君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索17

 

 

 

今日僕の隣にはお嬢様はいなかった。

 

 

 

「というわけで今日から蒼夜には練習に参加してもらうことになったわ」

 

「桐谷蒼夜です。本日からよろしくお願い致します」

 

 

 

いるのは合宿で初めて顔合わせをした湊友希那様、今井リサ様。目の前には宇田川あこ様と白金燐子様。Roseliaの面々である。

何故かと問われれば今日から僕はRoseliaの練習に参加することになったからとしか答えられない。

おそらく日菜様の差し金だろう。旦那様もお嬢様からの頼みだからと了承されていた。お嬢様は「頑張ってね!」と明るく言っていたしハロハピの皆様も納得している様子だった。

Roseliaの練習に参加するのは当然だが初めてだ。だからこそ僕が輪に入ってもいいものかと恐縮してしまう。

Roseliaと言えば高校生で既にプロ顔負けの演奏をしているバンドだと美咲様や花音様が言っていた。全員で演奏しているところを見たことはないが一人一人の演奏は素晴らしいものだった。特に友希那様のボーカルは並の高校生の歌声ではないと思った。

それだけこのバンドはレベルが高い。その中に入るというのはやはり緊張する。

そしておそらく、紗夜様と僕のやりとりを見た以上普通に歓迎、ともいかないだろう。

 

 

 

「宇田川あこです!よろしくお願いします!」

 

「…白金、燐子です……よろしく…お願いします…」

 

「存じ上げております」

 

「えっと…あこたちはなんて呼べばいいんですか?」

 

「なんでも構いませんよ。桐谷でも蒼夜でも、下僕扱いでも僕は受け入れますから」

 

「えぇ!?下僕!?」

 

「さ、さすがに…そんな風には…思わないです…!」

 

「冗談ですから落ち着いてください」

 

 

 

冗談のつもりで言ったのだけど彼女たちは本気と捉えてしまったようだ。申し訳ない。

 

 

 

「あははっ。蒼夜も冗談言うんだね〜」

 

「真面目な顔で言うから驚いたわよ」

 

「あこ様と燐子様が緊張されている様子だったのでその緊張を和らげようかと」

 

「ならもう少しおちゃらけた態度で言うべきだったわね」

 

 

 

なるほど。僕はふざけた感じで言ったつもりだったが皆様にはそうは聞こえなかったのか。人を笑わせるのは難しいものだ。

 

 

 

「ていうかあこ様ってなんかゲームみたいな呼び方ですね!あこ、偉い人になった気分!」

 

「お嬢様のご友人の方々には基本名前に様付けなので。嫌でしたか?」

 

「嫌って言うか、変な感じって言うか…」

 

「わ、私は…様付けは、あまり……」

 

「まあ燐子の言いたいこともわかるよ。様付けは慣れないよね」

 

「普通一般人は様付けなんてされないからでしょう」

 

 

 

ハロハピの皆様はすぐに受け入れてくれたがRoseliaでは不評らしい。

ならどうするべきか。今まで僕は様付け以外しかことがないのだが……。

日菜様や紗夜様ことを呼び捨てにしたことはノーカンでいいだろう。

 

 

 

 

「皆様はどう呼ばれたいのでしょうか」

 

「そうだなぁ~。アタシは普通にリサ(・・)って呼ばれたいかな」

 

「わ、私も……名前で……」

 

「私も名前呼びの方が助かるわ」

 

「様付けはかっこいいと思うんですけどあこも普通がいいです」

 

「ではさん付け、ということでよろしいでしょうか」

 

 

 

さすがに呼び捨てにするのには抵抗があった。皆様が頷くのを確認する。

 

いつか担当医が言っていた。記憶を思い出すためには身近にいた人物と一緒にいるのが一番の近道だと。

日菜様はおそらくそれを知っていてそう仕向けたのだろう。もしくはただ()と紗夜様の無くした時間を埋めたいと思ったのか。どちらにせよありがたい話である。

ただ今はまだ紗夜様は復帰していない。日菜様が言うにはケガを治すために安静にしているとか。早く戻ってきてほしい。そして彼女と話してみたい。

それで記憶が戻ってくれればいいのだが。全部俺次第か。

 

 

 

「ええ。これからよろしくね蒼夜」

 

「はい」

 

「よろしくね~☆」

 

「はい」

 

「よろしく‥‥‥お願い、します‥‥‥」

 

「はい」

 

「蒼夜さん!よろしくお願いします!」

 

「はい」

 

 

 

合宿の時にも思っていたがRoseliaの印象は最初と少し違う。美咲様や花音様曰く「かっこいい」「ストイック」「真面目」。だが今の挨拶で変わった。

友希那さんの印象は変わらないが、リサさんはギャル、燐子さんはだいぶ大人しい、けどあこさんは明るく元気。美咲様たちは「関わりにくい」とも言っていたがそんな感じは全くなかった。

 

 

 

「蒼夜ってアタシたちと同い年?」

 

「年でしたら19ですよ」

 

「え!?年上!?」

 

「そうですね」

 

「すみません。紗夜がタメ口だったからてっきり同い年かと思ってました」

 

「別に敬語でなくてもいいですよ。僕は気にしませんから」

 

 

 

リサさんは見た目的に不真面目そうだが僕が年上だとわかった瞬間に口調が変わるあたり真面目なのだろう。人は見た目によらないらしい。

 

 

 

「だったら蒼夜さんもあこたちのこと呼び捨てでいいですよ!」

 

「いえさすがにそれは‥‥‥」

 

「いいじゃない。これから私たちの練習に参加するのなら親睦を深めておいた方がこちらとしても楽だわ」

 

「友希那の言う通り。アタシもそう思うな~。アタシたちだけタメ口って言うのも不公平だし」

 

「‥‥‥わ、たしも、そっちの方が‥‥‥いいです」

 

 

 

これはどうにもできないな。僕一人じゃ止められない。それになんだか温かいと思った。

 

 

 

「わかりました。では僕もタメ口で話しますね」

 

「蒼夜、敬語出てるよ~」

 

「‥‥‥努力します」

 

 

 

やっぱタメ口は慣れない。

 

 

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