君を探して   作:茜崎良衣菜

16 / 31
捜索16

 

 

 

「リサちーちょっといい?」

 

「ん?どうしたの日菜?」

 

 

合宿明け最初の月曜日。あたしは教室に入り次第リサちーに声を掛けた。心なしか少しだけ元気がなさそうに見えるのは気のせいじゃないと思う。

そして次に言う言葉がその表情を曇らせてしまうのもなんとなく想像できた。

 

 

 

「今日ってRoseliaの練習あるの?」

 

「うん。一応あるけど……」

 

「ならみんなに『しばらくおねーちゃんは練習に参加できないかも』って伝えてもらっていい?」

 

「っ……」

 

 

 

あからさまに悲しそうな顔。リサちーにその顔は似合ってなかった。

 

 

 

「…………日菜。紗夜って今、どんな感じ?」

 

「だいぶ落ち着いてるよ。けどまだ傷はまだ治ってないしいつ精神が不安定になるかわからないからバンド練習はまだできなさそうかな」

 

 

 

傷が治るまではスタジオみたいに大きな音が鳴る場所へはあまり連れて行きたくない。それがストレスになったら困る。傷が治るまではそうするつもりだけどその後からは完全におねーちゃんの問題だ。

 

 

 

「……うんわかった。みんなにはアタシから伝えておくね」

 

「ありがとうリサちー」

 

「いいよ」

 

 

 

リサちーはすぐにおっけーしてくれた。心配してはいるけどあたしに任せてくれるみたい。

この様子ならあたしの考えを伝えてもいいかもしれない。

 

 

 

「それでねリサちー。一つ考えがあって……」

 

「全員席に着いて。HR始めるわよ」

 

 

 

タイミング悪く入って来た担任に邪魔をされる。今日の時間割は移動教室ばかりだったはず。

どうやら次にゆっくり話せるのは昼休みになりそうだった。

 

 

 

そして迎えた昼休み。お弁当を持ったあたしとリサちー、それから友希那ちゃんは屋上へと向かっていた。

本当はリサちーにしか相談しないつもりだったけどRoseliaみんなの協力が必要なのだから付き合ってもらうことにした。

ついでに言うと友希那ちゃんがついてきたのには理由がある。

リサちーと一緒じゃないと友希那ちゃんは一人で食べることになるらしい。あたしは薫くんとか麻弥ちゃんがいるし一人で食べることに何の戸惑いもない。けど友希那ちゃんは一年生の頃からずっとリサちーと食べているから一人で食べるのは違和感があるという。他の人と食べたら?と提案したところ「そこまで仲の良い友人はいないわ」と間髪入れず返って来た。

これにはさすがにあたしも苦笑い。正直放ってはおけなかった。

 

お弁当を食べながら友希那ちゃんにおねーちゃんのことを話した。

驚いて悲しんで、だけどいつも通りクールに「待っているわ」とほほ笑んでいた。

その反応は意外であたしとそれからリサちーも驚いた。

 

ここからが本題だ。

 

 

 

「それで日菜。話と言うのは紗夜関連のことだとは思うけど、何かしら?」

 

「遠回しに言ってもしょうがないから単刀直入に言うね。Roseliaの練習に、蒼くんを参加させてほしい(・・・・・・・・)

 

「「っ!?」」

 

 

 

おねーちゃんを苦しめている原因。だけど大切な人でもあることを二人も知っている。

おねーちゃんと記憶喪失の蒼くんが一緒にいてたらただおねーちゃんのことを傷つけるかもしれない。

だけどおねーちゃんが蒼くんから逃げ続けていたって何も変わらないから。

 

 

 

「蒼くんには楽器経験があるからアドバイスができる。だからRoseliaの音楽技術向上にも繋がると思う。だからお願い。蒼くんを練習に参加させてほしいの」

 

「あたしは別にいいんだけど‥‥大丈夫なの?」

 

「蒼くんなら本人から許可貰ってるしこころちゃんにも」

 

「そうじゃなくて紗夜のことだよ」

 

 

 

キッパリした声と共に真剣な眼差しが送られた。言われるとは思っていたけど、こりゃ下手なことは言えないね。

 

 

 

「むしろおねーちゃんのためにも蒼くんにはいてもらわないと困るんだ」

 

「どういうこと?」

 

「おねーちゃんの情緒は不安定でしかないの。そんな時に止められる相手がいないといけない」

 

「桐谷蒼夜にはそれができるって言うの?私はそうとは思えないわ」

 

「かもね。今の蒼くんを見てるとそう感じるかも。でも目的はそれだけじゃない。二人が一緒にいることが重要なんだよ」

 

 

 

おねーちゃんの時はあの日からまだ動いていない。けどそれはきっと蒼くんも同じ。

その時を動かすには二人の時間を重ねる必要がある。だけどそれは蒼くんの記憶が戻らないと話にならないから。

 

 

 

「蒼くんの記憶を取り戻すためにもRoseliaの空間を貸してほしい。私的な理由ってことはわかってるよ。でも」

 

「いいわ。好きにして頂戴」

 

「え、いいの‥……?」

 

 

 

予想外だった。いや確かに断られても説得し続けるつもりだったけどこんなすぐ許可がもらえるなんて。

 

 

 

「ええ。紗夜は大切なメンバーの一人だもの。Roseliaは今のメンバーでなければいけない。それはきっと全員同じ認識だと思う。だから紗夜が本調子に戻るのなら構わないわ」

 

「友希那‥……」

 

「……ありがとう友希那ちゃん」

 

「ただし、やるからには絶対紗夜を元に戻すわよ。いいわね」

 

「「うん」」

 

 

 

待ってておねーちゃん。絶対、蒼くんを取り戻すから。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。