ロクでなし魔術講師と禁忌教典 フィーベル家の執事   作:黒月 士

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 どちゃくそ(一年と半年)久しぶりの更新で、内容もほっとんど覚えていなかったんで何回か見直して、加筆修正を所々して、そしてようやく投稿。覚えている人はほとんどいないでしょうし(原因は自分の怠慢以外の何物でもないんですゲドね)当初の展開通りにならないでしょうけど、これからよろしくお願いします1


Episode Ⅰ-Ⅳ学院テロ事件前編

 ある日の放課後、生徒たちは変わりなく帰路につくが、その足取りは軽く会話も弾んでいる。それも無理はない、なにせ明日から五日間に渡る大型休日が待っている。その喜びに浸っている生徒の中にはもちろんルグナも存在しており、いつもは放課後復習をしているシスティーナとそれに付き添うルミアと一緒に夕方帰宅するのだが今日だけは違う。

 

「明日から!五日間の!休みだ!」

 

 そう歓喜の声を上げながら商店街を巡るルグナ。商店街の中には同じ学院の生徒を子供に持つ店主もそう少なくなく、制服のまま来たルグナに対し、暖かい視線を送る。

 

「なんだぁ坊主、明日から五日間の休みってか!?ははっ、こりゃいいな!」

 

「ああ!たーまには商店街をゆっくり回りたいからちょうどいい!あ、この鮭を二切れくれ」

 

 ルグナは店先に並ぶ鮭の切り身を指差す。店主の老人はにかっと笑い、鮭を二切れ、ついで一切れ袋に包む。店主に三切れ分の貨幣を渡すが店主は二切れ分のみ受け取った。店主なりの気遣いなのだろう、ルグナはおつりと三切れの鮭を受け取る。

 

「お、そういえば坊主、明日の朝空いてるか?」

 

「朝か?まぁ、空いてると思うが」

 

「だったらよ、俺と市場に行かないか?」

 

 市場と聞いて、ルグナはごくっと唾を飲み込んだ。市場といえば昔、一度忍び込み、その広さに圧倒されながらもなんとか魚を手に入れたはいいもののその魚が当たったらしく、三日三晩悶え苦しんだにがーい記憶がある。確かに市場に対する興味は大いにある、どのように魚がこの店に流れてきているのかを直接この目で見たくはあった。

 

 しかし、その苦い記憶の影響で市場に対する一歩が踏み出せずにいた。そんな状況でのこの誘い。受けないわけには行かない。

 

「そりゃ、もちろんだが…いいのか?俺みたいなど素人を連れて行って…」

 

「お前さん一人の面倒を見れないほど俺は劣っちゃいないわい!」

 

 店主の剛気な一言に安心を覚えたルグナは明日の集合時刻を聞いたところなんと五時!まさか自分たちも魚を取りに行くのではないかと思ったが、その市場自体が遠方に存在しているらしい。だが、ルグナたちが忍び込んだ市場は比較的近場だったはず、その場所について聞いてみるとなんとそこは貴族の屋敷だったらしい。

 

 まさかその屋敷に忍び込んだなど口が裂けても言えない為、ここからは推測になるが、その貴族たちはどこか旅行に行っており、その時残っていた食料の中にあった腐った魚を盗んだあたりだろう。ルグナは少々恥ずかしさを覚えながら商店街を後にした。

 

 

 

「明日授業あるでしょ?」

 

「え?」

 

 ルグナが商店街から、その後少しして学院から二人も帰宅し、夕食を囲んでいた時その会話は発生した。市場に行ける興奮から話に気を込め、いざ話そうとした初っ端にシスティーナの一言が突き刺さる。

 

「い、いや明日は休校期間だろ?」

 

「明日から五日間、私たちのクラスだけヒューイ先生がいなかった時の分、穴埋め授業よ?」

 

「…マジ?」

 

 えぇ…とがくりと肩を落とし、その勢いのままどさりと席に崩れるルグナ。ルグナの中では明日からの五日間休校が消えたことよりも明日の約束を取り消さなければならない店主に対する罪悪感が募っていた。

 

「ねぇ、システィ。ルグナ君が行く予定の市場ってここから何時間ぐらいなの?」

 

「そうねぇ…だいたい片道二時間と十分程度かしら。土面状況にもよるでしょうけどだいたいはそのくらいよ」

 

「五時集合で向こうに着くのは七時十分ごろ、取引が始まるのは七時半で二十分後終了、そのまま帰ってきたら十時頃到着。私たちがルグナ君の鞄だけ持っていってあげたらギリギリ間に合うんじゃないかな?」

 

 確かに間に合う、だがルグナはその予測どおり事が運ばないのを知っている。市場付近は二日前雨が降ったばかりらしく、土の質もあまり良くないと聞く。その道がベストコンディションなわけがなく、もし行こうものなら間違いなく遅刻確定だ。その案を押せば間違いなく行けるだろうが…

