した。

 

 

「輝石が……在庫切れ、だと……?」

 

 

 グレンが青い表情になり、冷汗がだらだらと垂れだす。

 

 

「輝石が在庫切れならもう仕方ないですわね?」

 

 

 その時ドンと何かを机に叩きつける音が聞こえた。その音を出したのはルミアによって男子生徒がやったビンタを治癒され、テレサとリンのおかげできれいに髪が整ったルグナだった。

 

 

「先生言ってましたよね?輝石は重要だって、前に聞いたんですよ、どっかのクラスで輝石が予想より多く使ってしまったって……ほんと、備えあれば憂いなしとはこのことだ」

 

 

 ルグナが置いた透明の箱の中には輝石が入っていた。

 

 

「ッ!?お、おまえ!ど、どうやってそれを……!?」

 

 

「グレン先生、返すの忘れてました☆」

 

 

 そう言ってルグナが渡したのは魔術工房の鍵、ルグナが持ったままのものだ。

 

 

「あっ、そうか。お前あの時……!」

 

 

 グレンは分解再結晶の手順を説明している最中に輝石が重要であると説明していたのだった、それをルグナは覚えており、魔術工房から輝石を拝借していたというわけだ。

 

 

「これで、行けますよね?」

 

 

「ああ、もちろんだ!」

 

 

 そうして分解再結晶の実技が始まった。生徒たちも最初は古典的な方法だろうと思っていたが、いざやってみるとこれが思いのほか楽しい。もちろん一つでもミスは許されないが時間はたっぷりあったため丁寧に手順をこなしていった。

 

 

「……?ど、どうしたらいいんだろ……」

 

 

「もう一度冷やしてくれ、そしたらこれで過熱と冷却を四往復したからもうそろそろ不純物が取り除かれているはずだ。それじゃあ次にルビーズ液を一滴垂らすから準備してくれ」

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 おどおどとしていたリンには先に全工程を済ませたルグナが説明し少し遅れてはいるもののみんなのペースに追いついていった。

 

 

(……どうしたらよいのでしょうか、あの講師に聞くのは癪ですし、かと言ってこのまま後れを取るのは……!)

 

 

 クラス三位の彼女にとって実験のモタつきがよっぽど悔しかったのだろう。クラスのペースに追いついていないが彼女のプライドが誰かに頼ることを拒んでいる。

 

 

(ど、どうしたら……)

 

 

「ん?ウェンディ、まだそこなのか?」

 

 

 見ると隣でリンに指示していたルグナがウェンディのフラスコを覗き込んでいる。

 

 

「なっ、なにを言っていますの!?わ、わたくしが後れを取るとでも!?」

 

 

「ふーん、今リンも同じ場所だからもしうろ覚えなところがあったら聞いてくれよ?」

 

 

 そういって、ルグナはさっきよりも声量を上げてリンに説明する。

 

 

「で、ルビース液を垂らしたら、紅鉛鉱(こうえんこう)を微小量加えていくから天秤で量ってくれ。量は前にも書いてあるけど(・・・・・・・・・・)指示するから気にするな」

 

 

 ウェンディはルグナの説明を聞きながら手を動かし始め、そしてついにクラスに追いついたのだ。

 

 

「リン、クラスに追いついたぞ!次は配列中に人の血液、マナを含ませる工程だが……血は俺のを使え」

 

 

「えっ?で、でも……」

 

 

「風邪気味なんだろ?さっきから咳をしてるし、さらに血を抜いたら症状が悪化する」

 

 

 ルグナは左腕にゴムチューブを巻き、リンから注射器を受け取ると押し子を親指だけで器用に押し上げ、血を取る。

 

 

「よし、それじゃあそれをろ過器の上に差し込んで……そうそう、それで血をろ過器の中に注入する。そしたら透明な血清液がでてくる、んでウェンディ、調子はどうだ?」

 

 

「……まあまあですわ」

 

 

「やっぱり血を抜く作業で止まってたか、貴族の方々は潔癖症な方が多いからねぇ~」

 

 

 注射器を聖水で清めるルグナ。

 

 

「結婚前の大事な私の体に傷跡が残ったらどうするんですの!?それに自分の血を抜くなど……!」

 

 

「なら俺のを使えよ、スラム街で暮らした最底辺の血をさ」

 

 

「なっ……!?ど、どうしてそこまで……」

 

 

 ゴムチューブを再度巻き、注射器を器用に使って血を抜く。

 

 

「あんたら貴族からしたら俺らは道端に落ちてる石ころと同じくらい興味のないものだ、だったらそんな奴の血なんて無尽蔵にあるわけだ。ほら、無価値に等しいだろ?だったらくれてやるよ」

 

 

 血をろ過器に注入し血清液がでてくる。

 

 

「ほい、後はできるだろ?」

 

 

「え、ええ……」

 

 

 ルグナは立ち上がると自分の主の元に向かう。

 

 

「調子はどう?」

 

 

「結構いいわよ、このままいったら相当大きなものができると思うわ。ところであなたのはもう完成してるんでしょ?見なくていいの?」

 

 

「いやいや、俺のを見ちゃったら感動が半減しちゃうからな。っとルミアも血を抜く作業で手間取ってるのか?」

 

 

「う、うん。システィに抜いてもらおうと思ったんだけどシスティの邪魔しちゃ悪いかなって……」

 

