君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索11

 

 

あたしの前にはおねーちゃんと蒼くん以外の23人がいた。

バンドの練習はしていない。座っている者、立っている者、壁にもたれている者、様々だけどその全てが真剣な表情でこちらを見ていた。

 

逃げたくても扉を塞がれてて、正直どうしようかと頭を悩ませているところだ。

 

 

 

「ねぇ日菜。紗夜に何があったか教えてくれる?」

 

 

 

静かな空間を破ったのはリサちーだった。みんな固唾を飲んで見守っている。

 

海に身投げしたおねーちゃんは蒼くんに助けられた。ただ頭から血を流し意識がなかったから黒服と蒼くんが看病をしている。

それは別にいい。おねーちゃんが無事だったからそれで。問題はあの現場をここにいる全員に見られたこと。言い訳なんか、通るわけない。

 

 

 

「……何もない、って言っても信じてくれないよね」

 

「当たり前でしょ。何もなくて紗夜があんな、身投げみたいなこと…」

 

「日菜ちゃんは知ってるんでしょう。どうして紗夜ちゃんがああなったのか。そうじゃなきゃ『おねーちゃんが死んじゃう(・・・・・・・・・・・・)』なんて言うわけないものね」

 

 

 

リサちーと千聖ちゃんの声にあたしは黙った。

だってこれは人に話すようなことじゃない。みんなには関係ないことだからみんなを巻き込めない。

 

 

 

「……これは、みんなが解決できることじゃないんだよ」

 

「そんなの関係ない!いくらアタシたちが解決できない問題だからって苦しそうな友達を放っておけるほどアタシたちは鬼じゃないよ!」

 

「っ!」

 

 

 

もうほんと、リサちーはお人好しすぎる。自分に関係ない話題に首は突っ込まない方がいいって。

最後に苦しむのは誰よりもそういう人間(リサちー)なんだから。

 

 

けどそうだな。あたし、疲れちゃったからさ。

今全部吐き出したい気分なんだ。許可出てるみたいだし吐き出していいよね。

 

 

 

「……そこまで言うなら話してあげるよおねーちゃんの秘密を。だけど最初に言っておくよ。驚くのはいいけど絶対軽蔑しないでね」

 

 

 

コクリと首を縦に振るみんなを見て一度深呼吸。

 

そしておねーちゃん最大の秘密をぶちまけた。

 

 

 

「おねーちゃんは時々、自分を殺そうとする(・・・・・・・・・)んだ」

 

「………は」

 

 

 

誰が発したのかわからない困惑の声。それを気にすることなくあたしは続けた。

 

 

 

「今まで色々な方法で死のうとするおねーちゃんを見て来たよ。手首切ったり、首吊ろうとしたり、わざと車に撥ねられようとしたこともあったかな。身投げしたのは初めて見たけどね」

 

「ちょ、と待って!なんで紗夜がそんなこと!そんな仕草一度だって!」

 

「見てるわけないよ。だってみんなの周りには過去を思い出せるものがないから。あ、ペンダントは別だよ、普段から持ってるし」

 

 

 

まああれを見て昔を思い出すこともあるから絶対とは言えないんだけどね。

 

 

 

「…あの、ずっと聞きたかったんですけど。蒼夜さんと氷川先輩たちは一体どんな関係なんですか?」

 

 

 

控えめに聞く美咲ちゃんにあたしは答える。自嘲気味に、呆れたように。

 

 

 

 

「あたしたちと蒼くんは幼なじみ。そしておねーちゃんと蒼くんは恋人(・・)だよ」

 

 

 

 

息を呑む声が聞こえた。狼狽してる人もちらほら。

けど気にする必要はない。全て吐き出せと解釈した以上、我慢する理由はないだろう。

 

 

 

「とは言っても『付き合って』の言葉はなかったらしいから恋人って表現は少し違うかもしれないけど。まあどっちでもいいよねそんなことは。お互いに好き同士だったことが重要なんだし」

 

 

 

そのせいでおねーちゃんは苦しんでるけど。

 

 

 

「だが私たちは蒼夜からそんな話は一度も聞いたことがない。そもそも彼は弦巻の、こころの付き人ではないのか」

 

「…こころちゃん。こころちゃんが蒼くんのことを引き取る(・・・・)ことになったのって去年の夏でしょ。もしくは秋初め」

 

「そうよ。どうしてわかったの?」

 

「だって去年の夏の日、あたしたちは蒼くんたちと一緒に海にいたんだ。そしてその日、蒼くんはおねーちゃんを助けた代わりに、行方不明になった」

 

 

 

そうそれが悪夢の始まり。おねーちゃんの心を修復不可能までズタズタにした人生最大の出来事。おねーちゃんが苦しんでいる原因。

 

 

 

「それからおねーちゃん変わっちゃったんだ。笑わなくなったし自分の言いたいことは全部呑み込むようになった」

 

 

 

___嫌だったんだあたしは。

 

 

 

「おねーちゃんが何やっても楽しそうじゃなかったから。だから必死に声かけて、戻って来てほしかった。でもむしろ関係は悪くなっていく一方だった。けど最近は前みたいに仲良くできると思ってたのに、思い違いだったみたい」

 

 

 

何も変わってない。あたしの言葉は何も届いていない。結局あたしはおねーちゃんの心の支えなんかにはなれない。

今日で全て思い知らされたよ。おねーちゃんはずっと、蒼くんしか見てなかった。

 

 

 

 

「ねぇ、あたしたちのこと放っておいてくれないんでしょ?だったらお願い、誰でもいいから助けて。

 

 

おねーちゃんを、蒼くんを……あたしたちを助けてよ」

 

 

 

 

視界が歪む。俯くあたしをリサちーは抱きしめてくれた。

もう何でもいいかな。そう思って力を抜きリサちーに身体を預け目を閉じた。

 

 

 

 

 

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