 

「な、なぁルミ「…わかったわ」……ヘっ?」

 

 ルグナの発言を遮り、システィーナがルグナの方に向き直る。

 

「ただし、ぜっったい!絶対!遅刻!しない!こと!いいわね!?」

 

「は、はい……」

 

 システィーナにここまで言わせておいて今更、いやちょっと無理そうなんです、などと言えるわけなく、その場で決議された。食後、ルグナが食器を片付けている際、ルミアに道の事を言おうとすると、彼女から返ってきたのは唇の前に人差しをピンとはったジェスチャーだった。そう彼女は知っていたのだ、雨の影響で道のコンディションが悪いことも、ルグナが遅刻確定な事も。だが彼女はそれ以上に市場に行けないことを知り、落胆したルグナの願いを叶えてあげたいという思いを優先した。

 

 「システィは私に任せてね」

 

 そう一言のこし、自室に戻っていくルミアの背中を見送りながら、彼女には一生頭が上がらないであろうことを思い知ったのであった。

 

 

 

 翌朝、寝ている二人を起こさないよう屋敷を抜け出し店主と合流。朝日が登っていく様を見る予定だったが、馬車の中で爆睡。起きた頃には市場についており馬車の中で寝ていた事に気づかず、そのまま座席から落下。なんとも寝覚めの悪いルグナに店主の笑い声が突き刺さった。

 

 市場は早朝にもかかわらず活気に包まれていた。そんな中早速始まった取引(セリというらしい)は男同士の野太い声が飛び交っていた。セリの結果などど素人のルグナには知る由もなかったが店主の表情を見るに成功したのだろう。鼻歌まで歌い出していた。帰りの馬車だがルグナは忘れていた。セリで購入した品物が馬車に乗るのだから馬車が重くなり、減速することを。

 

「やらかしたぁ……」

 

「いいじゃねぇか!遅刻の一度や二度!人生は経験だぞ、小僧!」

 

 そんなテンション差が天地の差ほどある二人を乗せた馬車はフェジテに向かって行く。そのフェジテにて、学院を巻き込むテロが発生していようと知らずに。

 

 

 学院近くに到着したのは十時五十分、完全なる遅刻。今日の晩ご飯で彼女の機嫌を取らなければならないだろう。馬車から声援を送った店主に言葉を返す暇もないことを心の中で謝りながら、ルグナはフェジテを疾走する。疾走と言っても言葉だけで、本当はただ全速力で走っているだけだ、だが幸いな事に何時もなら人でごった返す街も今日は人が一人もいない為、人を避ける手間が省け…

 

 そこでルグナはようやっと違和感に気づいた。改めて全方位見回すが人一人いない、数年前流行り病がフェジテ中をどん底に叩き落とした時にひってきする程人がいない。これは噂に聞く人払いの結界ではないだろうかと思いながら学院に走るがそんな彼の視界に光の一閃が走る。

 

「な、なんだ…あの呪文は…?」

 

 見覚えのない光の一閃が学院の壁を貫通する。壁を突き抜けるほどの威力を持つ呪文など授業で聞いた試しがないし、そもそも実践演習をするならするで面積の広い中庭で行うはず。どう考えても普通じゃない。そう思った時に脳裏をよぎるのはあの二人。

 

「無事でいてくれよ……!」

 

 校門までの最終コーナーを曲がったルグナの視線の先には学院へと入っていくグレンの姿が。必死に呼びかけるも全速力のルグナが出せるのはせいぜい掠れた声だけで、そんな声がグレンに届くわけもなく、グレンは一人校門から学院内へと足を踏み入れていった。ルグナも後に続こうと校門を潜ろうとするがものの見事に弾かれる。通常時、学院のセキュリティの一つで学院に結界を貼られているが、学生証を持っていれば通ることが可能だ。勿論ルグナも持っているが…

 

「あ…鞄の中だ…」

 

 なんとこの男。学生証を鞄の中に入れたままだったのだ。そんな彼が、今現在結界のセキュリティをテロリストに乗っ取られていることなど知る由もない。学生証も持たず、結界を破壊できるほど魔術の腕も無い彼にできる事などない。数分間、その場に蹲り、二人への焦燥感に駆られ、ワンチャン行けないか、そんな程度の気持ちで校門に足を踏み入れた。

 

 結果から先に言っておこう。通れたのだ、これにはルグナも驚いたのか、数秒間校門で茫然としていると少しだけクラスメイトの悲鳴が聞こえ、彼は一路自身の教室へと向かった。その時入れ違いにミアが転移塔に連れて行かれていることを彼は後で知ることとなる。




 次回 EpisodeⅠ-Ⅴ 学院テロ事件後編 更新は今日明日にできればいいな程度なのでよろしくお願いします笑

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