 

「なるほど、チューブ貸して。後注射器も」

 

 

 ルミアはそれらを渡し、自身の右腕を伸ばす。だがルグナはまた自分の左腕にゴムチューブをくくる。

 

 

「えっ、私じゃないの?」

 

 

「いやいや、誰が好き好んで自分の主に傷をつけるんだよ」

 

 

 三度目ともなれば慣れた手つきで血を抜き、注射器を渡す。

 

 

「後は、ろ過器にかければいい…ぞ……」

 

 

 ぐらっとルグナの体が揺らぎ、ルグナの顔がすっぽりとルミアの胸の中にダイブする。

 

 

「え…ち、ちょっと、ルグナ…く…ん」

 

 

 その胸の中でルグナは寝息を立てて寝ていた。それは【スリープ・サウンド】を使ったものではなく本人の、動物的欲求によるものだったがそれほどルグナの体は悲鳴を上げていた。

 

 

「ルミア、後の作業は私がやっておくわ。ルグナをよろしくね」

 

 

 床に座り、ルグナの頭の位置を膝に移しルミアはルグナの寝顔を眺めた。

 

 

 安らかに眠っている、もちろん死んでいるわけではないが安心したような安堵の表情が崩れることは無い。

 

 

「ふふっ、かわいい」

 

 

 頭をなででいるとルグナの右手が手をつかむ。

 

 

「……また……一緒に……木陰で……遊ぶ……約束……した……」

 

 

 えっ、とルミアは声を出しそうになった。その約束はルグナとは似ても似つかないある人物と結んだものでルグナとはあの雪の中が初対面のはずだ。それなのに、それなのに、それなのに、

 

 

(なんでこうも、懐かしく思ってしまうんだろう……)

 

 

 

 

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「ん……」

 

 

「あっ、起きた。まったく先生の助けをしに行ったというのは先生から聞いたけどもう少し自分を大切しなさい、主からの命令よ」

 

 

「Aye aye,sir.そういえばどうだった、赤魔晶石の大きさは?」

 

 

「まだ見てないわ、カッシュが一番に開けるらしいからそれを見てからね。ほら行きましょう」

 

 

「いや、俺は先に自分のを確認しておくよ」

 

 

 二人が他のテーブルに向かっていくのを見送り、ルグナは自分の赤魔晶石を金属箱から取り出した。

 

 

「おお……大きいな」

 

 

 その大きさはおそらくこのクラスで最も大きいと胸を張って言えるほどのもの。システィーナだから大丈夫だろうと思いながら彼女のも見てみると自分のよりは少し小さいものの上出来なもの、だが問題はルミアだった。

 

 

(あっちゃー、こりゃあ本人の性格が出ちゃってるな……)

 

 

 ルミアの赤魔晶石は他のものに比べれば小さいもので、それはあまり表舞台に立とうとしない彼女の性格のようだった。

 

 

「ふむ……」

 

 

 自分の赤魔晶石が入った金属箱とルミアのものを交互に見て、入れ替えた。

 

 

「おっ、ルグナ。お前のはどうだった?」

 

 

 カッシュは食い気味にルグナに尋ねると、ルグナは手に持っていたルミアの金属箱を開けた。

 

 

「いやぁ~急いだからか小さかった」

 

 

「はっ、急いては事をし損じると言うだろうに」

 

 

「おいギイブル、善は急げ、とも言うんだぜ?」

 

 

 ギイブルの皮肉をきれいに跳ね返したとき、システィーナとルミアのテーブルからひときわ大きい歓声が上がった。

 

 

「おい、ルミアちゃんの赤魔晶石、大きくねえか!?システィーナよりも大きいぞ!?」

 

 

「しかもきれい……ねえ、どう作ったの?」

 

 

「さすがは天使様……神々しいぜ」

 

 

 カッシュ達も一目見ようとルグナの横を抜ける。ルグナは手で金属箱をまわし、ウェンディのところへ向かった。

 

 

「出来は?」

 

 

「……これですわ」

 

 

 ウェンディが見せてきたのはルミアのものよりさらに小さいサイズのものだった。

 

 

「あらら、俺より小さいとは……血が悪かったかな?」

 

 

「いえ、むしろあなたのものはアレでしょうに」

 

 

 ウェンディは人ごみを指差す。それはルミアのもがルグナのものであることを知っているからだ、この教室の中で唯一ウェンディだけがあのすり替えの瞬間を見ていたのだ。だがルグナは表情を変えず、

 

 

「さて、いったいなんのことだろうな?」

 

 

「……そこまでシスティーナとルミアに手柄をやる目的はなんですの?」

 

 

「従者が主の顔を立てて悪いか?」

 

 

 ウェンディの中で何かが変わった、この男はあの二人を心の底から信じている。だから彼女らもあのように言いきれたのだ。

 

 

「おーいルグナ、片づけ手伝ってくれ」

 

 

「あっ、はい!直ぐ行きます!」

 

 

 ルグナの後姿を眺めながらウェンディは赤魔晶石を握りしめた。この赤魔晶石には彼の血液が入っている、そう考えればなぜか安心感が湧いてくる。数日後、本物のルビーのようにカットされた赤魔晶石をペンダントのように首からさげたウェンディが女子生徒の中で話題となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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