君を探して   作:茜崎良衣菜

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第二章スタートです!



第二章 貴方の隣にいたいから
捜索15


 

 

 

長い夢を見ている気分だった。

貴方のいない世界は白黒で周りに何を言われても響かない。

いつの日からか「笑わない人」という認識を持たれることが多くなっていった。

 

忘れてしまった。

笑い方も。何が楽しいのかも。どうしてギターしているのかも。

そんな私の根本だったことでさえ思い出せない。

 

 

 

『僕たち初対面ですよね?』

 

 

 

無慈悲な貴方の言葉が脳内をこだまする。

耳を塞いだって何の効果もない。

その声が私の全てを否定している気がした。

何故生きているのか解いてくる。

 

 

そんなこと私が聞きたいくらいなのに。

 

 

頭の包帯の一部を握りしめる。

何故か彼は助けてくれた。

私を忘れていても助けてくれた。その優しさに救われた。

その優しさがどれだけ私を苦しめたことか。

嬉しかった。けど素直に喜べない自分が嫌だった。

貴方は貴方。それは記憶を失っても変わらないのに。

 

記憶を無くしてほしくなかった。

無くしていなければ私たちは笑いあえていたはずなのに。

 

 

 

___嗚呼。これも全て私のせいか。私の自業自得か。

乾いた笑いが出てきた。涙は出し切ったからか出てこなかった。

 

 

 

いつだって貴方は私がいてほしい時にそばにいてくれた。

ねえ教えて。

どうして私を助けたの。

私は貴方の手を離してしまったのに。

どうして貴方はまだ私の手を握っていてくれるの。

 

私にこの問題は難解すぎるわ。

だからお願い答えを教えて。

 

 

 

そしてずっと私の隣で愛の言葉を呟いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「え!?蒼夜が!?」

 

「うん。合宿中に見つかったんだ」

 

 

 

合宿場から帰ってあたしが最初にしたことは桐谷家に行くこと。

理由は当然院長であり家主の撫子さんに蒼くんのことを伝えるため。誰も来ない撫子さんの部屋で二人っきりで話をする。

あの子たち(義姉弟)に聞かれたらショックを受けるかもしれないと思っての行動。悪いとは思っているけど勘弁してほしい。

 

 

 

「なんで!?そもそもどうやって!」

 

「こころちゃんってお金持ちの子がいるんだけどその子の家で使用人として働いてるみたい。見つけられたのはほんと偶然だよ」

 

「でもそれならどうして蒼夜はここに来ないの」

 

「それがね……」

 

 

 

あたしは蒼くんが記憶喪失になっていたことを話した。

あの日蒼くんがいなくなった後、こころちゃんたちに拾われたことも話した。

口調から一人称まで変わって知らない人になっていたことも、包み隠さず全部。

撫子さんはあたしが話し終えるまで静かに聞いてくれた。

 

 

 

「そう、だったのね…」

 

「驚いたよね。あたしも最初見た時、幻覚でも見えてるのかと思っちゃった。……ここに連れて来れなくてごめん」

 

「…ううん、蒼夜が生きてるって事実だけで十分よ」

 

 

 

撫子さんは目に涙を溜めていた。

当たり前だ。1年も行方不明だった弟がやっと見つかったんだから。

幼なじみのあたしですら涙ぐんだのに実の姉が泣かない訳がない。

 

 

 

「でも日菜ちゃん。合宿中にってことはもしかして」

 

「うん。おねーちゃんも蒼くんに会ったよ。ショックが大きくて、あの衝動(・・)が出ちゃった…」

 

 

 

あたしの答えに撫子さんは驚き、眉をひそめた。

撫子さんだって蒼くんとおねーちゃんの関係を知っているから当然だ。

 

 

 

「大丈夫なのよね」

 

「蒼くんが助けてくれたからね」

 

「蒼夜が?」

 

「うん。そうなんだ。記憶はないのに直感で大切な人だと思ったから助けたんだって。どんだけおねーちゃんのこと好きだったんだろうね」

 

「蒼夜らしい、と言えばいいのかしら?」

 

「でもおねーちゃんは頭切っちゃったからしばらくは安静にしてないといけないからそこはマイナス点だよ」

 

 

 

蒼くんはいつだって全力だった。

何するにも全力すぎてすぐにバテてたけど、最終的には全部やり遂げて後ろ向きなことは言わない。

おねーちゃんもその前向きさに惹かれたんじゃないかな。

 

 

 

「それでね撫子さん、お願いがあるの」

 

「もちろんいいわよ。日菜ちゃんの好きなようにしてくれて」

 

「…まだ何も言ってないよ?」

 

「蒼夜の記憶が戻るまで待っててほしい、でしょ?何年の付き合いになると思ってるのよ。それくらいわかるわ」

 

 

 

ホント撫子さんには頭が上がらない。

気持ち的には今すぐにでも蒼くんに会いたいはずなのに、あたしのことを信じて任せてくれてるんだ。

 

その期待には絶対答えないと。

 

 

 

「…ありがとう撫子さん。絶対蒼くんのこと、連れ戻すから!」

 

「ええ。何年でも待ってるわよ」

 

「あと、今日はおねーちゃんの代わりに弾いてってもいいかな?」

 

「当たり前じゃない。みんな喜ぶわよ」

 

 

 

撫子さんは少し余裕のある笑顔であたしの背中を押してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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